任意売却を司法書士に依頼するメリットやデメリットを把握しておこう!
不動産の任意売却を司法書士に依頼することはできる?
不動産の任意売却を検討しているということは、経済状況が不安定で精神的にも切羽詰まっている状況の人もいらっしゃるのではないでしょうか。頑張って手に入れたマイホームを手放さなくてはならない精神的ダメージも相当なものでしょう。そんな中で任意売却の手続きを始めるのはとても大変ですが、任意売却の手続きを依頼する業者選びは慎重にしなければなりません。不動産の任意売却は様々な業者に依頼することができますが、その全てが安心して任せられる業者とは限りません。一部では依頼を受け手数料を受け取っているにも関わらず、何も対応をしないといった悪徳業者も存在します。任意売却を検討している状況で、焦らずに業者を見極めるのは至難の業と言えるでしょう。司法書士は債務整理において法律業務を行うこともありますから、信頼して手続きを任せられる専門家と言えます。司法書士に手続を依頼することでどのようなメリットを得ることができるのか、またデメリットはあるのかなど少し掘り下げて検証していきましょう。
任意売却の依頼は司法書士にするべき?弁護士にするべき?
債務整理の専門家は、司法書士の他に弁護士もいます。司法書士に依頼する場合と弁護士に依頼する場合では、どのような違いがあるのでしょうか。また不動産業者に依頼する場合と比較して、どのような強み弱みがあるのでしょうか。
まず弁護士に依頼する場合ですが、弁護士は法律の専門家です。そのため裁判などの法律業務に関しては、経験豊富で手続きの流れについても精通しており、債権者との交渉もプロです。もし個人再生や自己破産などに手続きを変更する場合も、相談にのってくれる強い味方となるでしょう。しかし弁護士と司法書士で比べると、弁護士に対する報酬は高めに設定されていることが多く、任意売却を検討している経済状況では報酬の支払が厳しい可能性があります。報酬の支払いを分割で対応してくれる弁護士事務所もありますが、任意売却は迅速な手続きをしなければ手続きが間に合わなくなり、競売にかけられてしまう可能性もあります。
一方不動産業者に任意売却を依頼する場合を考えてみましょう。不動産業者は不動産の売買に関してはプロですし、手続き中に必要な宅地建物取引主任者も常駐しているので、迅速に手続きをすることが可能です。しかし不動産業者で債権者との交渉に慣れているところは数少なく、債権者との交渉がうまくいかなければ、任意売却のメリットである引越し時期や引越し代まで捻出することは難しくなるでしょう。売買契約の手続きが迅速に行われても、債権者の同意を得られない・交渉を有利に進められないなどの原因で、最終的に出費がかさんで、余裕がない経済状況にさらなる負担がかかってしまう可能性も考えられます。また不動産業者の場合は、任意売却後のサポートまで対応するのは難しく、債権者との交渉力があり報酬費用も安く抑えられる司法書士に依頼するメリットは大きいと言えるのではないでしょうか。
任意売却を司法書士に任せた方がいい理由とは?
任意売却手続きの依頼先として弁護士は安心してお任せできますが、報酬が高めでまとまったお金を準備するのは任意売却をする経済状況では難しいのが現実です。司法書士の場合も、もちろん報酬の支払いが必要とはなりますが、弁護士と比べると報酬金が比較的低めに設定されているため、現実的な依頼先となります。不動産業者に依頼する場合の障壁となる債権者との交渉についても、司法書士は借金問題の解決においてたくさんの債権者と交渉する機会がありますから交渉力はありますし、登記などの手続きに関しても司法書士はプロですから安心して任せることができます。債権者との交渉次第で連帯保証人へかかってしまう迷惑も、最小限に抑えることができるでしょう。
任意売却を始めるに当たって、最初に必要な工程は債権者の同意を得ることですから、司法書士が債権者と交渉して有利な条件で同意を得た上で、不動産業者と協力して売買手続きをするというのが、理想的な手続きの流れと言えるでしょう。
任意売却を司法書士や弁護士に依頼するメリットを教えて!
任意売却を司法書士や弁護士に依頼する場合は、法律を扱う職業なので悪徳業者に騙される心配が少ないというメリットがあります。また借金問題を多数解決している実績のある司法書士や弁護士であれば、借金を抱えていることになった背景や経済状況などすべてを総合的に見て、任意売却が最適の解決策であるかどうかを判断できる目を持っています。様々な事情により事務所を訪れる人を多く見てきていますので、取り巻く環境に配慮して任意売却後のサポートをしてもらうこともできますし、前述したように債権者との交渉もスムーズにできるでしょう。
任意売却では解決に至らないと判断される場合でも手続の変更にも対応できますし、万が一競売となってしまった場合でもそのまま対応することができます。
更に情報保護の観点からも司法書士は守秘義務を負うことになりますから、任意売却に至っている現状を他の人に知られる心配もありません。もちろん不動産業者にも守秘義務はありますが、法令遵守のレベルに関しては司法書士の方が上でしょう。
任意売却を司法書士に依頼する場合はデメリットにも注意
任意売却の手続きを司法書士に依頼する場合、気を付けなければならないのは司法書士が任意売却の実績があるか、また不動産業者との連携を取ることができるかという点です。司法書士は不動産売買に関しての資格を持っていないことが多く、任意売却で不動産の売買契約を締結するためには、宅地建物取引主任者が必要となります。となると不動産業者に依頼して手続きを代行してもらうことになりますが、任意売却に関して実績がない司法書士では不動産とうまく連携が取れず、手続きが間に合わなくなってしまう可能性があります。また手続きを代行してもらうことになるため仲介手数料が発生します。司法書士への報酬や仲介手数料については、債権者との交渉により、不動産の売却額から支払うことが可能となるケースが一般的です。
任意売却を司法書士に依頼する最大の理由は安心感!
ここまで任意売却の手続きを、司法書士に依頼する場合の特徴について解説してきましたが、要点をまとめてみましょう。
任意売却の手続きを司法書士に依頼するメリットは、
・債務整理の手続きに精通している
・様々な借金問題を取扱っている
・債権者との交渉力がある
・法令遵守という観点においても安心できる
・個人情報の漏洩の心配がない
・弁護士と比べて報酬費用も安くすむ
といったことが挙げられます。
司法書士に任意売却を依頼することは、様々な観点から見ても安心感を得られるということです。
しかしながら、任意売却の手続きはタイミングがシビアなので、不動産との連携が取れることが必要条件となります。そのため多数ある司法書士事務所の中でも、任意売却手続きの実績を多く積んでいるところを探さなければなりません。この見極めに関しては、怠ると任意売却の手続きが成功できずに終わる可能性もあるので、慎重に選びましょう。
任意売却を司法書士に依頼する場合の費用や報酬はどのくらい必要?
任意売却を取扱っている司法書士や不動産業者は、「持ち出し0円」と謳っているところが多いのですが、任意売却の手続きそのものに手数料が全くかからないという意味ではありません。実際は任意売却の手続きには様々な費用が必要なのですが、債権者との交渉次第で不動産の売却価格から捻出することができ、依頼者が事前に初期費用を用立てる必要ないことから、「持ち出し0円」と言われているのです。必要経費はほとんどの場合債権者から許可を得ることができますが、引越し費用や滞納している管理費・固定資産税の遅延利息については、必ずしも債権者から許可を得られるとは限りません。あくまでもこれらの費用は債権者の裁量次第なので、承諾を得るための交渉力が担当する司法書士には求められます。
では任意売却の手続きに必要な費用を項目ごとに解説していきましょう。
・抵当抹消登記費用
任意売却以外の不動産売買の際に、抵当権がつけられている物件に関しては、抵当権を抹消する手続きが必要になります。これは司法書士が行いますので、登録免許税や司法書士報酬も合わせて必要です。抵当権が1つではなく複数ある場合には、「後順位担保権者の抵当権抹消承諾料」も必要です。
・不動産仲介手数料
不動産の売買契約を不動産会社に仲介してもらうための手数料で、宅地建物取引業法の第46条で上限額が取り決められています。
上限額は売却価格が200万円以下の場合、「取引価格×5%」、200万円~400万円以下の場合「取引価格×4%+2万円」、400万円を超える場合は「取引価格×3%+6万円」となっています。
・引っ越し費用
引越費用については司法書士の交渉力と債権者の許可次第にはなりますが、売却価格から捻出できる場合があります。一般的に捻出できた場合の金額は10~30万円程度です。
・滞納しているマンション管理費・修繕積立金
住宅ローンが滞納されている経済状況では、マンションの管理費や修繕積立費も滞納していることが多く、不動産売買する際清算をしなければなりません。
・滞納している固定資産税
同じく固定資産税の滞納をしている場合も、清算をしなければなりません。固定資産税の滞納が続くと裁判所による強制執行で、物件が差押えられているケースがあります。そういった場合は勝手に売却することができず、差押解除費用が必要となります。
司法書士に任意売却を依頼した場合の流れを知っておこう
次は任意売却の手続きがどのような流れで進んでいくのか、概要を理解しておきましょう。依頼する司法書士や状況に応じて多少前後するものもありますが、大まかな流れはほとんど変わりませんので参考にしてください。
1.任意売却の手続きを依頼する司法書士に相談します。
司法書士事務所は世の中に数多くありますので、先ほど説明したように任意売却の実績が多いところを探して相談にいきます。
司法書士との相談では依頼者の状況を把握するため、物件についての聴き取り、現在あるローン残高や支払状況、任意売却をすることになった背景となる家庭の経済状況などできるだけ詳しく相談しましょう。相談していく中で司法書士がこちらの希望を聞いてくれるか、親身になって相談に乗ってくれるかしっかりとチェックして、自分とは合わないと感じる場合は他の事務所を探すことも検討した方が良いでしょう。
2.物件調査と任意売却・返済スケジュールが作成されます。
任意売却をする物件についての調査が始まります。現在の評価額や市場価格の相場を確認し、必要に応じて不動産鑑定士による鑑定が行われます。不動産の売却価格が暫定的に決まったら、その売却方法とどのようなスケジュールで手続きを進めていくのか、また売却価格の差額分についての返済スケジュールを書類にまとめて、債権者との交渉に備えます。
3.正式に司法書士に手続を依頼するための専任媒介契約を締結します。
上記で作成されたスケジュールや売却価格などに依頼者が同意すると、司法書士との正式な契約が交わされます。この契約により司法書士が依頼者の正式な代理人となり、任意売却に関わる債権者や抵当権者との交渉できるようになります。
4.債権者との交渉が開始されます。
住宅ローンの債権者や抵当権者との交渉では、任意売却をすることへの承諾、売却価格の認可、諸費用の捻出について調整が行われます。ここで債権者の同意を得られなければ、任意売却をすることができません。いかに依頼者にとって有利な条件で調整できるかが司法書士の腕にかかっています。
5.不動産販売活動が始まります。
不動産業者のデータバンクに登録をして、不動産情報誌や新聞、インターネットで不動産売却の広告を出して購入希望者を募集します。この時に掲載するため物件の写真撮影や、購入を検討している人による内覧も行われます。購入希望者が見つかったら、引越し時期などの条件について交渉をして、購入希望者は金融機関の審査を受けます。
6.債権者との最終調整が行われます。
債権者に最終的な任意売却についての合意を得て、不動産の売却価格から住宅ローンの返済額、売却の必要費用、引越し代などを割り振って残債務に関する返済事項が最終決定されます。
7.購入希望者との売買契約が締結されます。
債権者との交渉が成立すると、購入希望者と不動産の売買契約が交わされます。依頼者は新居探しや引越し準備を始めます。売却代金から引越し費用の捻出ができる場合は、この時点で手付金から引越し費用を受け取ることもできます。
8.不動産の引渡しと代金決済が行われます。
売買契約締結からおよそ1ヶ月~1ヶ月半で代金決済が行われます。
依頼者は新居への引越しをして転居手続きなども完了させ新生活がスタートします。と同時に住宅ローンの残債についての支払が始まります。不動産は買主に受け渡され、すべての関係機関に諸費用などの支払が行われて、任意売却の手続きが完了となります。
任意売却を依頼する専門家は司法書士以外にどこがある?
任意売却の手続きを依頼するところは、先ほど説明した司法書士・弁護士、不動産業者以外に任意売却専門業者があります。任意売却専門業者はまさに任意売却を専門として取り扱っているプロですし、業者によっては社内に弁護士や司法書士を雇っている場合や提携している法律事務所や不動産業者を抱えていて、常に連携が取れるシステムが出来上がっているため、手続を迅速に進めることができます。
しかし近年任意売却を専門に取り扱っていると称して、手数料を騙し取る悪徳業者による被害が報告されています。任意売却の専門業者は知名度などもありませんし、どこが悪徳業者でどこが信頼できる業者なのかは判断が難しい面もあります。公式のホームページなどを見ても、任意売却の実績がありますというのは誰にでもできますから、それだけを判断基準にすると危険です。任意売却の検討をしている精神状態で、業者を見極めなければならないため冷静な判断が求められます。業者選びに失敗してしまうと、多額の手数料だけ支払って最終的にはなんの意味もなかったというようなことにもなりかねません。強引な営業で契約を取り付けようとする業者や手続き前に手数料を請求してくる業者、売却価格の設定が低すぎる場合などは特に注意してください。また料金形態が不明確なところも、後々なにかと理由を付けてお金を請求される可能性もありますから、避けた方が良いでしょう。
司法書士のブログをチェックして任意売却の実績があるかを調べよう
最近では司法書士事務所がブログを開設していることがあります。任意整理の流れや必要な料金などについての記事はもちろん、任意売却を実際に担当した事例をいくつかあげている事務所もあります。そういった事例を確認して成功した例・失敗した例を知り、その原因についても自分なりに考察してみるのもいいかもしれません。金額も含め背景となる生活環境や、任意売却後の結果についても多種多様ですから、任意売却をする上で役に立つ情報を見つけることができますし、司法書士事務所がどれほど実績を積んでいるかを確認することができます。事例のケースが似通っているところはあまり参考にしない方がいいでしょう。いろいろなパターンの事例を挙げている事務所の方が経験の幅が大きいですし、それぞれの状況に応じた対応をしてくれるという証明にもなります。
任意売却を司法書士に依頼するメリットとデメリットまとめ
任意売却を成功させるためには、依頼する専門家をしっかりと見極めることが大切です。司法書士に依頼する場合は安心して任せることはできますが、実績を積んだ司法書士でなければなにもできないまま終わってしまったり、任意売却の相談をしているのにやたらと自己破産を勧められたりと、手続きに不満を抱えることになってしまいます。冷静な判断力と情報収集のためのリサーチ力を駆使して、自分に合う司法書士を見つけてください。