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任意売却|知っておきたいメリットとデメリット

住宅ローンの返済を長期間滞らせてしまうと、我が家を売却して借金の返済に充てなければならない場合があります。
その時は「自己破産をして競売するしかない」と思い込んでいるひともいるかもしれません。
でもちょっと待ってください。
「競売」よりメリットの多い「任意整理」という方法があります。

 

ここでは
①任意売却とは何か

 

②任意売却のメリットとデメリット
について詳しくご説明したいと思います。

 

 

住宅ローン破綻|任意売却が適用できるかも

任意売却と競売|メリットは任意売却にあり!

住宅ローンとは銀行などの金融機関が、住宅の購入や新築、増改築のための資金を、その土地や家屋を担保に融資する金融商品です。
利用目的を限定し、土地や家屋を担保にすることで、高額な融資を低金利でおこなうことが可能です。
低金利といえども元金が高額ですから、住宅ローンを利用するひとは、住宅取得後長い年月をかけて返済することになります。

 

35年ローンなどはごく一般的に利用されていますが、よくよく考えれば35年とは実に長い歳月ですね。
その間に失業したり、住宅ローンとは別に多額の借金を抱えることもあるかもしれません。
それにより住宅ローンの返済が長期間滞ってしまったら、せっかく手に入れた住まいはどうなってしまうのでしょうか?

 

一般的に良く知られているのは、「競売」という方法で借金のカタに不動産が裁判所を介して売却されるというものです。
(*下図 【長期延滞~競売・強制立退きの流れ】参照)
競売での売値は市場価格より安く、7割程度が相場です。
売って得たお金はローンの返済に充てられますが、それでもまだローンを完済できない場合は、債務者は残ったローンを一括で返済しなければなりません。
そもそもことの始まりは、お金がなくて月々の返済ができなくなってしまったことからです。
競売後の一括返済も実現できるかどうか、かなり苦しい状況でしょう。

 

たとえ住宅ローンを返せず家を売らざる負えなくなったとしても、
少しでも高く売ってその後の生活への影響をできる限り少なくしたい、そう考えるのは当たり前のことですね。
そこで登場するのが「任意売却」という方法です。

 

「任意売却」とは、債権者と交渉し合意を得ることで、売却価格が住宅ローン残高を下回る債務超過の物件でも売却できる方法です。
債権者との交渉は、専門の不動産コンサルタントや不動産業者に依頼しておこないます。
競売では市場価格の7割以下で売却されてしまいますが、任意売却は市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。
債権者もできるだけ多くのお金を回収できたほうがいいわけですから、
裁判所に支払う費用が必要なうえに、安く売却される競売で損するぐらいなら、任意売却に応じた方が得策です。

 

 

(参考)
【長期延滞~競売・強制立退きの流れ】

 

1.住宅ローンの返済が長期間滞る
金融機関によって異なりますが、おおむね3ヶ月以上が長期間とされます。

 


3.金融機関から督促

 


4.金融機関から「期限の利益の喪失」通知が送られる[ローン滞納から約6ヶ月]

 

「期限の利益」とは期限が到来するまで借金を返済しなくてもよいという債務者の利益です。
返済が分割でできるのはこの利益があるためですが、返済が長期間滞ったことで契約違反となればその利益が喪失してしまいます。
「期限の利益の喪失」で分割返済は不可能になります。

 


5.金融機関が保証会社に代位弁済を依頼

 

代位弁済とは債務者が借金を返済できなくなった場合に、債務者にかわって借金を一括返済することです。
住宅ローン契約時に申込者は、金融機関が指定する保証会社と「保証委託契約」を結びます。
これは返済が滞った場合は、保証会社が肩代わりして金融機関に残債を支払うという契約です。
肩代わりしてもらえるなら債務者はラッキー!と思われるかもしれませんが、そうゆうわけにはいきません。
債権者が金融機関から保証会社に代わるだけで、債務者の返済義務はなくなりません。

 


3.保証会社から代位弁済(予告)通知が送られる[ローン滞納から約7ヶ月]

 

ここからは保証会社から住宅ローンの一括返済を求められることになります。
代位弁済(予告)通知は「このままローンが返済されないと、代位弁済をすることになりますので、すぐに一括返済してください」という旨の通知がです。
返済がおこなわれなければ、保証会社は代位弁済を実行します

 


4.保証会社から督促

 


5.保証会社競売準備開始

 

保証会社が裁判所に競売の申立てをおこないます。

 


6.裁判所から差押通知書が送られる[ローン滞納から約8ヶ月]

 

競売の申立てを受けて、裁判所から住宅を差押えた旨の通知です。

 

 

7.裁判所から競売開始決定通知書が送られる[ローン滞納から約9ヶ月]

 

裁判所が競売の申立てを受理した旨の通知です。

 


8.現状調査[ローン滞納から約10ヶ月]

 

裁判所の執行官、不動産鑑定士により現状の調査がおこわれます。
調査結果によって裁判所が不動産価格を決定します。
市場価格の7割程度の価格設定になります。

 


9.裁判所から競売の期間入札通知書が送られる[ローン滞納から約13ヶ月月]

 

入札開始日、入札終了日、開札日が記載されています。

 


11.入札開始・入札終了・競売開札[ローン滞納から約13~16ヶ月]

 

一番高額で入札したひとに不動産が売却されます。

 


12.強制立退き

 

 

任意売却のメリットとデメリットとは?

債務者・債権者双方に、市場価格に近い金額で売却できる可能性というメリットをもたらす任意売却ですが、
その他にどのような特徴があるのでしょうか?
任意売却のメリット・デメリットついて、競売と比較しながらみていきましょう。

 

○任意売却のメリット

 

1.市場価格に近い金額で売却できる可能性がある
先にご説明したとおりです。

 

2.残債を分割払いできる
競売の場合は一括で返済するしかありませんが、任意売却では交渉次第で無理のない返済計画を立てられます

 

3.売却に債務者の意思を反映できる
競売では家の持ち主であった債務者の意思を反映させる余地はありませんが、任意売却では一般の不動産売却と同様、売却先を選択することができます。
思い入れのある家であればなおのこと、せめて自分の気に入った先に購入してもらいたいものです。

 

4.引越日、明渡し日に融通が利く
競売では所有権が移転されたらすぐに立退かなければ、不法占拠になってしまいます。
任意売却では、債権者・購入者と交渉して日程を決めることができます。

 

5.引越し費用の負担がない
任意売却では、債権者と交渉することで最高30万円まで、売却金から引越し費用を捻出することができます。
競売にはそのような制度はありません。

 

6.プライバシーを守れる
競売の場合は裁判所の執行官の調査、競売物件であることの情報公開などで、実情を近所に知られて嫌な思いをする可能性があります。
任意売却の場合は、そのようなことはありません。

 

7.自宅に住み続けられる可能性がある
任意売却では、親や兄弟などに資金の余裕があるひとがいれば、そのひとに買ってもらう「買戻し」や、
購入者と賃貸契約を結ぶ「リースバック」という方法があります。

 

○任意売却のデメリット

 

競売に比べると、任意売却の方がはるかにメリットが多く、極端なデメリットはありません。
ここでは注意すべき点をいくつか挙げてみます。

 

1.必ずしも成功するとは限らない
債権者との交渉が上手くいくことが大前提です。
個人で交渉して成功させることはまず無理ですし、たとえ専門家であってもスキルの違いで結果が左右されることは否めません。

 

2.時間に制限がある
どの時点から任意売却の手続きに入るかで残された時間が変わり、少なくなればなるほど成功の確率は下がります。
タイムリミットは競売開札日の前日です。
それまでに売却先が決まっていなければなりません。
ローンの返済が苦しくなり始めたときから任意売却を依頼するのと、競売開始決定通知書を受取ってから依頼するのでは10ヶ月もの開きが出てしまいますね。

 

3.個人信用情報に傷がつく(ブラックリストになる)
これは任意売却だけではなく競売でも同じですが、ローンの返済を長期間延滞すると個人信用情報にその事実が登録され、
いわゆるブラックリストになります。
この場合それ以後5年程度は、クレジットカードを作ったり、ローンを組むなど新規の借入れができなくなります。

 

 

 

任意売却を失敗させないために

任意売却手続きに適している条件とは?

住宅ローンを組んでいるなら誰でも任意売却ができるわけではありません。
任意売却の手続きができるのは、住宅ローンの返済ができない状態に陥っている場合です。
すでに何ヶ月か滞納しているひとや、ローンのリスケジュールや借換えを相談してもどこの金融機関にも断られるような状況であれば、
任意売却の手続きが可能です。
場合によって(返済ができなくなることが明らかな場合)、専門の不動産コンサルタントの判断のもと、あえて返済を滞らせるケースもあります。

 

任意売却のデメリットのところでご説明しましたが、期限があるものですから、手続き開始が遅いとできることも限られてきます。
そういった場合も任意売却に適しているとは言い難いケースです。

 

また該当の物件にあまりにも資産価値がない、関係者の同意や協力が得られない場合も任意売却には適していません。

 

任意売却で準備しておきたい書類は?

任意売却の手続きは基本的に、依頼した専門の不動産コンサルタントや不動産業者に、お任せすればよいです。
手続きに必要な書類についても専門業者の指示に従い用意します。
依頼前に以下のものを準備しておけば、スムーズに話が進むでしょう。

 

・住宅ローン借入先からの督促状や催告書など
・売買契約書・重要事項説明書・建築確認申請書・間取図
・権利書(登記済み証)
・土地・建物の評価証明書
・固定資産税、都市計画税の納付書
・マンションの場合は管理会社の連絡先
・該当物件の写真(外観2~3枚、各部屋、キッチン、浴室、トイレ、ベランダなど)
・印鑑証明書
・本人証明書類(運転免許証、パスポートなど)
・差押さえの場合は差押え書

 

 

任意売却の手続きの流れ

任意売却の手続きの流れは、借入先が民間金融機関の場合と住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の場合では若干異なります。
一般的に任意売却にかかる期間は3~6ヶ月程度になりますが、物件や債務状況などによっても変わってきます。
ここでは、民間金融機関から融資を受けていた場合を例にご説明します。

 

 

1.専門業者へ相談
任意売却専門の不動産コンサルタントや不動産業者に相談します。
住宅ローンの借入先、債務残高、滞納状況、経済状況、物件の所在など、包み隠さず相談したほうが適切な対応が選択できます。

 


2.物件査定およびプランニング
相談内容を元に専門業者が物件の査定をおこない、今後の対応方法、スケジュールなどのプランニングをおこないます。

 


3.専任媒介契約の締結
説明を受けたプランに納得できたら、専門業者と専任媒介契約を結びます。

 


4.債権者と交渉
専任媒介契約により、債務者の代理人となった専門業者が交渉にあたります。
任意売却への同意や諸費用について条件交渉をおこないます。

 


5.販売活動
よりよい条件で売却できるよう、専門業者が積極的に販売活動をおこないます。

 


6.購入者決定

 


7.債権者の同意を得る
売却価格とそれをどのように割振るか(ローンの残債支払い、仲介手数料、引越し費用、登記費用など)を提示し、債権者の同意を得ます。
返済しきれない残債について、今後の返済方法についての交渉もおこないます。

 

8.売買契約締結

 


9.引越し
債務者が次の住まいに引越しし、物件を空けます。

 


10.物件引渡し/代金決済
代金を受け取ったら、先に合意した内容にしたがって分配します。
債権者は抵当権を抹消します。

 

 

 

任意売却物件購入のメリット・デメリットとは?

次に、任意売却物件を購入する場合、一般の物件に比べてどんなメリットやデメリットがあるのかみていきましょう。

 

○任意売却物件を購入するメリット

 

1.市場価格より割安
なんといっても、市場価格より割安で購入できるのが最大の魅力です。
任意売却物件自体、それほど多く出回るものではありませんので、いわゆる掘り出し物扱いになる場合もあります。

 

○任意売却物件を購入するデメリット

 

1.購入までに時間がかかる
債権者の同意を得てすすめなければならないため、交渉が長引けば売買契約締結までに時間がかかってしまいます。

 

2.売主に瑕疵担保責任がない
瑕疵担保責任とは、物件に隠れた瑕疵(不具合)があった場合に売主が買主に対して、その修理などの責任を負うことです。
しかし、経済的に窮地に陥っているからこその任意売却ですから、売主に責任を問うたとしても対応できない可能性が高いです。
そこで任意売却の場合、売主に瑕疵担保責任を問わないことになっています。

 

3.値引き交渉ができない
借金を返済するための売却ですから、できるだけ高く売る必要があります。
少なくとも債権額より低くなるような値引き交渉は受け入れられないでしょう。

 

 

 

任意売却|デメリットのまとめ

・任意売却とは、債権者と交渉し合意を得ることで、債務超過の物件でも売却できる方法
・競売と比べると市場価格に近い金額で売れるなどメリットの方が多いが、デメリットとしては下記の3点がある
1.必ずしも成功するとは限らない
2.時間に制限がある
3.個人信用情報に傷がつく(ブラックリストになる)
・任意売却物件を購入する場合は、市場価格より割安で購入できるメリットがあるが、デメリットも多い
1.購入までに時間がかかる
2.売主に瑕疵担保責任がない
3.値引き交渉ができない

 

 

自己破産のデメリットを知る

住宅ローンのような高額な借金を返済できない場合、免責のある自己破産が妥当と考えるひともいるでしょう。
しかし、自己破産は借金を免除してもらえるという大きなメリットのある方法だけに、デメリットも多いものです。
任意売却をおこなえば、自己破産を免れる可能性があります。
まずは専門の不動産コンサルタントや不動産業者に相談してください。

 

【自己破産の主なデメリット】

 

・20万円以上の財産は処分対象になります。不動産、クルマ、保険などは手放さなければなりません。
・自己破産後、5~10年程は新たに借金をしたり、クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができません。
・破産手続き中は、一定の職業に就くことができません。
一定の職業とは弁護士、公認会計士、警備員、保険外交員など他人の財産を管理するような職業です。
・官報に記載されますので、第三者に知られる可能性があります。

 

 

任意売却物件を購入するなら知っておくべきメリットとデメリット

この章では立場が一転して、任意売却をする人ではなく任意売却物件を購入したい人に、知っておいてほしい情報をまとめます。貴方が任意売却をする立場でも、任売物件の買主側との取引において折り合いをつける上で、知っておいて損はないのでぜひ参考にしてください。
任売物件は通常に売りに出されている不動産と違う点がいくつかあります。売主側には経済的な事情がありますから、通常の物件のように価格交渉は望めません。任意売却をされているということは、債権額を下回る金額でしか販売ができない不動産なので、それ以上の値引きを債権者が合意するのは基本的には難しいでしょう。
売主の方は資金的に厳しい状況にあるため、物件の明渡は現状のままであることが多く、瑕疵担保と言われる引き渡し後に見つかる不具合についての売主の責任も問うことができません。基本的には家具や家電など撤去した上での引渡しですが、債権者が撤去費用を認めない場合も多く、売主が所有権を放棄した物がそのまま室内にある状態で引き渡されることもあります。
買主は引き渡し後に室内環境を整える作業や費用が別途必要になるので、物件価格が市場価格よりも比較的低めの金額に設定されています。
引渡し後に、管理費や修繕積立費などの滞納を突然請求されるなどのトラブルに巻き込まれないためにも、事前に滞納分の清算が済んでいるか確認してから契約をしましょう。

 

 

 

任意売却と競売はどちらを選べばいいのか?

ここまで任意売却と競売の違いについて説明してきましたが、どちらを選ぶべきかは明白だと思います。競売に比べて任意売却は、経済状況が厳しい人にとって恩恵が多い手段なので、競売になってしまう前に手を打たなければなりません。任意売却の手続きは任意売却ができる条件をクリアした後は、迅速に手続きを進めなくてはなりませんし、できるだけ好条件で解決が図れるよう債権者・買主との交渉力に長けている専門家を選ぶ必要があります。督促が届いてから業者を探し始めるのでは、冷静な判断力のもと安心して任せられる業者を選ぶのは難しいでしょう。住宅ローンの返済が今後困難になるとわかった時点で、金融機関に相談をして早めに行動を開始することで状況の悪化を最小限に抑えることができるのです。

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