住宅金融支援機構で住宅ローンを組んだ場合の任意売却ってどうなるの?
住宅金融支援機構の任意売却にはルールが存在するって本当?
住宅ローンの支払いが厳しくなり、このままだと競売になってしまう。そうなる前に検討するのが「任意売却」です。競売よりも市場に近い金額で売買が行われますし、希望金額で売り出し設定ができます。また新居への引っ越し費用等も買主様に負担をお願いできるのが利点です。しかし住宅ローンを組んだ金融機関が、銀行ではなく【住宅金融支援機構】だった場合は注意が必要です。実は一般的には競売よりも自由度とメリットが高い任意売却にも、ルールというものが存在するってご存知でしょうか。ルールに乗っ取らないと、せっかく任意売却したけれども認められないケースも。「知らなかった」で後悔しないように、詳しく説明していきたいと思います!
そもそも住宅金融支援機構ってなに?フラット35って銀行と何が違うの?
住宅金融支援機構とは、通常の銀行を窓口に住宅ローンの貸付を行っている会社です。銀行で融資をお願いすることにしたが、もう少し補てんしたい...といった場合に利用する方もいます。最大のメリットは【長期固定金利】ですね。書面上の数字だけでみると、変動金利のほうが安く感じますが、変動の怖さはやはり金利の上昇時です。いつ・いくら金利が上がってしまうなんて誰にも分からないですし、住宅ローンを長く組む方にとっては悩ましいところでしょう。いつ上がるか分からないドキドキ感なんていらない!という方にニーズが高いのが住宅金融支援機構の商品【フラット35】。最長35年ずっと変わらない金利というところが魅力です。
任意売却ってなに?住宅金融支援機構での任意売却はどうすればいいの?
まずは住宅ローンの支払いを放置した場合どうなってしますのか?という話ですが、住宅ローンの支払いが滞りだすとローンを借りた銀行などの金融機関からまず督促状が届きます。それでも放置していると最終的には裁判所から「もうあなたの自宅は競売にかけられました」という通知が届きます。競売開始の通知が届いて「嫌だ!どうしよう!!」と困ってももう遅いのです。何をどう言っても競売にかけられる事実はなかなか覆りません。そうなる前に手立てとして有効なのが任意売却なのです。任意売却は競売と違い、市場に近い金額で売買できますので仮にローンが残っていたとしても少しでも多く返済できますし、新たな居住先への引っ越し費用や滞納していたマンションの管理費等も買主が負担してくれます。競売になると、引っ越し費用も出ませんし売買価格も任意競売と比較しても格安の値段で売却されます。では借入先が住宅金融支援機構の場合の流れも大体同じような流れなのでしょうか?
住宅金融支援機構での任意売却の流れはどうなるの?
支払い困難の相談、もしくは支払い自体滞りだしたタイミングで任意売却の提案があります。そこで仲介業者を選定し「任意売却に関する申出書」を記載します。ここでのポイントは住宅金融支援機構に相談せずに勝手に任意売却をしてはいけません!!どんな金額であったとしても一番肝心な【抵当権の抹消】に応じてもらえない可能性が出てきますので、必ず事前に任意売却をする旨を伝えてください。住宅金融支援機構が了承したうえで、仲介業者による査定金額が始まり金額に売主も機構も了承して初めて任意売却というアクションを起こせます。買主が見つかり売買契約を結んだ後に、代金決済・抵当権の抹消を行うという流れとなります。
住宅金融支援機構で行う任意売却の書類ってどんなもの?
一般的な銀行にない書類として挙げられるのが前記した、「任意売却の申請書」です。どのような内容になっていて、どこから入手すればいいのでしょうか?内容については、前記したように「もう任意整理をしますよ」といった内容になります。申請書を書いて提出し受理された時点で、返済を放棄しますという公的な意味合いとなりますので必ず機構に届け出が必要となります。申請書は機構のHPや各サービサーのHPからでもダウンロードは可能です。「パソコンがない!」という方は電話で相談すると安心です。また、住宅ローンの契約時に連帯保証人・連帯債務者をつけている場合は、その方の署名も必要となってきます。
住宅金融支援機構での任意売却についての注意事項
住宅金融支援機構での任意売却で最も注意すべき点は、機構では保証会社をつけていないということです。
そのため債権回収会社(サービサー)に回収業務を委託される前に、任意売却へのアクションを起こす必要があります。一般的な銀行であれば回収不可に陥った場合、提携保証会社が債権を買い取り(債権譲渡)、後は保証会社への返済であったり、債権放棄の手続きをしたりします。しかし機構では保証会社をつけていませんので、それらの行為を行うことはありません。つまりは、任意売却の手続きが遅れれば遅れるほど、債権回収会社(サービサー)に委託される可能性が高くなってくるのです。「委託されて一体何の問題があるの?」という疑問が出てきますが、委託されても保証会社ではありませんので、債権譲渡も行われませんし債権放棄などの手続きもできなくなります。そして一番の問題点が、任意売却をする前に債権回収業者(サービサー)に業務が委託されてしまった場合、あとで「いや任意売却したいんだけど」と希望しても、できない可能性が高いということです。業務委託されたあと、そのまま競売にかけられてしまうこともあるのので、注意が必要です。
サービサーっていったい何者なの?
サービサーというのは債権回収会社の総称です。名前だけ聞くと恐ろしい会社なんじゃないか...と思ってしまいがちですが、そうではありませんのでご安心を。ちゃんと国から認められた会社です。住宅金融支援機構のサービサーは
・エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
・オリックス債権回収株式会社
・株式会社住宅債権管理回収機構
・日立キャピタル債権回収株式会社
上記4社となります。
日立って日立製作所?なぜ債権回収の業務を?
4社のうち3社は金融関係の会社ですので、なんとなくわかるのですが、なぜ突然日立?と思い調べてみると、確かに大手企業日立製作所のグループ企業であり、債権回収を行っている会社でした。住宅金融支援機構の住宅ローン回収以外に、奨学金や三菱東京UFJフィナンシャルグループでの回収業務などを主に請け負っている企業のようです。
住宅金融支援機構での任意売却をする場合に出てくる【費用控除基準】って?
費用控除基準とは、持ち家を売却する際に発生する手数料などを控除することです。代表的な例を挙げると
・仲介手数料(全額免除)
・登記費用(1万円以下の司法書士や登録免許税)
・管理費滞納分(マンションの管理費。過去5年分のみ)
・公租公課(優先税は全額)
・破産財団組入金(売却金額の3パーセントまで)
などです。上記分に関しては売買代金から控除されるのですが、抵当権が2重3重とある場合は、それらの抵当権も解除する必要が出てきます。(通称ハンコ代)気になる引っ越し費用ですが、機構での任意整理は引っ越し代金の控除は基本的には認められていませんが、状況に応じて10万円~30万円程度であれば相談に応じてくれる可能性もあります。印紙代は控除にはならないので要注意です。
任意売却の【ハンコ代】とは?
ハンコ代とは、契約によって二重三重に抵当権がついている物件を任意売却する際に発生する担保解除抹消料の通称です。何かあれば自宅を担保に。と契約している場合、どうしても二番手三番手の業者には配分が回らないことが多いです。業者側からすると「なんで一銭も受け取っていないのに抵当権解除しなきゃならないんだ」となりますよね。そこで基準を設け、〇〇万円支払うので解除して下さい。と交渉をする必要が出てきます。その代金も上限はありますが控除されますのでご安心ください。第二順位抵当権であれば、30万円または残元金の1割。どちらか低いほう。第三順位抵当権であれば、20万円または残元金の1割。どちらか低いほう。といった具合です。しかし中には「いやこんな金額じゃ納得できないよ」という回答になる場合も少なくはありません。その際には交渉という流れとなります。
住宅金融支援機構の任意売却のポイント
・支払いが滞りだしたらすみやかに機構に相談し、任意売却の手続きを。
・「まだいけるかも...」と悩んでいる間にも遅延損害金は発生するわ、最悪サービサーに委託されてしまう可能性も。
・機構は保証会社をつけていないので、サービサーに委託されたら任意売却すらできなくなることも視野に。
・売却にかかる手数料等は控除される項目もある。
大まかな流れとしては、通常の任意売却と変わりませんが上記ポイントを押さえておかないと「こんなはずじゃなかった!」となりますので、しっかり確認されておくことをおすすめいたします。やはり一世一代の大きな買い物でしたから、簡単に手放したくはない。という気持ちが強くなってしまいますが、優先すべきは建物ではなく今後のご家族の生活なのではないでしょうか。もし手放すこととなってしまっても競売よりも売却金額も市場価格に近いですし、ご近所さんにバレる可能性も低いですよ。