個人事業主が自己破産すると事業継続は不可?破産費用と注意点
自己破産後も今まで通りに事業を続けられる...?
自己破産をしたからといって閉店や倒産を余儀なくされたり、事業を停止しなければいけないということはありません。
この記事では、「雇用している従業員はどうなる?」「破産後でも事業を続けることはできる?」「事業資産は手元に残るの?」といった内容について解説していきます。
その他にも「どんな影響があるの?」「誰に相談すればいいの?」といった疑問にも触れていますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
整理対象を選べる「任意整理」や、財産を残して最大1/4まで減額できる「個人再生」など、自己破産以外にも解決方法はいくつもあります。
もし自己破産に躊躇しているのであれば、他の方法で解決できないか無料診断ツールで調べてみましょう。
いくつかの質問に答えるだけで、あなたに合った解決方法をすぐにアドバイスしてくれます。
自己破産後の事業継続はできない?
結論から言うと、個人事業主の方が自己破産をした場合、今までのように事業継続をすることは難しいと言わざるをえません。
なぜなら、自己破産は一定の財産だけ残して、その他の財産は全て処分する(売却して返済に充てる)必要があるからです。
個人事業主の自己破産では、具体的に次のような問題が発生します。
個人事業主が自己破産した場合のリスク
・機材などの価値のある資産を全て差し押さえられる
・従業員の雇用契約を解消する必要がある
・自己破産が取引先に伝わり、契約を解消される
・信用機関のブラックリスト登録で融資・リースを受けられなくなる
(信用情報機関に「事故情報」として5年~10年ほど掲載される)
このように自己破産後は、事業の継続をすることも、すぐに新規開業をすることも難しくなります。
その他の自己破産のデメリットはこちらの記事で解説しています↓
反対に、従業員や機材がなくても事業が滞らないような場合には、自己破産後でも問題なく事業継続できるでしょう。
最近では「再チャレンジ支援融資制度」なども出てきており、破産者であってもある程度は融資が受けやすくなってきています。
廃業歴のある方に対して、新規事業のための資金を融資する制度のこと。
個人事業主では難易度が上がる?弁護士の助けは必須?
自己破産は、自分だけの力で手続きすることもできます。
ただ、事業をしている場合は借入件数や借入総額が多くなるため、そのぶん手続きも複雑になります。
また、個人事業主が自己破産する場合、「管財事件」となる可能性が高いです。
管財事件は「同時廃止」よりも更に難易度が上がることから、はじめから弁護士などの専門家に相談・依頼しておくことをおすすめします。
※「管財事件」と「同時廃止」については後述します。
自己破産の弁護士費用はどれくらい?
弁護士費用は同時廃止と管財事件とで大きく異なりますが、先述のように個人事業主が手続きをする場合は管財事件が適用されるケースが多いです。
管財事件となると、弁護費用だけでも少なくとも50万円以上はかかります。
また、事業内容や債権者数、従業員数によっても弁護士費用が割増されるのが一般的です。
管財事件の弁護士費用例※債権者5社/従業員10名の場合で想定
事務所 | 着手金 | 報酬金 | 総計 |
---|---|---|---|
A社 | 50万円~ | - | 135万円 |
B社 | 30万円~ | 20万円~ | 50万円 |
C社 | 40万円~ | 40万円~ | 79万6,000円 |
また、弁護費用とは別に裁判費用や実費も必要となります。
その他に手続きなどでかかる費用
①予納金:20万~
②その他:
・官報公告費:16,090円
・郵便切手:4,100円(東京地裁の場合)
・手数料(収入印紙代):1,500円
総計:約22万円~
このように、「弁護士費用+諸費用」で考えれば100万円以上とかなり高額な費用がかかることになります。
個人の同時廃止は総額30万円~50万円ほど済むことを考えると、個人事業主の自己破産がいかに労力を要するかがお分かりいただけると思います。
そのため、弁護士に依頼する際は無料相談サービスなどを利用して、「この人なら信頼して任せても大丈夫!」と思える弁護士に依頼するようにしましょう。
また、事務所によっては費用の後払い・分割払いに対応してくれるところもあるので、まずはそういった事務所を優先的に探してみることをおすすめします。
こちらの記事で弁護士事務所の選び方について説明していますので、参考にしてみてください↓
実績豊富でおすすめ|債務整理に強い弁護士・司法書士を6つに厳選!
個人事業主は管財事件で処理される?同時廃止との違いは?
個人事業主が自己破産をする場合、同時廃止と管財事件のどちらかが選べます。
しかし、実際には基本的に管財事件扱いで処理されるのが通常です。
これは個人事業主の場合には売掛金債権などの複数債権者であることも多く、その回収が問題となることがあるためです。
他にも、個人事業主だと差し押さえできる資産も同時廃止で認める額以上であることが多くなっています。
そのため、弁護士も基本的に個人事業主が自己破産する際には管財事件の準備を進めていくこととなります。
管財人の仕事とは?
管財事件となると管財人が原則として専任されます。
この管財人は法律事務所の弁護士などが努めますが、その働きは様々です。
例えば、自己破産に関する財産調査を行ったり、破産者と面談して自己破産の流れを検討していくなどの仕事をします。
他に、自分宛ての郵便物は管財人も閲覧することが可能となります。
破産管財人が裁判を起こすといったこともありますが、こうした破産管財人は自己破産をする上で助けになってくれることもあります。
管財事件には少なからずデメリットがある
管財事件になると色々と面倒なことは確かです。
まず、管財事件は弁護士の依頼費用や裁判所へ納める費用が更に高くなります。
例えば、裁判所へ納める費用は同時破産ならばせいぜい数万円で済みますが、管財事件になると20万円以上の金額を収めないといけないこともあります。
これは個人事業主の人にとっては大きな負担となることもあります。
他にも、自己破産が終わるまでの期間も長引きがちです。
同時廃止ならば早くて数週間で終わることすらある反面、管財事件は長い場合には1年以上の長きに渡って行われることもあります。
この間は引越しなどをするにも裁判所へいちいち許可を仰がねばならず、事業にも影響が出てきます。
また、管財事件になると裁判所等へ出向かないといけない回数も増えてきます。
このように管財事件となると一気に負担が増えることから、なるべくならば後述する同時廃止でできないかどうか弁護士と検討する事が大事です。
同時廃止で自己破産ができるケース
状況によっては個人事業者であっても同時廃止できることもあります。
例えば、家計が事業用と生活用できっちり分けられていたり、資産・資金がほとんどないような場合です。
こうした場合には同時廃止が利用できることもありますが、大阪などの裁判所ではこうした場合でも必ず審尋を経なければいけないようなこともあります。
いずれにしても同時はさんが出来るかどうかはケースバイケースでもあり、まずは専門家に相談して話を聞いてみる事が大事です。
個人事業主の自己破産時に必要な書類
個人事業主が自己破産する場合の必要書類は実に多くなっています。
- 自己申告申請書
- 債権者一覧表
- 住民票
- 過去2年分の確定申告書類
- 預金通帳のコピー
- 保険証券のコピー
- 退職金証明書
- 車検証
- 車の評価に関する書類
- 登録事項証明書
- 不動産登記簿謄本
- 賃貸契約書
- クレジットカードや消費者金融カード
- 認印
など
過去2年分の確定申告書類が見つからない場合、所得証明書(もしくは課税証明書)を提出したうえで、事業の説明をすれば問題ありません。
このように必要となる書類は多いですが、ほとんどは弁護士が代行して用意・作成してくれます。
【個人事業主Ver】自己破産手続きの一連の流れ
①弁護士へ相談・依頼
まずは弁護士事務所に電話またはメールで連絡を取り、債務状況などを伝えます。
そして面談のスケジュールを決め、弁護士から直接アドバイスや解決方法の提案をされ、内容に問題がなければ契約の手続きを行います。
契約が完了したら、弁護士から各債権者へ受任通知を発送します。
この通知が相手に届いたタイミングで取り立て行為は完全にストップします。
無料相談を受け付けている事務所の場合は、契約が完了するまで料金は一切発生しません。
②破産申立の準備
契約後は、財産状況などの調査や申請書類の作成を行い、準備ができたら破産申立を裁判所に提出します。
ほとんどの作業は、代理人として弁護士が代わりに行ってくれます。
③破産申立
破産申し立てでは、”破産管財人の選定”や”破産管財人との面談”、”債権者集会”などが行われます。
そして話がまとまれば「免責決定」となり、晴れて借金の一切が無くなります。
④その後
自己破産後は、官報に情報されたり、信用情報機関に事故情報が登録されることになります。
信用情報機関に登録されることで、5年~10年の間がローンなどの利用ができなくなります。
個人事業主が自己破産を行う際の注意点まとめ
- 個人事業主の自己破産は難易度が上がるため、弁護士へ依頼するのが無難
- 難易度が上がる分、弁護士費用も高額になる(少なくても50万円~)
- 基本的に個人事業主が自己破産をする場合、管財事件として扱われる
以上のように、個人事業主が自己破産をする際には、ハードルがより高くなります。
こうしたこともあり、はじめから弁護士に依頼して、あなたの代わりに手続きを進めてもらうのが正解です。
自己破産をするとなると管財事件として扱われますが、同時廃止が出来ることもありますから、この点も弁護士と相談しておきましょう。
弁護士事務所の選び方については、こちらの記事を参考にしてみてください↓
実績豊富でおすすめ|債務整理に強い弁護士・司法書士を6つに厳選!