自己破産のデメリット6つ!その後の生活で家族や親族に迷惑はかかる?
自己破産のデメリットとその後の生活って?
自己破産には債務免除というメリットだけではなく、デメリットも付いてきます。クレジットカードが作れないという代表的な事例だけでなく、職業によっては仕事にも影響するなど日常生活に支障をきたすことも。また、住居や不動産など大きな財産が没収されるケースもあります。自己破産を検討されている方は、メリットだけではなく、デメリットもしっかり理解しましょう。今回は、「自己破産のデメリットとその後の生活」についてご説明いたします。
自己破産のデメリットとは?
所有財産の処分
自己破産をした場合、所有する財産が没収される場合があります。没取される場合と対象外となるものは一体どんなものでしょうか。以下を見てみましょう。
まず、自己破産を申請した場合、全ての財産が没収されるわけではありません。「1品で20万円を超える資産」や「総資産で99万円を超える財産」が没収対象となります。この没収される資産を「破産財団」と言います。
具体的な例で言いますと、住宅や自己名義の不動産、給料、退職金の1/8、保険解約金、貸金などが破産財団にあたり、没収の対象となります。お給料に関しては、全額ではなく、手取り給料の25%、または33万円を超えた金額のどちらか高い方が対象となります。また、預金については、99万円を超える場合は年金であっても没収されてしまいます。
上述の通り、99万円以下の財産は没収されません。これを、「自由財産」といいます。
基本的に、日常生活、社会生活、仕事に支障をきたすものは対象に当たりません。これらを没収すると、破産者を救済するという目的が達成できなくなってしまうからです。具体的な例でいいますと、電話・テレビ・パソコンなどの家電、家具、寝具、自転車、年金などは没収されません。また、所有財産であっても、名義人が破産申請者ではなく、家族の場合は、没収されません。さらに、自己破産後に所有する財産は没収されないので、安心してください。
対象財産を査定する際に、近所の方に知られてしまうのではないかと不安になる方もおられるでしょう。しかし、テレビドラマのような大掛かりなものはありません。事前連絡もあり、数人の調査員がくるだけなので、無駄にプライバシーが脅かされるといったことはありません。
自由・資格の制限
自己破産の手続き中は、①自由の制限と②公法上・私法上の資格制限が課されます。
①自由制限には、居住の制限(破産法第37条)、監守引致・監守(破産法38条)、通信の秘密の制限(破産法第81・82条)があります。
居住制限では、破産者は裁判所の許可なしに引っ越しや旅行などが制限されてしまいまいす。また、必要な場合の身体拘束や逃亡や財産隠しの可能性がある場合には、監守引致・監守がなされます。そして、破産者の郵便物は破産管財人に郵送されてしまうので通信の秘密も制限されます。
このほかには、破産に関して必要な説明を求められたり(破産法第40条)、破産管財人に家計状況の報告(破産法第157条)を求められたりすることもあります。
②公法上・私法上の資格制限では、一定の職業や資格制限が課されます。
公法上の資格制限として、弁護士・公認会計士・司法書士・宅地建物取引業者・生命保険募集員などの職業では、破産手続き中は業務を行えません。また、私法上の資格制限としては、代理人・後見人・後見監督人・保佐人・補助人・遺言執行者などに就任できないという制限があります。
もっとも、医師や地方公務員などに制限はありませんし、選挙権などの制限もありません。また、これらの制限は手続き終了後、免責許可を得た場合に解除されることになりますので、手続き中の数カ月から半年の間、制限されると考えましょう。
信用情報機関への登録
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます。では、具体的なデメリットは何なのでしょうか。
具体的には、融資をうけたり、ローンを組むことができなくなります。また、キャッシングカードやクレジットカードも作ることはできません。身近なところでいうと、スマートフォンの分割契約もできなくなってしまいます。これらができなくなってしまうのは、金融機関が信用情報機関の情報をもとに審査を行っているからです。事故情報が登録されていれば、基本的に与信審査は通りません。
では、どのくらいの機関がたてば、事故情報が削除されるのでしょうか。
信用情報機関によって異なりますが、5年から10年の期間は登録されることになります。
各機関についてですが、JICC、CICは破産決定後から約5年後、KSCは約10年後に削除されます。
免責許可の制限
一度自己破産をすると二度と自己破産をすることはできないのでしょうか?
この点、実は2回目の自己破産も可能です。法律上回数制限はありません。
ただし、2回目の自己破産は審査が厳しくなり、認められないケースも多くあります。例えば、パチスロやギャンブル、ショッピングなど浪費が原因で借金を作ってしまった場合は認められないケースが多いです。また、1度目の免責許可から7年経過していないと2度目の自己破産はできません。逆に、生活苦による借金の場合は認められやすくなります。病気により働けなくなった場合で、生活費として借金をしてしまったケースなどです。このような場合は、「やむをえない事由」として、免責許可が下りる可能性が高いのです。
自己破産に回数制限がないからといって、安易に自己破産するのだけは避けましょう。自己破産には財産が没収されたり、資格制限があったりとデメリットも多い制度です。
公的名簿への記載
公的名簿への記載には、2種類あります。
1つは官報への記載です。自己破産した場合、住所や氏名、決定年月などが官報に記載され、ます。掲載期間は、開始決定の約2週間後と、免責決定の約2週間後までとなります。新聞のような形のものなので、一度発行されると保存されている限り、ずっと記載されていることになります。ただし、これは金融機関や債権者に知らせることが目的です。一般の人が目にすることがほとんどないでしょう。
2つめは破産者名簿への記載です。破産者名簿とは、自己破産後、復権を得られていない人が載る名簿のことです。多くの人が勘違いをしているのですが、自己破産者全員が記載されるわけではなく、ほとんどの人は記載されません。というのも、免責をうけた方は載らない仕組みだからです。また、手続き中も記載されることはなく、免責不許可や却下になった人が記載されることになります。こちらは、一般には非公開で一般人が閲覧することはありません。破産者名簿の削除の時期は、免責許可があったときや、破産手続きの廃止、破産手続きの終了から10年経過、すべての債務を返済したとき、となります。
連帯保証人に与える影響
自己破産が認められると、破産者自身は借金を返す必要がなくなります。すべて免責許可を与えられ、処分すべき財産がある場合は、管財人の管理のもと債権者に平等公平に分配されるためです。しかし、あなたの債務に連帯保証人がいた場合はどうでしょうか。あなたの債務と連帯保証人の債務は別個の債務とみなされます。そのため、債務は全て連帯保証人に請求されることになるのです。このように、自己破産が認められても連帯保証人には多大なる迷惑をかけることになります。この場合、誠意をもって謝罪をすべきです。連帯保証人は通常、近親者や友人、親族などが多く、これをきっかけに関係が崩壊することも十分ありえるのです。自分は免責を受けても、連帯保証人は保証債務すべてを弁済しなければならない点については理解しておきましょう。
自己破産その後の生活は?
手続き申請中の生活で厳禁とされる行為とは?
破産申請手続き中の生活で絶対してはいけない厳禁行為があります。下記3つに特に注意しましょう。
1 名義変更
没収を免れるために、自宅や自己所有の不動産の名義を変更してはいけません。財産隠匿で免責不許可事由(252条1項1号)となってしまいます。
2 借金の返済
あなたの財産は基本的に、破産管財人に管理されることとなり、勝手に特定の債権者に返済することはできなくなります。連帯保証人に申し訳ないからといって、金銭を内密に渡すのはNGです。仮にバレた場合は、こちらも免責不許可事由(252条1項3号)となります。
3 新たな借入
新たな借り入れも絶対に禁止(破産法252条1項2号)です。クレジットカードの現金化するのもNG。クレジットカードはそのような目的で作成されたものではないからです。また、破産申請の1年前以降、破産開始決定があるまでの間に信用状態の虚偽を告げて借金をすると、これも免責不許可の対象となります(破産法252条1項5号)。場合によっては、詐欺罪の対象になることもあるので、注意してください。
自己破産で家族への影響は?
自己破産の効力は一体誰に及ぶのでしょうか。
まず、自己破産につき免責許可が認められると、破産者自身は債務を支払う必要がなくなります。そして、あなたに処分すべき財産があった場合、すべて破産管財人の管理のもと、競売され、換価処分等が行われます。換価された金銭は、債権者に平等・公平に分配されることとなります。したがって、自己破産の効力は、債務者である破産者自身と、債権者に及ぶことになります。法律上ではありませんが、信用情報機関に破産が事故情報として登録されるので、金融機関にも派生的に効果が及ぶといえるでしょう。
次に、家族の財産はどうなるのでしょうか。
自己破産で対象となる財産は破産者名義の財産のみです。ですので、家族の財産には影響はありません。家族名義の預金や、子供の学資保険なども大丈夫です。
もっとも、自宅などの不動産が、家族と共有名義の場合、家族にも影響が出ます。自宅の場合、住み続けられるかはケースによります。自宅などの住居が家族と共同名義の場合、破産者の持分のみが没収されます。没収の方法ですが、任意売却し、現金化する場合もあれば、競売によって家族や親族が落札し、自宅を取り戻すケースもあります。一番家族にとってリスクが大きいのは、競売後第三者が落札する場合です。家族共有持分も競売にかけられ、安く叩かれる可能性が高いからです。
以上から、自己破産の効力は、原則として債権者と破産者の間にのみ及びますが、住居が家族と共有財産の場合などは家族にも影響します。
自己破産で仕事に影響は?
では、自己破産は仕事にも影響するのでしょうか。
基本的に、自己破産は就職に影響することはありません。一般企業がわざわざ与信審査まですることはありえません。また、現在従事している会社を解雇になることもありえません。自己破産は法律上認められた制度ですし、解雇に合理的理由があるとはいえないからです。しかし、上述の通り、資格制限による欠格・登録取消しはあります。警備員、弁護士、司法書士、公認会計士、生命保険募集員などは免責許可が出るまで、働くことはできません。もっとも、免責許可が下りた場合は、復権できます。基本的に、普通の会社員には影響がないと考えてよいでしょう。周囲にバレないか心配される方もいますが、弁護士も秘密保持契約によりプライバシーを最大限考慮してくれるので、バレることはありません。
自己破産にはデメリットもある!
- 「1品で20万円を超える資産」・「総資産で99万円を超える財産」が没収対象
- 破産者名義の財産のみが対象、家族名義は没収されない。
- 信用情報機関への掲載、公的名簿への掲載がある
- 連帯保証人は免除されない
- 申請手続き中の「名義変更」「借金の返済」「新たな借入」は厳禁
- 資格制限があるが、普通の会社員には影響なし
デメリットさえきちんと理解すれば、自己破産は債権者の取り立てなどの悩みから解放される有効な手段です。
現在の借金総額を考えた上で、自分に最適な債務整理の方法を選んでください。
自己破産が必要な場合は、法律事務所に相談し解決しましょう。