自己破産で銀行口座が凍結!?準備と対処の注意点
自己破産で大切な銀行口座はどのように扱われる?
借金問題の解決策の一つが自己破産ですが、「自己破産をすると銀行口座が凍結されて使えなくなる」という話をよく聞きます。
もしも銀行口座が凍結されてしまったら給料は引き出せるのかどうかが気になるでしょうし、家賃や公共料金の支払いがどうなるのかも気になるでしょう。
そうした不安を解消する上でも正しい知識を身に付けることは非常に大切です。
自己破産で銀行口座は使えなくなるのか、その場合はずっと使えないままなのか、何か準備した方が良いことはあるのかなど、自己破産による影響をここでしっかりと学んでおきましょう。
凍結される銀行口座は特定のものだけ!
さて、まずは最も気になるであろう「自己破産をすると銀行口座は凍結されるのか?」について解説していきますが、結論から言うと銀行口座は凍結されます。ただし利用しているすべての銀行口座が凍結されて使えなくなってしまうわけではなく、一定の条件下にある銀行口座のみが凍結される可能性があります。そのため「自己破産をすると銀行口座が凍結される」という認識は間違いであり、正しくは「債権者となる銀行と関係する口座は凍結される可能性がある」となります。
借入れがある銀行の口座は凍結される
銀行から直接または傘下のカードローン業者などを利用している場合は、保有している銀行口座が凍結されてしまう可能性があります。銀行と直接取引をして融資を受けている場合に凍結されるのは分かりやすいでしょうが、たとえば三菱UFJ銀行に普通預金口座を保有していてバンクイックからカードローンで借金をしていた場合、この債務を免責しようとするならば三菱UFJ銀行にある口座凍結されてしまう可能性が高いです。同様に三井住友銀行に口座を保有している状態でSMBCモビットを利用している場合も凍結される可能性があります。銀行の直下にあるカードローンやキャッシングを利用している場合は高い確率で凍結されてしまいますが、同じくバンクイックから借りた借金が返済できなくて自己破産をする場合でもりそな銀行の口座が凍結されることはありません。同様に、本店から借り入れをしている場合は支店も含めて凍結されてしまうという具合で、直接取り引きがなくとも凍結される可能性があるので注意が必要です。凍結された口座がどのように扱われるのかというと、凍結時点の預金を強制的に借金返済へ充てて債務の相殺に使われます。
借入れがない銀行の口座は凍結されない
銀行が債権者とならない状態の銀行口座に関しては、基本的には何の変化もありません。普段通り使用し続けることができます。凍結対象となるのはあくまでも債務が存在するものにですが、自己破産を行う場合は「20万円以上の財産を処分される」というルールがあります。破産管財人によって高額な資産が処分されますが、その基準が20万円です。もしも凍結対象とならない銀行口座に20万円以上の現金預金があった場合、借金を相殺するためのお金として取り上げられてしまう可能性があります。
銀行口座が凍結されると起こり得るリスクとは?
単に口座残高数円程度しかないものが凍結されてしまったとしても困ることはないでしょうが、問題は会社からの給与振込先口座として利用している場合や、年金や児童手当などの福祉手当の受け取り口座として指定している場合、または公共料金や家賃の引き落としなどに利用している場合です。口座が凍結されると一切取り引きを行えなくなってしまうため、給料が振り込まれても引き出すことができず返済に充当されてしまったり、引き落としができなくなって公共料金や家賃を延滞してしまったりする可能性があります。特に給料や年金など生活費の引き出しができなくなる状況は大きな問題になりやすいです。
凍結中の銀行口座は一切の取引ができなくなってしまう
当該銀行口座は入金、出金ともに取り引きが一切できなくなってしまいます。必要なお金が引き出せない、支払うべきお金が支払えないという状況が出来上がってしまうため、あらかじめ対応策を講じておかないととんでもない問題に発展しかねません。給与振り込みができない、引き落としができなくて滞納になってしまうなど、後々まで影響が残りかねない問題を事前に回避しましょう。
預金残高があれば返済に充てられる
凍結対象となる銀行口座だけでなく、特定の時点で預金残高が一定額以上あるものに関しては凍結の可能性があります。預金残高20万円以上ある銀行口座に関しては相殺に充てられる可能性を踏まえ、事前に対処しておきましょう。
再び口座が使用可能になるまで数か月かかる
自己破産を弁護士などに依頼すると、弁護士から債権者に対して受任通知が送付されます。これは「依頼者が自己破産をしますよ」という意味合いのもので、債権者の元に届いた時点で口座が凍結されます。一度銀行口座が凍結されてしまうと約2か月ほどは使えない状態が継続することが多く、解除されるまで当該銀行口座を使った取引は一切行うことができません。法律事務所へ相談した際に注意点として説明してもらえる場合もありますが確実ではないので、よく覚えておきましょう。
一部の口座が凍結されても新規開設は可能
「銀行口座が凍結されてしまうと、以降は一切銀行が取引に応じてくれなくなる」と勘違いしている人も少なくありませんが、基本的に新しく銀行通帳が必要になった場合は問題なく開設することができます。あくまでも債務がある銀行では新規に口座開設ができないだけで、まったく無関係な銀行で口座を開設することは可能です。ただし、何らかの関係でつながっている場合は開設できない可能性もあるので、余計な手間を省く意味でも関係のない銀行を選んで手続きを行うと良いでしょう。
ポイントは3つ!口座凍結前にやっておいた方が良い準備とは?
口座が凍結されるとさまざまな制限が掛けられてしまうため、事前に行っておいた方が良い準備を3つ紹介します。
預金残高を0円にしておく
すでに凍結がほぼ確定している口座もそうですが、預金残高によって相殺対象となり得る口座に関しては、事前に口座からお金を引き出しておいた方が良いでしょう。口座に残高が一定額以上あれば相殺に当てられてしまいますが、そもそも残高がなければその可能性はありません。現金化して手元においておける金額にも99万円以下と上限があるものの、無条件に返済に充てられてしまうよりはマシです。ただし自己破産することを前提として口座から預金を引き出した場合、その時点で引き出した金額が補填対象として見られる可能性もあります。また行為自体が悪質だと判断された場合は自己破産申請が認められないこともあり得るので十分に注意しましょう。
給与振り込みや引き落としに使っている場合は変更しておく
給与振り込み、年金受給、住宅手当や雇用保険などを受給している場合は事前に受け取り口座の変更が必要です。一応、口座が凍結される期間は一時的なものなのでいずれは元通りになりますが、2か月余りの生活費を他から捻出しなければいけなくなるので忘れずに変更しておきましょう。変更せずに凍結されると引き出せなくなるだけでなく、場合によっては入金自体を受け付けなくなる可能性もあります。すると、給与、年金やその他の手当等が受け取れない状態となって一時的に停止してしまったり、会社から「どうしたの?」と聞かれて自己破産の事実がバレてしまう可能性も考えられます。内緒で済まそうとしている人は特に事前準備に気を配りましょう。
凍結されると一切の取り引きができなくなるので公共料金が支払えない
公共料金は基本的に毎月引き落とされますが、凍結中はこれができなくなってしまいます。もっとも、公共料金を1~2か月滞納したとしても特に制限が掛からない状況も多く「凍結解除後にまとめて支払おう」という選択もできないわけではありません。ただ、凍結解除後は口座残高が0円になっている可能性が高く、事前に引き出しておけば公共料金の支払いに充てられていたはずのお金がなくなるだけでなく、人によっては1か月分の滞納でもライフラインが止まってしまう可能性もあります。余計なリスクを避ける意味でも事前に残高を整理しておくとともに、引き落とし口座の変更手続きを済ませておきましょう。
いつ銀行口座が凍結されるの?
自己破産で口座が凍結されますが、このタイミングを正しく理解しておくことが必要です。これまでにも触れてきたところですが、大切なことなので改めて確認しておきましょう。
「受任通知」後に凍結の可能性がある
自己破産後に銀行口座が凍結されるタイミングは、銀行に受任通知が届いた時点です。到着後即座に凍結されると考えて問題ありませんが、銀行による手続きのスピードには違いがあるので郵送での到着日と考えておくと間違いありません。自己破産を弁護士に相談したとき、弁護士が依頼を受任したときにはまだ口座は生きているので、勘違いしないよう注意しましょう。
受任通知が届いた時点の口座残高が差し押さえの対象になる
口座が凍結され、そこから返済金が相殺されることは度々紹介してきましたが、これは凍結中ずっと相殺され続けるわけではありません。あくまでも凍結時点の口座残高から返済に充てられるだけであって、仮に凍結中に入金があった場合は残った状態で凍結解除されます。事前に給与受け取りや公共料金支払いに指定している場合は変更しておいた方が良いと説明していますが、万が一この準備が間に合わなかったとしても受任通知のタイミングいかんによっては給料を失わずに済ませることも可能です。給料日よりも前に受任通知を出してもらい、残高がほとんどない状態で凍結させて後から給料を振り込み、凍結解除後に引き出すという具合です。
しっかりと準備をすれば怖がる必要はない
自己破産によって、使用している銀行口座の一部が凍結される可能性があります。凍結対象となるのは債権者または債権者と強い関連がある銀行口座、預金残高20万円以上の銀行口座で、これ以外は対象外です。凍結期間は約2か月で、この間は引き出しだけでなく入金もできなくなる可能性があるので、事前に給料受け取りや支払いで利用している場合は別口座に移しておきましょう。