連帯保証人として債務の請求が来たが払えない場合はどうする?
連帯保証人に請求がきたけど払えない!
「連帯保証人だけは絶対になるな!」とはよく言われますが、その理由はひとえに自分が関与していないところで急に生活が壊されてしまう可能性があるからです。
どのような状況であっても連帯保証人になっている場合は債権者から借金の支払いを求められた場合に応じる義務があり、これを代位弁済といいます。
これに応じることができなければさまざまな制約を受けることになってしまいます。
ここでは、そんな突然訪れる支払い依頼に対して応じることができない場合はどうなってしまうのか、どんな対処法があるのかなどを解説していきます。
連帯保証人として返済請求に応じないとどうなる?
まず覚えておく必要があることとしては、返済請求に応じなかった場合の処遇です。連帯保証人である以上は債権者からの支払い要求には従わざるを得ない立場にありますが、突然「本来の債務者がお金を支払ってくれないので、代わりに支払ってください」と言われてしまうと金策がでいないことも考えられます。しかもこのような状況では一括支払いを要求されてしまうことが多く、到底支払えないような請求の可能性が少なくありません。万が一にも支払いができない状態のままでいると督促が来るのはもちろんのこと、差し押さえなど法的な拘束力のある決定が下る場合もあります。裁判所が給料の差し押さえを決定すると給与振り込み口座に入金された時点で1/4、または33万円を超える分が強制的に返済に充てられるようになります。また、これ以前に支払いを延滞または滞納した時点で信用情報機関に異動情報が登録されてしまうため、新しくローンを組むことができなくなってしまう可能性があります。このような状態ではそれまでの生活を継続することが困難になってしまうことが多いため、迅速に次のような方法をとることが求められます。
返済請求に応じられない場合にできる3つの対処方
返済をしないという選択肢がない以上、何とかして返済ができる状態を整理するか、または合法的に返済義務を免責するかのいずれかしか方法はありません。債権者から返済請求があった時点で返済方法を直接交渉する余地があれば良いのですが、連帯保証人に対して返済請求を行う場合は通常一括返済を求められてしまいます。数十万円、数百万円ならばまだ一括で返済できる可能性もあるでしょうが、それができない場合は任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理の選択肢からいずれかを選んで実行することになるため、その中で少しでも良い結果にたどり着ける方法を正しく選んでいきましょう。
分割返済を希望する場合は任意整理
一括では支払えないが分割でならば支払うことができる状況であれば、任意整理を行うことで対応できます。もっとも任意整理は自分がしたいと思えば自由にできるものではなく、銀行、消費者金融、クレジットカード会社やその他の債権者がそれぞれ減額や分割返済の申し出に応じてくれればの話です。必ずしも全員一致で合意する必要はありませんが、個別に債権者が任意整理の申し出を受けて和解に応じてくれた場合にのみ分割返済が認められます。任意整理で分割が認められる期間は基本的に3年ですが、最大5年まで延長することができます。この期間内で完済できる可能性があると判断された場合は和解に応じてもらえる可能性がありますが、根本的に無理だと判断された場合は別の方法を選択せざるを得ません。任意整理に応じてもらえると分割返済が可能になるだけでなく、将来利息カットや債務自体の減少にも応じてもらえる可能性があるため返済の負担は大きく軽減できます。また、分割返済の方法としては次に紹介する個人再生という選択肢もあります。
任意整理では金額が大きすぎる場合は個人再生
個人再生とは、裁判所が介入して債権者との和解を援助してくれるだけでなく借金の総額が大幅に減額される方法です。任意整理は当事者間で行う話し合いによって解決策を見出す方法ですが、個人再生は裁判所が仲介するので決着がつきやすいメリットがあります。債務の圧縮額はおおむね1/5程度と非常に大きく、任意整理では期間内に完済することが難しくとも金額が小さくなれば対応できる状況であれば、こちらを選択すると良いでしょう。ただし、個人再生を申し立てるためには一定の条件があるため、事前によく確認しておく必要があります。
最終手段は自己破産で免責を目指す
任意整理、個人再生ともに債務は軽減されるかもしれませんが返済義務は残ります。代位弁済の請求があった時点で十分に生活基盤が整っている状態であればまだしも、自身の生活で精いっぱいの金銭状況では他人の借金まで支払うことは難しいでしょう。このような場合には、自己破産で債務自体を免責して返済義務をなくしてしまう方法があります。「私には返済できません」ということを公言して借金を完全に放棄する方法が自己破産で、裁判所に申立てが認められれば一切の返済義務から解放されます。債務に関しては最もメリットが大きい自己破産ですが、一定以上の価値がある資産を強制的に処分しなければいけなかったり特定の職業に就くことが一時的に制限されるといったリスクも最も大きい方法です。
保証人と連帯保証人の違いとは?
ところで、保証人と連帯保証人の違いについては正しく理解しているでしょうか?ここで取り上げている内容はすべて“連帯”保証人に関することであって、単なる保証人の場合は該当しないものがたくさんあります。この辺りで一度違いにについて確認しておきましょう。それぞれを正しく表記すると、連帯保証人はそのままですが保証人は“単純”保証人となります。単純保証人の場合は以下の3つの権限が認められています。
・検索の抗弁権
主債務者が返済を拒んだ場合は保証人に対して返済請求が来る可能性がありますが、このときに「本人には十分な返済能力があるのだから、そこから返済してもらってくれ」と言うことができます。また、「本人が返済に応じないなら財産を差し押さえてくれ」と言うことも可能です。あくまでも主債務者に返済能力がある場合に限りますが、これによって不当に財産が差し押さえられるなどのリスクが軽減されます。
・催告の抗弁権
債権者から返済請求があった場合、「まずは主債務者(本来の債務者)に対して請求してくれ」と言い返すことができます。もしも主債務者が行方不明になっていたり自己破産をしていたりする場合は難しいですが、少なくとも急に支払いを強いられるような状況にはなりません。
・分別の利益
単純保証人が複数名いる場合、一人で債務の全額を返済するのではなく頭割りして返済することができます。仮に1,000万円の債務があったとして、単純保証人が5人いれば1人当たり200万円で済み、単純保証人が10人いれば100万円ずつの返済で済みます。
これらは単純保証人にのみ認められた権利であり、連帯保証人には一切認められていません。債権者から請求されれば有無を言わさず返済義務が生じるだけ言い逃れできません。
連帯保証人として完済した後に主債務者へ弁済請求することは可能か?
連帯保証人として主債務者の債務を代位弁済した場合、求償権によって後から主債務者に請求することができます。しかし、代位弁済の必要が生じた時点で主債務者には返済能力がないと判断できるため、現実的にお金を取り戻せる可能性は非常に低いといわざるを得ません。ただし、自分以外に連帯保証人が存在している場合は、頭割りした金額を超過している分に関しては連帯保証人に対して請求することが可能ですが、すでに頭割りしている場合はできません。求償権を行使する場合は、内容証明郵便にて求償権を行使することを宣言しましょう。
リスクが怖い!連帯保証人は途中で辞められる?
一旦連帯保証人となってしまった場合、契約時に特別な条件を取り決めている場合でもない限りは途中で辞めることはできません。もし仮に債権者がいつでも辞められる旨を定めていたり、主債務者が保証人を辞めることを認めた場合は辞められる可能性がありますが、通常このような状況は起こり得ません。主債務者は「迷惑を掛けたくないから…」などの理由で辞めても良いと言ってくれるかもしれませんが、債権者が自由に連帯保証人を辞められるような契約書を交わすはずがありません。よって連帯保証人は途中で辞めることができないとなるわけです。
少しでも連帯保証人としてのリスクを小さくするためには?
主債務者として、連帯保証人に対して少しでも負担が軽くなるようにと債務整理を行ったとしても、それはあくまでも主債務者の債務が減少または免責されるに過ぎず連帯保証人には何の関係もありません。むしろ、主債務者に請求するのでは回収できる金額が少なくなってしまうということで、債権者は連帯保証人から全額回収しようと動き出してしまいます。連帯保証人として被るリスクを小さくするためには、たとえば定期的に主債務者の返済状況を確認する方法があります。連帯保証人として返済が健全に行われているのかどうかを確認するのは当然の権利であり、これは債権者に対して申し出ることによって行使できます。このように状況を頻繁に確認するくらいしか方法はありませんが、それでも大きな債務が降りかかってきてしまった場合は債務整理しか選択肢はありません。
連帯保証人として請求が来た場合は落ち着いて、まず専門家に相談しよう
連帯保証人は、単純保証人と違い債務者と同じ責任を負う立場です。主債務者が返済不能に陥れば有無を言わさず返済を求められるわけですが、基本は一括です。分割にするためには債務整理が必要で、まったく返済の可能性がなければやはり債務整理が必要になり、泣き寝入りして大きな負担を負う以外は社会的に小さくない制約を受けることになってしまいます。最善の選択肢は連帯保証人にならないことですが、すでになってしまっているのであれば少しでもリスクを小さくするために主債務者の返済状況について、遅延なく継続しているかどうかといった動向を逐一確認するくらいの覚悟が必要です。また、返済請求を受けた場合は正しく状況を認識する意味で専門家に相談すると良いでしょう。