特別送達の受取拒否はNG!裁判所からの郵便を無視すると起こるリスク
ある日突然、郵便局員が特別送達と書かれている書類を届けに来たら?
特別送達は、公的機関(主に裁判所)が重要書類を扱うのに使われる郵便方法ですが、聞き覚えのない郵送物に戸惑ってしまいますよね。
なかなか受け取る機会がない書類ですから、どう対処をすればいいのか分からない方も多いと思います。
この記事では特別送達が送られてくるケースや、受取拒否をするとどうなってしまうのか、受け取った後どう対処すればいいのかについて詳しく解説しています。
間違った対処をしてしまう前に、記事を読んで頂ければ無用なトラブルを回避することができると思いますので、ぜひ参考にしてください。
特別送達は誰でも送られてくる可能性がある?
じつは、日本に住んでいる人なら誰でも特別送達が送られてくる可能性があるんです。
ですので心当たりがない人でも、内容を確認せずに受取拒否をしてしまったり、そのまま放置してしまったりすると、後々大変な事態を招いてしまうことになります。
借金の返済が滞っていている状況であれば、特別送達が借金の督促だと検討がつくでしょうから、受取拒否をしようと考える方もいるかもしれません。
しかし債権者にとって特別送達は、いわば最終手段に入る一歩手前の通告いなります。
そこで受取拒否をすると強制的に債権を回収される可能性もあります。
もし支払が難しい状態であれば、なるべく早くに適切な手続きで対処をしなければなりません。
特別送達が送られるのはどんな時?
特別送達が送られてくる要因は、色々なケースがあります。
「支払督促」や「強制執行」の通告
最も多いケースとしては、キャッシングやクレジットカード、銀行などで借金返済が滞っている人が送られてくるケースです。
このケースでは、貸主により裁判所に申立てをされ、「支払督促」や債権回収のための「強制執行」の手続きに関する通告であることが考えられます。
「競売開始決定通知」
住宅ローンの支払いが滞っているのであれば、抵当権を執行されて不動産の競売が開始されるお知らせの「競売開始決定通知」である可能性もあります。
「賠償請求」などの金銭トラブル
交通事故の賠償請求や何らかの金銭トラブルで裁判所に訴訟を起こされた場合にも、その裁判に関する書類が特別送達で送られてきます。
借金問題や少額訴訟などの事件を扱っているのは簡易裁判所なので、こういったケースでは特別送達の差出元が簡易裁判所になっているはずです。
「離婚調停」などの家庭内問題
また離婚調停や未成年者の非行行為に関しての裁判の通知であれば家庭裁判所から、自己破産などの債務整理に関係する書類は地方裁判所から届くこともあります。
これらの特別送達であれば、おおよそ受取人本人も内容にある程度心当たりがあることが多いでしょう。
「裁判員制度」の呼び出し
一方で送付された宛名本人がそういった金銭トラブルなどの当事者でない場合にも、特別送達が送られてくることもあります。
それが平成21年度から始まった「裁判員制度」です。
裁判員制度は「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に基づいて、一般人が刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に判決を決めるという内容の制度です。
裁判員が決まるまでの流れ
裁判員は、20歳以上の人を対象にランダムで選び、裁判員候補者名簿というリストに登録されます。
その候補者名簿に登録された人には、調査票が送付され、さらに事件ごとの候補者が選ばれます。
候補者に選ばれた人は質問票と一緒に、選任手続き期日のお知らせが送られてきます。
この選任手続期日のお知らせは呼出状とも呼ばれ、候補者に特別送達で配達されます。
裁判員制度の対象となる裁判は、地方裁判所で行われる刑事事件が対象となりますので、通知も地方裁判所が差出元になっているはずです。
特別送達と他の郵便物の違い
特別送達はほとんど裁判所が発送する書類に使われる郵送方法で、他の郵便物とは違って法的効力を持っています。
そのため一般的に送られてくる普通郵便や書留などとは、表の封筒から見た目に違いがあります。
まず封筒には大きく赤字で「特別送達」とハンコが押されていて、封筒は裁判所の封筒が使われるため裁判所名が印字されています。
また郵便局の職員が家を訪問した際、不在だった場合は不在連絡票を置いて帰りますが、この不在連絡票でも見分けることができます。
不在連絡票には差出人名が記載されていて、そこが裁判所名になっているはずですし、下の方にある郵便種類にも特別送達という項目にチェックが付きます。
特別送達を装った架空請求に注意!
近年では特別送達を装った架空請求などもありますが、特別送達は一般人が私的に利用できる郵送方法ではありません。
悪徳業者が装っているものかどうかは、見た目と郵送方法で見分けがつきます。
最初からポストに投函されていたり、本来の形式で配達されてきたものでなければ偽物の可能性があります。
そういった場合は中の書類に記載されている連絡先ではなく、電話帳や消費生活センターで確認した裁判所の連絡先に必ず問合せてください。
記載された振込先に支払うよう請求してくるケースもあるようですが、本物の裁判所からの通知には振込先にいくら振込をするようにといった内容が記載されていることはありませんので、絶対に振り込まないようにしましょう。
特別送達は受取拒否ができない?
特別送達は裁判所が法的効力を持たせるための郵送方法ですから、郵便局員は宛名人に配達する義務があります。
普通の郵便物や一般書留であれば、配達員に受取拒否を申し出たり、受取拒絶と記入して郵便局に持参・郵便ポストに投函すれば受け取りを拒絶することが認められていますが、特別送達の場合は法律上それが認められていません。
とはいっても受取人が「受取拒否をします!」と断固受け取らない態度を示したり、居留守や不在連絡票を無視したりして配達が実質不可能な場合もあるでしょう。
そういった場合には配達員が宛名人になんとかして届けるため、法的に様々な手段が認められています。
以下の章でそれぞれをケース別にみてみましょう。
特別送達を受取拒否された時に郵便局員が取る手段とは
まず受取人が配達員に対して、受取拒否の意思表示をした場合です。
本来であれば配達員は、受取人による受領印やサインをもらって郵便送達報告書を作成し、裁判所に配達が完了したことを報告します。
しかし受取人が拒否する場合には、配達することがルールとして定められているので、受取拒否はできないことを説明し、それでも受け取ってもらえない場合にはポストなどに投函することが認められています。
郵便送達報告書には、正当な理由なく受け取りを拒んだのでその場に差し置いたと記載して裁判所に報告します。
こういった方法で配達をすることを「差置送達」と言います。たとえ受取人が断固として拒否したとしても、配達員は強制的に配達を完了させることができるのです。
またこれは受取人本人が自宅に不在で、例えば配偶者や両親が配達員の対応をした場合でも同じです。
原則宛名人への配達となっていますが、宛名人本人が不在の場合は、「受領について相当のわきまえがある人」に渡すことも認められていますし、その人が受取拒否をしたとしても差置送達が認められているのです。
自宅が無理なら勤務先に送られてしまう可能性も!
玄関口に出て受取拒否と言っても配達されてしまうのなら、配達員がきても無視しようと居留守を使う人もいます。
この場合郵便局員は不在と判断するしかありませんので、不在連絡票を置いて帰ることになります。
居留守ではなく本当に不在だった場合は、再配達の手続きをして郵便物を受け取りますが、居留守を使った場合は不在連絡票に対しても無反応でしょうし、再配達の依頼をすることもないでしょう。
そうすると郵便物は一週間ほど郵便局に留め置かれた後、差出人に返送されることになります。しかし返送されてもそれで終わりになることはありません。
大体の場合は、休日指定で再送達されてくるか、勤務先に送達されてきます。
当然勤務先に送るからといって個人名で送ってくれるようなことはなく、通常通り裁判所から送られてきた特別送達であることが誰が見ても分かるような形で届くわけですから、勤務先にも裁判手続きが行われていることがバレてしまうわけです。
勤務先に送られるのはマズイという人は、自宅に送られてきた時点でちゃんと受取をしておくのが賢明でしょう。
勤務先ともなれば受取人としての分別がある人がたくさんいますので、多くの場合はここで配達が完了します。
特別送達が間違えて送られてきたら?住所や宛名違いの対処法
ここで特別送達が送られてきたものの、送付先の住所や宛名が間違えていた場合どうすればいいのかについて触れておきましょう。
特別送達は受取拒否ができないと解説してきましたが、これは「正当な理由がない場合」に限られます。
宛名間違いや送付先の住所が間違っている場合については、自分に届いた郵便物ではない可能性もありますから、受取拒否をする正当な理由になります。
配達員が届けてきた場合は必ず宛名に間違いはないですか?と言って郵便物をまず確認しますので、そこで宛名や住所に間違いがあればその旨を伝えましょう。
配達時に気付けばいいのですが、もし配達員が帰ってしまった後に気付いた場合はどうすればいいのでしょうか。
法的効力を持つほどの書類が、宛名や住所の表記ミスとなるケースはよほどのレアケースだと思われますが、実際ネット上には誤配についての質問などが寄せられているのも事実です。
考えられる要因としては、申立てをした人が正確な住所や名前を把握していない・裁判所の事務員による処理上のミス・郵便局員による配達ミスなどが考えられます。
そういった何らかのミスで誤配があり受け取ってしまった場合は、形式上配達が完了したものとして裁判所で手続きがされてしまいますので、すぐに郵便局に連絡をして受け取りをした処理を取り消さなければなりません。
自分にとっては関係ない書類だとしても、誤配を受けたことを通知しなければトラブルになってしまいますし、本来送られるべき人の人生にも大きく影響してしまう可能性がありますから注意してください。
付郵便送達ってなに?受取拒否が続けば取られる最終手段
さて少し話を戻しましょう。
先ほど特別送達を受取拒否し続ければ、勤務先に配達されてしまうというお話をしましたが、万が一勤務先でも配達が完了しない場合はどうなるのでしょうか。
あまり考えにくいケースですが、勤務先が企業ではなく個人事業主のような小規模の会社であったり、裁判所が勤務先の住所を把握していない場合には、最終手段として「付郵便送達」という方法で配達されます。
この方法は民事訴訟法107条3項にも正式に認められている配達方法で、書留送達と呼ばれることもあります。
無視し続けると相手に都合の良い判決が下される?
付郵便送達は発送した時点で、「送達されたもの」として一方的にみなされるため、受取の有無には関係なく裁判手続きが進められることになります。
ですから後になって「受け取ってない」と言ったとしてもその主張は認められません。
裁判は出席者だけで進められることになり、相手方にとって都合が良い方向で判決が下されるでしょう。
たとえそれが不当なものだったとしてもれっきとした判決としてまかり通ってしまうことになるわけです。
相手方が債権者であれば、あなたの給料や銀行口座は差し押さえられることになるでしょうし、何らかの訴訟であればあなたは不在のまま敗訴することになるでしょう。
裁判員制度の関連書類だった場合は、正当な理由なく選任手続期日に出廷しなければ罰金を科せられる可能性もあります。
たとえ架空請求でも無視できない?
また相手がまともな業者であればマシなのですが、悪徳業者が架空請求をしていた場合はどうなるでしょうか。
先ほど悪徳業者が偽の特別送達を送り付けてくることがあるお話をしましたが、最近では裁判所に悪徳業者が架空請求を申し立てるケースもあります。
その場合は架空請求だからといって無視をしていると手続きが勝手に進められて、架空請求は法的な手続きを持って正当な支払義務が発生してしまうことになってしまうかもしれないのです。
特別送達に関しては、受取拒否をしたり受け取ったあと放置したりしても、決してアナタにとって有利に働くことはなく、逆にかなり不利な状況に追い込まれる可能性がありますから、適切に対処しなければなりません。
特別送達が届いた時の正しい対処法
それでは特別送達が届いた後どのように対処すればいいのでしょうか。
配達物を開封する前に宛名や住所を確認して、自分に届いたもので間違いなければ、郵送物について心当たりのあるなしに関わらず、まずは内容を確認しましょう。
内容の書類も偽の特別送達ではないかを見極め、本物であった場合は適切に対処します。
債権者から支払督促や強制執行の手続きが行われている場合は、恐らく一括請求になっていて支払に応じることは難しいでしょうから、以下で説明する異議申立てを行います。
他のトラブルで訴訟を起こされている場合にも、不服がある場合は異議申立てをします。
裁判員制度の呼出状だった場合は、正当な理由なく拒否をすることができませんから、原則裁判所の指示に従わなければなりません。
ですが正当な理由で辞退をしたい場合は理由に応じて適切な手続きをしましょう。
裁判員制度の公式ホームページなどを確認すると、裁判員を辞退することができる正当な理由がいくつか挙げられていますので、確認しておきましょう。
特別送達の内容に異議申立てをする方法とは
まず支払督促が届いた際の異議申立てについてですが、裁判所から送られてくる特別送達には「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」や答弁書が同封されています。
答弁書が万が一同封されていない場合は、裁判所に連絡をして答弁書を送ってもらうか、自分で裁判所の公式ホームページの答弁書をダウンロードしてプリントアウトします。
答弁書については1週間~2週間の提出期限がありますので、確認して異議申し立てをする際はなるべく早めに手続きをしましょう。
異議申立てというと不服があるように聞こえるかもしれませんが、支払督促に対しての異議申立ては「一括請求されても支払ができないので、分割払いにしてください」という意味合いも持っています。
裁判所によって書式が多少異なりますが、裁判所から送られてくる答弁書やホームページでダウンロードする答弁書には、分割払いの項目もちゃんと用意されていますのでそこに記入をします。
答弁書は必要事項を埋めていけばいいのですが、分割払いについての項目では、「話し合いによる解決(和解)を希望します。」というところにチェックを入れて、次の「分割払いを希望します」というところにもチェックを入れます。
そしていくらずついつから支払いをしていくのかを記入しましょう。
記入された金額で分割払いに応じるかどうかは原告(債権者)次第なので、自分の言い分として実際に和解成立後に支払っていける金額を記入します。
また利息免除や遅延損害金の免除を求める場合は、その旨も記載して支払が困難である理由を書いておきましょう。
支払督促以外の訴状について異議申し立てをする場合は、「紛争の要点に対する答弁」の欄に訴状のどういった部分に間違いがあるのかなどを簡単に記入します。
また自分の言い分についての証拠になる証明書などがあれば、コピーを添付して裁判所に提出します。
自分で対応できない時は弁護士に相談しよう
答弁書を送ると、原告側の一方的な言い分だけではなく、原告側と被告側両者の主張についてどちらの言い分が正しいかを審理するための口頭弁論が行われます。
自分一人で和解成立まで対応する人もいますが、よほど慣れていない限りはなかなか自分にとって都合のいい判決をしてもらうのは難しいかもしれません。
答弁書の記入の仕方についても、できるだけ不利にならないように記入した方がいいので、特別送達を受け取った時点で弁護士事務所に相談をして、対応をしてもらう方法もあります。
弁護士に依頼すれば当然弁護士報酬がかかりますが、利息や遅延損害金の免除、分割払いの条件なども債務者にとって有利な方向で裁判を進めることができますから、最終的には負担が少なくてすむ場合もあります。
また法律事務所でも無料相談を受け付けているところもありますので、弁護士費用をすぐに準備できないことも含めて、カウンセリングを受けてみるのも良いかもしれません。
弁護士は法律の専門家ですから、状況に応じて適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。
→無料相談を受け付けている弁護士事務所はこちら
特別送達を受取拒否するために宛先不明にするとどうなる?
ここまで記事を読んで頂いた方は、特別送達を受取拒否することがいかに無謀なことか分かったと思います。
なかには裁判なんて面倒くさい!どうにかして雲隠れしてやろう!と考える人もいるかもしれません。
雲隠れをするために特別送達の封書に「宛先不明」と赤文字で書いて送り返してしまう人もいます。
そうすると返送を受け取った原告側は、被告の住民票などを調査して住所が変わっていなければ、調査報告書を裁判所に提出して「公示送達」の申し出を行うことができます。
公示送達とは、住所不明で訴状や差押え命令などが送達できない場合に取られる方法で、裁判所の掲示板に一定期間貼り出され、2週間が経過した時点で送達したものとみなされる制度です。
住所不明にしたとしても公示送達で裁判手続きが進められることになりますので、不利な状況になることに変わりはありません。
逃げられるどころか原告側の主張に基づいて判決が下されるため、より一層追い込まれることになってしまいます。
債権者の請求に応じることができないのであれば、可能な金額で分割払いにしてもらうか債務整理などの方法を検討しましょう。
特別送達|受取拒否をしてはいけない理由と正しい対処法
ここまで解説してきた通り、特別送達を受取拒否にするのは決して賢い選択とは言えません。
すでに裁判にまで発展しているほど問題がこじれてしまっている場合ば、正当な手続きに基づいて自分の言い分と相手の言い分で折り合いを付けなければなりません。
架空請求などの場合でも、請求が不当なものであるという意志表示をきちんとしなければ、支払う必要がないものにさえ法的に支払義務が生じてしまう可能性もあるのです。
裁判なんて面倒くさいからといって放置して、あとになって知らなかった、届かなかったと主張してももう手遅れになってしまいます。
特別送達が届いたら、まずは正式なものであるかどうかを確認して、状況に応じてきちんと対応をするか、自分で対応するのが難しい時は専門家に相談して対応依頼しましょう。
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