個人再生したけど払えない!支払い遅れのリスクと延納・免除の方法
「個人再生を申し立て、裁判所に認めてもらえた!」でも、その後の返済が厳しい…。
実はこのような状態はけっこうあります。あなただけではないので、落ち込まないでください。
個人再生を成功させるには、計画案に沿って債権者への返済をしていく必要があります。しかし個人再生計画の継続が厳しい場合、実は対処するための方法がいくつかあるのです。
個人再生後に借金の返済ができない場合の対処法
個人再生後に返済ができなくなった場合の対処法には、個人再生計画案の変更やハードシップ免責などがあります。
これ以外にも、再度個人再生を申し立てることも可能です。返済の延長や免除を認めてもらうことで、生活が楽になるかもしれません。
この記事では、個人再生の手続きが開始されたものの途中で返済が難しくなってきた方に向けて、支払いが遅れるとどうなるのか、支払い期限を延長したり、返済額を減額したりはできないのかについて説明していきます。
そもそも、個人再生をするための弁護士費用が払えないという方はこちらの記事を参考にしてください。
>>個人再生の平均費用相場|払えない場合の分割・後払いイメージ
再生計画を変更して支払いを延納する
まず、再生計画の変更することで返済期限を延長する方法について説明します。
再生計画の変更とは、個人再生の申立てを行い裁判所から許可はあったが、途中で計画通りに進めることができなくなった場合に行う裁判所への申立てです。
再生計画を変更できる条件
ただ、個人再生計画の変更は勝手にできるものではなく、条件を満たした上で裁判所から許可をもらわなくてはいけません。
具体的な条件の1つが、「やむを得ない理由」があり、「著しく困難」(民事再生法234条)になった場合に限るというものです。
個人再生の途中で、どうしようもなく返済が困難となった場合に計画案の変更が認められるケースがあります。
しかし、再生計画の段階では、予期し得ず、自分ではコントロールできないような事情が必要です。
例えば、次のような深刻な事態に陥った場合です。
- 病気で働けない
- 事故にあった
- リストラにあった
- 介護で職を離れなければいけなくなった
など。
ギャンブルやショッピングなどで浪費した場合には認めてもらえません。
再生計画を変更するメリット
再生計画の変更での一番のメリットは、返済期間が延長されるため1回あたりの返済金額を少なくできるということです。
再生計画案の変更によって最大2年間延長してもらうことが可能です。
これを認めてもらうには、新しい再生計画案を裁判所に提出する必要があります。
ここで注意が必要なのは、再生計画の変更で減額はされないということです。
あくまでも、減額後の金額を返済していく期間を延長するだけですので、返済をする総額は変更前後で変わりません。
再生計画の変更をする注意点
また、再生計画の変更では注意すべき点もあります。
まず、個人再生の対象から除外している場合には住宅ローンの支払い期間は延長されません。
個人再生の住宅ローン特則を利用している場合には、住宅ローンは再生計画の変更の対象外となります。
また、申し立てから認可まで3ヶ月程度かかるので、早めに申告すべきでしょう。
さらに、再生計画の延長では、弁護士費用がかかります。
費用は、30-50万円程度ですが、個人再生の申立てを行った法律事務所の場合は、安くなる可能性もあります。事務所に相談してみましょう。
このように、再生計画の変更により返済期間を延長をすることが出来ます。もっとも、住宅ローンは延長されず、減額もありませんのでこの点は理解しておく必要があります。
ハードシップ免責を利用して支払いを免除してもらう
個人再生後に借金が支払えなくなった場合に、再生計画の変更以外にもハードシップ免責を利用する方法もあります。
ハードシップ免責とは、「債務者の責めに帰すことができない事由」で再生計画を続けることが困難となったときに、一定の条件を満たし、裁判所の認可がある場合に、残債がゼロにできる方法のことです。
再生計画の変更で対応できないとき、認可がおりないときに考える次の手段となります。ですが、ハードシップ免責の認可のハードルはとても高いため、誰でも申請すれば認可されるものではありません。
具体的には次の条件を満たさなくてはいけません。
ハードシップ免責を受けるための要件
- 「債務者の責めに帰すことができない事由」があること
- 3/4以上を返済していること、
- 再生計画の延長で対応できないこと、
- 債権者の一般利益に反しないこと(清算価値保証)
ハードシップ免責には、これらの厳しい条件が課されています。
①「債務者の責めに帰すことができない事由」とは、病気やリストラなどが具体例として挙げられます。再生計画の変更と同じく、ギャンブルなどの浪費では認めてもらえません。
また、③債権者の一般利益に反しないこととは、自己破産していた場合より返済額が多いことを指します。
ハードシップ免責のメリット
ハードシップ免責と再生計画の変更とで異なる点は、ハードシップ免責は住宅ローンも免責される点です。
この点はメリットともいえそうですが、住宅ローンの債務が免責されると担保権執行をされてしまうためローンが残っていた自宅は手放さなくてはいけません。
担保権執行がなされると、住宅は競売にかけられ、売却処分をすることになるため持ち家を失ってしまいます。
これ以外にも、免責除外規定には注意が必要です。例えば、悪意の不法行為に基づく損害賠償請求や罰金などは免責にはなりません。
このように、再生計画の変更が出来ない場合には、債務者の救済措置としてハードシップ免責を利用することができます。
もっとも、条件はかなり厳しいので現実にはかんたんには利用できないのが現状です。
もう一度、個人再生手続きを申立てる
では、支払いが困難な場合に、再度個人再生を申し立てることは可能なのでしょうか。
まず、再度個人再生を申し立てること自体は可能です。
法律上、個人再生の回数には特に制限はありません。また、返済の途中であっても申立てることはできます。
2回目の個人再生申立の条件
では、再度の個人再生に制限や条件などはあるのでしょうか。
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがあります。
どちらの種類かによって条件などが変わってくるため、先にこの2つの違いをご説明したいと思います。
小規模個人再生とは、将来において反復継続した収入が見込まれ、5000万円以下の債務である場合に利用できる手続きです。
こちらの個人再生では、主に個人事業主を想定しています。
給与所得者等再生は、給与などの定期的な収入が見込まれる者であり、収入額の変動が小さい場合に利用される手続きです。
こちらは、サラリーマンなどを想定しています。収入の状況によってどちらが適切かを判断しますが、給与所得者等再生に当てはまる方は小規模個人再生も利用できるため、基本的にはどちらを選んでも良いことになります。
給与所得者等再生の場合は、前回の開始決定から7年間は再度の申し立てができません。
過去にハードシップ免責や自己破産をしている場合も同様です。
小規模個人再生では、このような制限はありません。
また、小規模個人再生の場合、認可決定により全ての手続きが終了するので、返済できなくなってもその後関与してくることはありません。
しかし、給与所得者等再生の場合は、返済できない場合は手続き廃止決定が行われ、減額がなくなってしまいます。
したがって、個人再生前の額を返済していかなければいけません。
給与所得者等再生を利用していた方で再度個人再生を申し立てる場合は、すぐに小規模個人再生の準備をするべきです。
このように、再度個人再生を申し立てることは可能です。もっとも、個人再生の種類によって、気をつけるべき点は異なるので、この点注意しておきましょう。
個人再生後に返済遅れがあるとどうなる?
個人再生後に返済遅れがあると、最悪のケースでは再生計画の取り消しとなります。
もし、返済をしないでいるとどうなるのかについて説明していきます。
勝手に返済を止めても大丈夫?
個人再生後に返済ができなくなったからといって、勝手に返済を止めるのは危険です。個人再生の場合、勝手に返済を止めると個人再生自体が取り消しになります。
この場合、減額された金額ではなく、元の借金額を返済しなければいけません。
小規模個人再生の場合は、再度申し立てを行うことができるので、早めに対処すべきといえるでしょう。
個人再生が取り消されると自己破産に切り替わる?
任意整理に比べて、減額効果の大きい個人再生ですが、個人再生に失敗すると自動的に自己破産の手続きが開始されてしまうのでしょうか?
実は、自動的に破産手続きが開始される可能性は0ではありません。というのも、法律上裁判所の職権で自己破産手続きを開始できる定めがあります(民事再生法250条)。
職権での自己破産手続きの開始は牽連破産と呼ばれており、手続き廃止、不認可、申立て棄却、取り消しの場合に可能となります。
もっとも、これが行われることは滅多にありません。法律上規定はされていて可能であっても、あくまで個人の意思に基づいて手続きされることです。
そのため、基本的には、自分で自己破産を申し立てることが必要だと理解しておきましょう。通常は、個人再生の取り消し決定後に、破産手続きを開始するケースが多いです。
また、個人再生が失敗した場合、通常支払い不能とみなされるため、破産法の定めではなく、民事再生法の定めにより開始することが可能です。
このように、勝手に返済をやめると元の金額を返済しなければいけなくなってしまいます。せっかく減額されたのに、もったいない事態になりかねません。勝手に支払いをストップするのは控え、早めに専門家である弁護士に対処法がないかを相談することをおすすめします。
個人再生は1度の滞納でも再生計画は取り消される?
では、1度でも返済が遅れると再生計画は取り消されしまうのでしょうか?
法律上は、「再生計画の履行を怠ったこと」を理由として再生計画を取り消すことができます(民事再生法189条1項2号)。この文言からは、回数は指定されていないので、1度でも怠れば、取り消しの可能性があります。
もっとも、取り消しには債権者の申立てが必要になりますので、申立てがなければ計画取り消しはありません。
債権者としても、通常は一度債務者に連絡しミスかどうかを確認するはずです。債権者も出来る限り再生計画を履行させて債権を回収したいはずですので、1度返済が遅れただけでは通常取り消しの申立ては行わないでしょう。
以上から、「いつのまにか取り消されていた」という事態にはなることはあまりないので安心してください。
2回目、3回目と延滞が続いた場合
では、延滞が2、3回続くとどうなるのでしょうか。延滞が2,3回続くとさすがに債権者も放置することはありません。
破産手続きに移行し、資産から回収を図る方が良いと判断することになるため、取り消しの申立てを行うことになります。
再生計画の取り消しを申し立てることができる債権者
もっとも、誰でも取り消しの申立てができるわけではありません。取消し申立てを行うには、債権者自身が債務者の総債権額の1/10を保有している必要があります。
つまり、少額の債権者は取消し申立てをすることができないんです。
もっとも、これを満たさない債権者でも強制執行で解決を図ることはあるので延納には注意が必要です。
このように、1度返済が遅れた程度では再生計画が取り消されることはありません。
しかし、それが何度か繰り返されるようであれば、取消しの申立てが行われる可能性が高いので注意しましょう。
個人再生後の返済ができない場合の相談先
では、今月だけ返済の遅延がある場合や長期化しそうな遅延がある場合は、どこに連絡や相談をするとよいのでしょうか。
うっかりミスで今月だけ遅延がある場合や、すぐに支払いができる場合は、債権者に連絡しましょう。債権者に先に伝えておけば、取消しにされるリスクも最小限に抑えることができます。
弁護士や司法書士経由で支払いを行っている場合は、それぞれの担当者に連絡しましょう。債権者に伝えてくれるはずです。そして、遅延が長期化する場合は、別途対策が必要です。
リストラや病気などで長期的に働けず、支払いができない場合は、先にご説明した再生計画の変更やハートシップ免責の件等が必要です。
法律の知識が必要で、1人で検討することは困難なことが多いため、この場合は弁護士に相談するようにしましょう。
個人再生手続きを行ってくれた弁護士がいる場合は、まずその担当弁護士に連絡・相談するのがベストです。このように、返済の遅延がある場合、1回だけの遅延なのか長期化する遅延なのかで対策は異なります。
もっとも、どちらの場合も最悪の事態に備える必要があるため、弁護士に相談することが賢明な判断といえるでしょう。
どうしても払えない場合は自己破産をすべき?
では、個人再生が失敗になった場合他に道はあるのでしょうか。個人再生が失敗してしまい返済ができない場合には、自己破産という道があります。
自己破産は、債務者のすべての債務を免除してもらうための手続きです。裁判所の許可がおりれば、債務を返済する義務は免除されます。
※税金などは免除されません。
これだけを聞くとメリットの大きい制度だと思うかもしれませんが、個人再生と比べるとデメリットも多い制度です。
個人再生と自己破産の違い
というのも、個人再生では住宅や車などの財産を残す選択肢もありますが、自己破産ではこれはできません。
99万円以上の現金と20万円以上の価値のある資産は、没収されることになります。
破産管財人によって調査・管理され、競売によって換価処分をした後に債権者に公平に分配されます。
また、職業によっては制限を受けることもあります。医者以外の弁護士、会計士などの士業、また警備員などは手続き中は免許停止状態となり、職業に従事することができません。
さらに自己破産は誰でもできるわけではありません。「支払い不能」状態である必要があります。
もっとも、個人再生に失敗した方は、もう債務の返済ができない状態であることが明らかであるため、「支払い不能」をいえるでしょう。
このように、個人再生に失敗してしまった場合は、自己破産という選択肢があります。
もっとも、財産を失うなどデメリットも多い手続きですので、最終手段として考えた方がよいでしょう。
ここまでは個人再生後の返済について説明してきましたが、ここからは個人再生で弁護士に支払う費用についても少しだけ説明していきます。
弁護士費用は分割・後払いにできる?
借金を抱える中で、弁護士費用を支払うのはかんたんではありません。では、弁護士費用は分割払いや後払いはできるのでしょうか?
実は、弁護士事務所によっては分割払いや後払いを認めているところもあります。分割払いの場合、最大で6ヶ月程度まで分割を認めてくれるケースがあります。
実際に何回の分割になるかは法律事務所によって異なるので、聞いてみると良いでしょう。
分割払いの場合は一点だけ注意があります。
分割払いの場合、費用が支払い終わるまで申立てを行わない事務所もあります。
支払いの間は、申立ての準備を行う期間となります。通常でも2ヶ月ほどは準備期間となりますのでそれほど気にする必要はないかもしれませんが、強制執行が差し迫っている場合などは、緊急に対処する必要がありますので、できる限り余裕をもって弁護士事務所に相談しましょう。
また、分割払いだけでなく後払いを認めてくれる事務所もあります。この場合は、着手金も含めて後払いという形になることが多いです。
手続きも進めてくれるので、支払いができない場合は後払いの事務所を探してみると良いでしょう。
このように、分割払いや後払いを認めてくれる弁護士事務所もあります。今すぐ費用を捻出できない場合は、こういった事務所をインターネットなどで探してみると良いでしょう。
コストの低い弁護士事務所を探すポイントは?
では、他に弁護士費用のコストを抑える方法はないのでしょうか。
実は、弁護士事務所によっては相談や着手金無料の事務所もあります。
ホームページなどで「相談無料」「着手金ゼロ」と書かれている事務所を探せば大丈夫です。
着手金ゼロの弁護士事務所は、全体の報酬も低い傾向があるため、コストを低く抑えられるでしょう。
それでも、弁護士費用は個人再生で30-50万円程度かかってしまいます。これは、個人再生をもう一度行う場合も同じです。高額な費用がかかりますので、少しでも費用を削減して、賢く手続きを進めていきましょう。
個人再生しても税金は減額されない理由
個人再生を行う場合一点注意があります。
実は、個人再生をしても滞納してる税金は減額されません。
というのも、税金は一般優先債権にあたるためです。
他の債務よりも先に返済すべきことが法律上定められています。
仮に滞納をしてしまうと、強制執行により給料を差し押さえられてしまう可能性がありますので注意してください。
滞納による差押さえの場合、個人再生手続きを始めたとしてもストップをかけることができません。
それだけでなく、裁判所から「返済できない可能性が高い」と判断され、再生計画自体を認めてもらえない可能性があります。
ですので、税金の滞納がある場合はそのまま放置しないようにしましょう。
支払うことができない場合は、課税庁に相談し、弁済方法を交渉しなければいけません。
個人再生の申立ての際の陳述書で「随時支払う」と記載し、個人再生を認めてもらうように裁判所にも働きかけをしましょう。
このように、個人再生でも税金は免除・減額の対象になりません。不安がある方は、この点も弁護士に相談する方が良いでしょう。
個人再生後、支払いが困難な場合にすべきことのまとめ
個人再生後、借金が支払えなくなった場合は、再生計画の変更やハードッシップ免責を利用することで延納や免責が認められます。
最終的に「もう一切支払えない」という場合は、自己破産の選択肢もあるので、専門家である弁護士に相談してみましょう。
何よりも放置が一番リスクのある行為です。
放っておくと再生計画の取消しだけではなく、財産を失う可能性もあります。支払いが厳しくなってきた場合は、先手を打って動くことを心がけましょう。