自己破産ができる条件|借金が免責されないケースがある?

自己破産ができる条件|借金が免責されないケースがある?

自己破産をしても借金が減らない?免責不許可事由とは?

自己破産とは、借金を返済できなくなったひとが裁判所に申立てて、借金の返済義務を免除(免責)、つまり借金を帳消ししてもらうことです。
裁判所が「返済できなくなった理由に妥当性がある」と認めなければ免責にはなりません。
免責されない理由を「免責不許可事由」といいます。

 

免責不許可事由ってなに?

では裁判所が免責を認めない免責不可理由には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
下記にいくつか例を示します。

 

  • 住所や年齢、年収、勤務先などを偽って借金をした場合
  • 債権者を害する目的で財産を隠したり、壊したりした場合
  • ギャンブルや浪費が原因の借金だった場合
  • 財産があるにも関わらず、隠したり他人に贈与したりした場合
  • 裁判所に嘘の説明をしたり、書類を改ざん、隠すなどの行為をおこなった場合
  • 過去7年以内に免責を受けていた場合

 

 

 

自己破産ができない借金の理由について

ギャンブルや浪費が原因の借金

具体例であげたように、ギャンブルや浪費が原因の借金だった場合も免責不許可事由に該当しますので、自己破産が難しくなります。
ここでいうギャンブルとはパチンコ、スロット、競馬、違法賭博など金銭や品物を賭けておこなう射幸性の強い賭け事をいいます。

 

免責はその浪費の程度や申立人の反省度合い、更正への意欲などを鑑みて、裁判官が総合的に判断するものです。
原因がギャンブルや浪費なら自己破産は無理だと一概に決めつけられるものでもありません。
あまりにも悪質な行為であったり、更正への意欲が感じられないと判断される場合は免責されないことがあるのです。
例えば以下のような場合が免責不可理由に相当すると考えられます。

 

  • ・違法賭博にのめり込み、住所や年齢、勤務先などを偽り違法な手口で借金を繰り返した
  • ・クレジットカードのショッピング枠の現金化など悪質な手段を用いて借金を積み重ねた

 

借金の一部でもギャンブルや浪費が原因だと自己破産不可?

いいえ、そのようなことはありません。
免責はあくまでも裁判官の総合的な判断によりますので、借金の一部がギャンブルや浪費によるものであっても、
必ずしも自己破産できないわけではありません。

 

ギャンブルが原因の借金は管財事件になる?

自己破産には「管財事件」と「同時廃止事件」の2種類の手続きがあります。

 

管財事件とは、不動産や自動車など財産がある場合に、裁判所が選んだ破産管財人によって財産の調査、換金と債権者への分配をおこない、
その手続きが終わった上で、免責の可否判断がおこなわれるものです。
同時廃止事件は財産がない場合で、破産管財人による手続きを省略して免責の可否判断がおこなわれるものです。

 

この基準とは別に借金の原因がギャンブルや浪費の場合、管財事件とされ破産管財人が調査に入ることがあります。
管財事件になると裁判の期間が長引き、予納金など費用負担も多くなります。
できれば避けたいことですが、これも裁判官の判断によりますのでケースバイケースといわざる負えません。

 

 

自己破産で免責されるための支払不能な状態とは?

自己破産で免責される条件に、債務者が「支払不能状態」であることというものがあります。
では、支払不能状態とはどのようなことをいうのでしょうか?
支払不能状態とは「申立人にはこの先借金を返せるだけの財産も能力も見込みもない」と裁判所が客観的に判断した状態です。
例えば下記のような状態が当てはまります。

 

  • 借金返済に当てるための財産がない、あっても換金できる可能性がない
  • 無職で収入がないかあっても不安定で小額、就職できる見込みがないなど返済にあてる金銭の調達が困難
  • 病気を患い働けないため、継続的に収入を得ることが不可能

 

無職になり一時的に無収入だが、働く能力があり今後就職して安定した収入を見込める場合や、
現金は所有していないが土地を所有しているといった場合は支払不能状態とはいいません。
ただし生活保護を受けている場合は、借入額が少なくても支払不能状態と判断されます。

 

 

自己破産ができる借金の金額の目安はいくらから?

自己破産を検討すべき借金の金額の目安について説明してください。
「支払不能状態」や「免責」の判断には、その元になる明確な基準が存在するわけではありません。
あくまでも申立人の収入、財産、借金の総額などを総合的に検討した結果、裁判所が客観的に判断するものです。

 

ただし、支払不能状態の目安については以下の事項を参考にするとよいでしょう。

  • 借金総額が年収の1.5倍以上
  • 3~3年半の分割払いにしても返済が不可能
  • 任意整理をして借入額が減額されても返済が不可能

 

 

非免責債権とは?滞納している税金は免責されない?

自己破産をするメリットは免責により借金の返済義務がなくなることですが、全ての債務についてきれいさっぱりというわけにはいきません。
一部の債権についは免責が適用されず返済義務が残ります。
この債権を「非免責債権」といいます。
非免責債権には以下のようなものが該当します。

 

  • 住民税、自動車税などの税金
  • 国民年金、国民健康保険などの社会保険料
  • 養育費
  • 未払いの給料

など

 

 

条件を満たしていても費用がなければ自己破産はできない?

自己破産で裁判所や弁護士事務所に払う費用はいくら?

自己破産したくてもいろいろと費用がかかるなら、それが払えるかどうか不安という方もいらっしゃると思います。
自己破産で裁判所や弁護士事務所に払う費用のだいたいの目安は下記のとおりです。

 

  • 弁護士費用:着手金(20~30万円程度)+成功報酬(0~20万円程度)
  • 予納金:2~50万円程度

 

着手金とは、弁護士に手続きを依頼したときに発生する初期費用です。これは自己破産の成立如何にかかわらず、返金されるものではありません。
成功報酬とは、希望とおりに自己破産した際に支払う報酬です。
予納金とは、裁判所に支払う費用で、官報掲載や切手印紙代なども含まれますが、多くは破産管財人の報酬に当てられます。

 

生活保護者は自己破産できる?

生活保護受給者は自己破産に必要な費用を用意することが難しいでしょう。
自己破産の条件を満たしていても費用が用意できなければ、借金苦から逃れることはできないのでしょうか?
そもそも生活保護受給者から借金の返済は望めませんので、むしろ自己破産は認められ易くなっています。
しかし、一般的には自己破産には初期費用が必要になってきますので、弁護士事務所などではなく免除制度のあるNPO法人などの相談するのが無難です。

 

自己破産の費用はどれくらい?気になる弁護士・裁判所申請費用

 

 

自己破産や自己破産後のデメリット・制限について

自己破産には免責という大きなメリットがありますが、その代わりにさまざまなデメリットも存在します。
ここでは自己破産の手続きを進めている間にかかる制限についてご説明します。

 

・職業・資格の制限
弁護士、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、保険外交員、警備員など特定の職業に就くことができません。

 

・転居・旅行の制限
住所の異動、長期の旅行をすることはできません。
どうしても必要な場合は、裁判所に許可を受けるか郵便物を破産管財人に転送する手続きが必要です。

 

これらの制限は自己破産手続きが終了すれば解除されます。

 

 

 

自己破産をすると家族や周りに影響はある?

自己破産をしても基本的に家族に請求がおよぶことはありません。
ただし保証人(連帯保証人)になっている場合は、家族であるか否かに関わらず請求を受けることになります。
また自己破産者は官報に掲載されますので、第三者に知られる可能性があります。
世間体ということからすれば、家族や周りへなんらかの影響がないとはいえません。

 

 

自己破産をすると銀行口座の預金は没収される?

自己破産によって手元に残せるは「99万円以下の現金等と預金20万円以内」と定められていますので、
その他のものは基本的に処分されると思ってください。
銀行口座に関して言えば借入れのある銀行の口座は凍結されます。
借入れのない銀行口座はそのまま利用できますが、預金残高の合計が20万円を超えると超えた分は財産とみなされ、破産管財人が債権者に分配します。

 

 

 

自己破産以外の債務整理の方法

自己破産が決してベストな方法とは限りません。
債務整理には他の方法もありますのでご紹介します。

 

・任意整理
裁判所などの公的機関をとおさず、債権者と和解交渉をおこない、返済負担を減らす方法。
複数の債務がある場合は、一部の債権のみを整理の対象とすることができる。
返済義務がなくなるわけではないので、継続した収入が必要。

 

・個人再生
裁判所に申立て、借金を「100万円もしくは借金総額の5分の1」にまで減らし、再生計画を立て原則3年かけて返済することを条件に、借金を免除する方法。
任意整理に比べて債務が大幅に減少する。
住宅や車のローンがある場合はそれらを手放さなくて済む場合がある。
返済義務がなくなるわけではないので、継続した収入が必要。

 

・過払い金請求
過去にカードローンやキャッシングなどでグレーゾン金利が適用された融資を受け、
20%超の利率で利息を返済していた場合に払いすぎている利息を取り返す方法。

 

 

 

自己破産の手続きの流れを知りたい

自己破産の手続きはどのようにおこなわれるのでしょうか?
地方裁判所によって若干異なりますが、おおまかな流れは下記のとおりです。

 

【同時廃止の場合】

 

1.債権者へ受任通知書発送
手続きを依頼された弁護士が債権者へ受任通知書を郵送
(これにより債権者は債務者への取立て・請求が出来なくなります)

 

2.裁判所へ自己破産申立て
弁護士が書類を作成し裁判所へ提出

 

3.破産の審問
裁判官から質問を受ける
(免責不許可事由に当たらないかの確認です)

 

4.破産手続開始決定

 

(5.免責の審問 実施されない場合がある)

 

6.免責許可の決定

 

 

【管財事件の場合】

 

1~4は同時廃止と同じ流れです

 

5.破産管財人選任・面接
破産管財人から質問を受ける
(債務内容、財産、免責に関する問題事項などの確認です)

 

6.破産管財人による財産の調査・管理・換金

 

7.債権者集会・債権確定・配当
破産管財人から債権者に説明実施

 

(8.免責の審問 実施されない場合がある)

 

9.免責許可の決定

 

自己破産の相談は債務整理に強い弁護士事務所が良い?

このように自己破産は借金を重ねるにいたった事情や債権の数、種類、財産の有無といった複数の要素を整理して、
ケースバイケースで対応しなければなりません。
もちろん個人で手続きを行い成功させるのは困難です。
また弁護士にもそれぞれ得意分野がありますから、どこの弁護士事務所に依頼しても同じというわけでもありません。
自己破産をはじめとする債務整理を得意とする信頼できる弁護士に依頼してこそ、スムーズに解決できるのです。
自己破産を検討しているのなら、債務整理のノウハウと実績をもつ経験豊かな弁護士事務所に相談しましょう。

 

 

免責される?自己破産の条件まとめ

・借金を返済できなくなった原因が免責不可事由に該当すると自己破産できない
・借金の原因がギャンブルや浪費であったとしても必ずしも免責不可事由に当たるとは限らない
・現在、支払不能状態であると裁判所が認める必要がある
・手続き中は生活にある程度制限がかかる
・手続きは債務整理のノウハウと実績をもつ弁護士事務所に依頼する