債務整理は個人でできる特定調停がおすすめ!手続き・信用情報・強制執行対策について

債務整理は個人でできる特定調停がおすすめ!手続き・信用情報・強制執行対策について

特定調停手続きの仕方は?あとの暮らしの変化は?

特定調停とは、個人で手続きを行うことが可能な債務整理で、民事調停の特例として平成14年2月に定められたものです。特定調停のメリットは、手続き費用が低額であることと、借金の引き直し計算により減額された元本をもとに分割して返済できるようになるため、債務の減額が可能となるものです。また、借金の理由は問われません。合意する債権者を自由に選択できるところもポイントで、合意まで裁判官と調停委員が、債権者との調整をしてくれます。信用情報に掲載され、一定期間の借入ができなくなるところは、他の債務整理と同様です。特定調停の詳しい手続きの仕方や、他の債務整理法との違いなどについて、詳しくみてゆきましょう。

 

特定調停は個人でできる!実際の手続きはどうずるの?

特定調停を個人で行うことの最大のメリットは、費用が安いことです。弁護士費用などは不要で、債権者1件につき、印紙代500円と切手代420円だけで済みます。しかし、個人が単独で行う場合には、債権者の同意が得られないケースもあることのほか、過払い金返還請求は、特定調停とは別に行う必要もあります。これらのデメリットをしっかりと考慮した上で、特定調停に臨んでください。

 

特定調停ではまず債権者を選ぼう

特定調停では、任意整理と同様に特定の借入先を選択して、債務整理を行うことができ、借入先は複数選べます。債権者を選定する際には、借入時期が古い借金と、消費者金融からの借金を優先すべきです。これらの場合では、貸金業法の改正による「過払い金」が発生している可能性が高く、利息制限法所定の利率に直して計算する引き直し計算による債務減額の効果が高いと見込まれるからです。また、キャッシングなどの無担保ローンは、特定調停が決裂して債務不履行となっても、差押リスクがない点がメリットです。優先的に特定調停を考えましょう。

 

特定調停での必要書類 どうやって作ればいいの?

東京簡易裁判所の場合、特定調停に必要な書類は次のとおりで、作成する書類は、裁判所の窓口やホームページからのダウンロードで入手できます。
・申立人が作成するもの
「特定調停申立書」
「財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料」
「権利関係者一覧表」
・法務局で取得するもの
「資格証明書」
なお、「特定調停申立書」と「財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料」は、個人事業者と法人では形式が異なります。個人事業者の場合、紛争の要点についての詳細な記載が必要となり、賃借対照表・損益計算書・資金繰り表の写しを添付しなければなりません。法人の場合は、申立人の事業内容や、損益・資金繰りなどの事業状況、権利関係者との交渉の経過を記載する必要があります。また、権利関係者一覧表に記載する貸金業者の住所などは、金融庁の貸金業者名簿で簡単に入手できます。申し立ての書類作成に関する疑問は、裁判所の民事調停担当の窓口で尋ねることができ、記入例や雛形なども用意されています。裁判所によっては、特定調停についての合同説明会を開催しているので、これを利用するとよいでしょう。申立にあたっては、これ以上返済が困難であることを示す資料を準備します。住宅や自動車、預貯金など資産一覧や、生活状況を示す給与明細、家計簿の写しのほか、借入金の契約書の写し、返済した借入金の領収書などです。

 

いよいよ簡易裁判所へ!特定調停の申立手順

特定調停は、民事調停として取り扱われます。調停手続は、一般市民から選ばれた調停委員と裁判官による調停委員会が、当事者双方の話し合いをまとめ、和解を促すよう働きかけるものです。申立ては、原則として、相手方の住所を管轄する簡易裁判所へ、必要書類を提出して行います。その後、裁判所から事件受付票の交付と、調査期日の指定を受けます。必要書類がそろっていれば、申立日に受付けてもらえますが、必要書類に不足がある場合は、再度提出し直すことになります。

 

特定調停の調停期日は最低2回!準備万端で臨もう

特定調停の申立から約1ヵ月後に、調停委員と本人による調査期日が設定され、申立人に第1回調停期日呼出状が郵送されます。調停期日には、調停委員から申立書の内容や提出書類の内容などについて質問され、これらの事情を考慮しながら、返済計画案を作成してゆきます。このときに、調停委員に申立人の状況を理解してもらえるように資料をそろえておくことが、調停においてこちらの希望を反映してもらうためのコツです。第1回調停期日には、債権者は出廷しません。

 

めでたく調停成立!返済がスタート

調査期日の約1ヵ月後に、申立人と調停委員、債権者による第2回調停期日が設定され、調査期日で作成した返済計画案をもとに、債権者との間で返済計画が調整されます。調停委員が協議を行い、協議が整えば調停成立となります。債権者が出廷せず、17条決定を作成する場合もあります。調停委員が期日に電話で債権者と交渉したうえで、その内容を申立人と調停委員会が確認し、調停主任裁判官が17条決定を作成します。その後、裁判所書記官が、最終的な返済計画が記載された調停調書が作成します。この調停調書は、確定した判決と同様の効力を持ち、これに基づいて強制執行を行うことができるものです。申立人は、調停調書に記載された返済期日から返済義務が発生します。特定調停は、およそ月に1回の割合で期日が開催されるため、2回目の期日で合意すれば、申立から約2ヵ月で借金返済が開始され、毎月の支払いが始まります。

 

 

個人で行う特定調停で必要な費用はとても少額

個人が東京簡易裁判所で特定調停を申し立てるケースでは、申立手数料として債権者1件につき500円を収入印紙で支払います。手続き費用は、裁判所からの書類送付などで必要となる切手代として、債権者1件につき420円分が必要となります。手続きが長期化すれば切手代の追加提出が求められます。しかし、基本的に特定調停においては、多額の費用は不要です。

 

 

気になる個人信用情報 特定調停ではどう扱われるの

特定調停では、債務者と債権者の話し合いで和解契約を成立させる債務整理手続きです。自己破産のように、借金を帳消しにしたわけではありません。しかし、借金の返済が滞ったという事実は、信用情報機関に登録されます。信用情報に記録されるのは、氏名・生年月日・性別・住所・電話番号・勤務先など個人情報のほか、借入金額・借入日など借入契約の内容、返済状況などです。特定調停は事故情報として登録されます。いわゆるブラックリストに載るというものです。

 

特定調停もブラックリストに載る!困ることは何?

特定調停を行ったあと、信用情報機関に事故情報が登録されている期間は、新たな借入ができなくなります。
生活する上で困ることは次のようなものです。
・住宅ローンが組めなくなる
・車のローンが組めなくなる
・携帯電話の割賦購入ができなくなる
・新規のクレジットカードが作れなくなる
・キャッシングやカードローンでの借入ができなくなる
特定調停のあと5年間は、以上のような新たな借金や、クレジット・分割での物品などの購入ができなくなるのです。

 

個人情報開示請求をしてわかることはこんなにたくさん!

個人が行う信用情報機関への個人情報開示請求(本人開示手続)についてみてゆきましょう。個人の信用情報は、信用情報機関に集約されています。開示請求によってわかることは、借入先金融機関名と債務額、契約内容のほか、滞納の有無といったような返済状況、債務整理などの事故情報です。債務整理を行う場合には、現在の借入状況を調べるために、信用情報を照会する必要があります。信用情報の開示請求は誰でも可能です。信用情報機関は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)・株式会社日本信用情報機構(JICC)・株式会社シーアイシー(CIC)の3つです。銀行系金融機関からの借金はKSC、サラ金やローン会社からの借金はJICCかCICに開示請求をします。手続きの方法は、所定事項を記入した申込書に身分証明書を添付して、郵送または窓口で請求します(KSCは郵送のみ)。手数料は郵送の場合、いずれの機関でも1,000円程度で、定額小為替かクレジットカードにて支払います。また、インターネットでの開示も行えます。窓口での手数料は500円です(いずれも税込み)。

 

 

任意整理、特定調停、個人再生はどこがどう違うの?

任意整理と特定調停、個人再生はいずれも債務整理手続です。この3つの共通点は、持ち家を残せるというメリットがあることです。また、いずれも債務減額が可能で、これにより借金問題を解決できます。信用情報機関に事故情報として登録される点も同じです。任意整理と特定調停、個人再生では、それぞれ異なるポイントがあります。任意整理は裁判を通さず債務者が債権者と交渉して行いますが、すべての債権者との合意が必要になるため、任意整理を個人で行うことは困難でしょう。弁護士か司法書士に依頼するのが一般的です。個人再生は、民事再生法による再生手続きです。最低弁済額での返済が認められた場合、大幅な債務圧縮が期待できます。債権者や再生委員・裁判所との交渉や書類作成などに、専門的な法律知識が必要となるため、弁護士に依頼するのが一般的です。特定調停は、簡易裁判所での調停による債務整理法です。特定調停は、個人で行うことが比較的容易な債務整理方法で、弁護士費用などをカットできるため、費用の負担はとても少額ですむのです。債権者が貸金業者の場合は、利息制限法で計算し直すことで、返済残高が減額されたり、過払い金の請求が可能となったりする場合があります。

 

債務整理選びに迷ったら、やはりプロに相談しよう

任意整理と特定調停、個人再生のどれを選ぶべきか決めるときのポイントは、どのように債務整理を行いたいのかです。返済額を減らしたいのであれば、個人再生が最も多く減額できます。自宅を残したいのなら、任意整理、特定調停、個人再生のいずれでも可能ですが、ローン残高が多い場合は、個人再生のメリットが一番大きくなります。特定調停を選択する最大のメリットは、費用の安さです。成立した合意内容で作成された調停調書は、確定判決と同じ効力があり、それ以上の取立はなくなります。デメリットは、債権者を調停に参加させる強制力がないため、合意に至ることができないこともあるということと、調停成立後に返済が滞ると、給与等の差し押さえなどを受ける場合があるということです。また、減額後の借金を3年程度で返済できる方や、継続して収入を得る見込みがある方でなければ、特定調停を利用できません。どの債務整理を選べばよいかは、やはり、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのが確実です。最近では債務整理の相談を無料で受付けているところも多くあります。悩む前に一度相談してみることをおすすめします。

 

 

強制執行を止めたい!個人の手続きで注意すべきこと

特定調停の申立を受理した裁判所は、債権者に対して特定調停開始通知を送付します。債権者が通知を受け取った後に取立てを行えば、行政処分や刑罰の対象となるため、債務者への取立ては停止します。しかし、強制執行の停止には、別途、裁判所に強制執行停止申立書を提出しなければなりません。特定調停を申立てても、債権者との合意に達しない場合には、債権者は改めて差し押さえを行うことが可能となるため、強制執行が再開されます。このようなリスクに備えるために、調停が不調に終わった場合には、個人再生や自己破産など、他の債務整理手続きへ早急に変更しなければなりません。特定調停以外の債務整理では、弁護士などの専門家の力が必要となるため、前もって相談しておくことをおすすめします。

 

 

個人でできる債務整理は特定調停!個人信用情報の扱いも知っておこう

以上、特定調停を個人で行う方法や、個人信用情報の取り扱いについての詳細を述べました。自分にあった債務整理法を選ぶためには、一度専門家に相談してみることをおすすめします。特定調停のメリットとデメリットをよく理解した上で、費用や手続きの簡便さ、借金問題解決までに掛かる期間の短さといった特徴を最大限に活かし、1日でも早く生活の再建を果たしていただければ幸いです。