消滅時効後に支払督促が届いたら?対処法を徹底解説!

消滅時効後に支払督促が届いたら?対処法を徹底解説!

時効が成立したはずなのに支払督促が来たらどうすればいい?

「借金は支払わなくても放置していれば時効がきて払わなくて良くなる」こんな噂を耳にしたことはありませんか?確かに借金に時効はありますし、成立すれば返済義務もなくなります。でもこの話ちょっとした裏話があるんですよ。噂を真に受けて支払督促をただ無視しているだけでは、時効が法的に認められなくなってしまう可能性もあるので注意しなければなりません。特に期間的には時効が成立したはずなのに、ある日突然裁判所から「支払督促」が届いたら、しなければならないこと・してはならないことを踏まえて、適切に対処する必要があります。この記事では時効成立後の支払督促への対処法や、時効援用のやり方について詳しく解説していますのでぜひ参考にしてくださいね。

 

 

支払督促を無視するのはNG!時効を中断させない対処法

貸金業者が直接送ってくる督促文書と違って、裁判所から送られてくる支払督促には法的効力があります。そのためそのまま放置してしまうと判決が確定して時効は成立しませんし、返済されない状態が続けば貸金業者は強制執行の申立ができるようになり、財産や資産を差し押さえられてしまうリスクもあります。特に債権者に勤務先を知られている場合には給料の一部を差し押さえられてしまうことになりますので、早急に対応しましょう。給料が差押えられる場合でも生活をしていく上で必要最低限の給料は「差押禁止債権」といって、全額差し押さえることは禁止されています。しかし差押えの際には裁判所から勤務先に差押命令が書面で届くので、借金問題でモメていることは必ずバレてしまいます。勤務先によってはそれ以降働きづらくなってしまったり、リストラの対象になってしまったりする可能性もあります。将来的にも生活そのものに影響してしまいかねませんので、裁判所から支払督促が届いた場合は放置せず判決を確定させないために行動を開始しましょう。

 

時効中断されるとどうなるの?延長年数は5年?10年?

時効が中断すると具体的にどうなるのかを少し解説しておきましょう。時効が中断するということは、時効のカウントダウンのスタート地点に戻るということです。しかも裁判所からの支払督促を放置して判決が確定したケースに関しては、時効がリセットされて5年延びるだけではなく、10年延長されることになります。たとえそれが最後の返済から5年以上経過していて、既に消滅時効が成立していたとしても、時効の成立はなかったことになってしまい、借金の返済義務が発生しますし債権者が請求することも法律上認められるようになります。

 

 

支払督促が来ても焦らないで!時効援用の手続き解説

もし時効が成立していて裁判所から支払督促が届いたのであれば、2週間以内に異議申立てをしなければなりません。異議申立を行えば支払督促だけで時効の中断をしたり、問答無用で強制執行に移行したりすることもありません。異議申立てをするためには「督促異議申立」という書類を作成する必要があります。裁判所によっては支払督促が送付されてきた時に入っていた封筒に同封されていることがありますが、もし入っていない場合は裁判所の窓口で受け取ることができます。また司法書士や弁護士に依頼すれば作成してもらうことができます。督促異議申立書を記載する際は、まず債権者名・債務者名・住所・連絡先、支払督促に記載されている事件番号などを明記します。そしてまだ時効が成立していない場合は、債権者との和解を進めるために分割払いについての希望を記入します。時効がすでに成立している可能性がある場合は「消滅時効を援用します」と記載して、裁判所に郵送するか持参して提出します。裁判所で異議申立書が受理されれば、自動的に裁判へと移行して時効援用の手続きが始まります。

 

 

借金の時効はどのタイミングから計算するの?起算点と起算日とは

借金の時効は5年もしくは10年です。以前の民法では消費者金融会社や信販会社が債権者の場合は5年、知人や友人などの個人が債権者の場合は10年という認識が一般的でしたが、民法改正により実質5年が消滅時効となりました。ではその年数はいつから計算すればよいのでしょうか。改正民法166条1項には、時効により債権が消滅するケースとして「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」と明記されています。貸金業者から借金をする時は、一括払いではなく分割払いになっていることが多いと思いますが、支払の約定日までに返済がない場合貸金業者は契約に基づいて一括返済を請求することができるようになります。これは契約約款などに「期限の利益の喪失」という言葉で記載されています。債権者が期限の利益の喪失により、一括返済を請求できる権利を行使することができるようになってから、時効のカウントが始まります。契約約款に期限の利益の喪失のタイミングとして「支払日までに返済がなかった場合」というような文言があれば、約定支払日の翌日が消滅時効の起算日となります。記事によっては「最終返済日から」と記載しているところもありますが、最後に返済した日からではなく契約上決められていた「支払期限の翌日から」となりますので間違えないよう注意してください。

 

 

支払督促が届いた時の対処法|既判力はないので裁判が必要

裁判所から送られてくる支払督促は、債務者からの異議申立がなければそのまま判決が確定して返済義務が発生しますし、強制執行の手続きを始められるようになります。しかしここでポイントになるのは「異議申立がなければ」という点です。支払督促には確かに強力な効力がありますが、決してそれは覆すことができないものではありません。このことを弁護士などの専門家は「既判力がない」という難しい表現をします。既判力というのは「覆すことができない効力」のことを言います。そもそも支払督促は債権者の申し出により発送されます。その時点では裁判所は片方の言い分しか聞けていないので、両方の言い分を平等に聞いて判決を下すことはできないのです。そのため債務者側の意見を聞くためにも「支払督促の申立がありましたよ」というお知らせをします。そこで債務者側から「事実と違う!時効はもう完成している!」という言い分の申し出があれば、支払督促は効力を失って「それならこれから裁判で審議しましょう」という流れになります。債務者が異議を申し立てさえすれば、支払督促の効力を覆すことができるので、支払督促には既判力がないと言われているのです。ですから支払督促が届いたからといって、絶望する必要は全くありません。諦めずに正当な手続きを行えばいいだけなのです。

 

 

時効成立後に支払督促が届いたら時効援用の手続きを!

時効が成立したはずなのにある日突然裁判所から支払督促が送られてきたら、なるべく早く対処する必要があります。まずは時効が成立しているのかどうかを判断しましょう。時効の起算日は「最後の支払期限の翌日」から5年です。その期間に借金したことを認める行動をしたり、少額であろうと返済をしたりしていれば起算点がリセットされるため時効は成立しません。時効が成立していない場合には、債権者と話し合いで解決しなければなりません。時効が成立している場合は時効援用のために、督促異議申立書を作成して2週間以内に裁判所に提出しましょう。いずれの場合にしても、そのまま放置してしまうと強制執行で財産を差し押さえられてしまう最悪の結果に繋がりますので、放置だけはしないようにしてくださいね。自分の手に負えないと感じる場合は弁護士や司法書士などの無料カウンセリングなどを活用して、気軽に相談してみましょう。

 

 

支払督促が来てから強制執行に至るまでの流れが知りたい

債権者が簡易裁判所に申立てをして支払督促が発送されてから、強制執行に至るまでの流れを簡単に解説しておきましょう。支払督促が発送されると債権者に支払督促正本の送達結果が知らされます。それ以降2週間経過しても債務者からの異議申立てがなければ、債権者は2週間目の翌日から30日以内に「仮執行宣言の申立」を行います。そうすると裁判所は支払督促に対して仮執行宣言付の支払督促正本を、もう一度債務者宛に送ります。債務者がそれを受け取ってから2週間以内に異議申立てをしなければ「仮執行宣言付支払督促」が確定します。この時点で消滅時効は無効となり、法的に返済義務が発生します。債務者がそのまま債権者に対して支払いをしなければ債権者は強制執行の申立を行い、強制執行の申立が認められれば債権者が指定した財産・資産を差し押さえることができます。

 

 

時効援用のデメリットには何がある?

消滅時効援用は決してノーリスクな手続きではありません。まず債権者である消費者金融会社や信販会社、債権回収会社はお金を取扱っているプロです。返済日までに支払いがなかったからといって、何もせず返済してくれるのをただ待ってくれるなんてことはありません。徹底して債権を回収するためのマニュアルに基づいて、可能な限りの督促を行ってきます。電話連絡はもちろんハガキや文書での督促をしてきますし、それでも連絡がつかなければ勤務先への連絡や自宅への訪問もあるでしょう。引越しをしても住民票の取得や金融会社の調査により、新居を突き止められてしまいます。長年連絡もつかず返済もされないとなると、債権者は裁判所に訴訟を起こして債権を回収しようとします。実際に借金に身に覚えがないのであれば、裁判でそれを主張すればいいのですが借金をしたまま返済していないという場合は、連絡も一切せず督促も長年無視してきているわけですから悪質と判断される可能性もあります。そうなると最悪元金だけではなく5年に渡る遅延利息についても、交渉の余地なく請求されてしまう可能性もあるのです。当然長期延滞になりますので、信用情報にも傷がつき新規での借入やクレジットカードの作成はできません。借金の消滅時効については中断される可能性も非常に高く、時効を成立させるのは簡単なことではありません。何らかの事情で返済が厳しいのであれば、債務整理を検討する方が精神的にも楽だと思います。借金が手に負えなくなったらなるべく早めに法律事務所に相談してみましょう。