奨学金も債務整理で減額できる?~滞納のリスクと保証人への影響~

奨学金も債務整理で減額できる?~滞納のリスクと保証人への影響~

学生時代に奨学金を借りる方も多いでしょう。でも実は奨学金は、れっきとした借金なんです。返済に困っている方もいらっしゃると思います。返済ができない場合は、債務整理などを検討してみると良いかもしれません。減額や免除が認められる可能性があります。もっとも、債務整理をすると保証人や連帯保証人に迷惑をかけることにもなります。また、これ以外にも「債務整理をしていても奨学金を借りることができるのか」など疑問に感じている方も多いでしょう。そこで今回は、「奨学金と債務整理」関する疑問についてお答えしたいと思います。

 

 

もう支払えない…債務整理で奨学金免除できる?

実は奨学金は、借金であることをご存知だったでしょうか?教育ローンのため、借金という言葉が不釣り合いに感じられるかもしれません。しかし、実際上は借金であることに変わりなく、法律上は債務となります。では、奨学金も多の借金と同様に免除されることはあるのでしょうか。結論からいって、債務整理を行えば、免除もありえます。債務整理を検討する場合、最初の手段としてあげられるのが、任意整理です。もっとも、奨学金の場合はもともと最低ラインの利息しかとっていない制度であるため、任意整理の際の交渉に応じないことを通常としているようです。仮に、利息を下げてもらえたとしても元々の利率が低いため、大幅な減額は望めないでしょう。自己破産の場合、あなたが債務者となっている全ての債務につき返済義務が免除されることになります。そのため、奨学金も含め免除されることになります。もっとも、債務整理の場合は、借金が免除されるというメリットだけではなく、ブラックリストに載ってしまうことや財産を失うなどのデメリットもあります。また、自己破産の場合は、自分で免除してもらう借金や業者を選ぶことはできません。ですので、デメリットも考慮した上で債務整理という選択肢を選ぶ必要があります。このように、奨学金も借金の1つです。債務整理をすることにより免除されることもありますが、債務整理にはデメリットもあるので注意しましょう。

 

日本育英会の奨学金。免除や債務整理はできる?

日本育英会について簡単にご説明します。まず、日本育英会は、現在の日本学生支援機構になります。日本学生支援機構(JASSO)とは、経済的理由で修学が困難な学生に学費などの貸与を行い、学生が安心して学業を続けられるようにするための独立行政法人です。具体的には、奨学金支援事業や学生生活支援事業、奨学金貸与事業などを行っています。日本学生支援機構から奨学金を借りている場合、一定の場合のみ免除が認められています。具体的に言うと、①死亡、精神又は身体上の障害により変換できない場合、②大学院において第1種奨学金の貸与を受け、特に優れた成績を収めた場合、③大学院において第1種奨学金の貸与を受け、所定の要件を満たし、教育又は研究職についた場合、になります。このほかにも、経済的理由から変換困難な場合は、猶予期間をもらえる場合もあります。もっとも、日本学生支援機構から得られる免除・猶予はかなり限定的であり、認めてもらえるケースは少ないです。このような場合、債務整理を利用すると免除が可能になる場合があります。債務整理の種類には、任意整理、個人再生、自己破産などがあります。このうち自己破産を選択した場合には、免除が可能となります。このように、日本学生支援機構の奨学金でも債務整理をすると減額や免除が可能なんです。もっとも、最近では、奨学金を返済しない学生が多く、日本学生支援機構の取り立ても厳しくなっています。免除申請をしても、なかなか認めてもらえないこともあるでしょう。

 

奨学金の債務整理:機関保証のケースはどうなる?

奨学金を借りる際には、保証人が必要になります。ご両親が保証人になっている方もいらっしゃると思いますが、最近では家賃などと同様に機関保証をする方も増えています。
では、機関保証とはどんな保証なのでしょうか。機関保証とは、ご両親などの親族の保証人を用意できない場合に、保証機関に保証人となってもらうことを指します。保証機関は公益財団法人日本国際教育支援協会となります。途中で人的保証から機関保証に切り替えることもあるようです。では、機関保証の場合でも奨学金の返済は債務整理で免除されるのでしょうか。ズバリ、機関保証の場合も奨学金の返済は免除されます。具体的に言うと、自己破産が認められた場合、奨学金は免除となります。例えば、あなた自身が奨学金を滞納します。数ヶ月すると、保証機関による代位弁済(代わりの返済)が日本学生支援機構に行われます。その後、保証機関は、あなたに年10%の遅延損害金を加算した上であなたに債務の履行を請求してきます。この段階で、あなたが支払えない場合、自己破産の申請をすることで、支払い義務がなくなる可能性があるのです。もちろん、裁判所に認めてもらう必要があります。機関保証の場合は、保証人に迷惑をかけることはありません。このように、機関保証であっても、自己破産による免除をうけることはできます。もっとも、自己破産をすると、ブラックリスト入りしクレジットカード作成ができなくなります。また、金融機関でローンを組むことも数年間できなくなります。慎重に判断しましょう。

 

 

奨学金の債務整理:人的保証のケース。保証人に迷惑?

では、滞納や自己破産をするとどうなるのでしょうか。まず、連帯保証人と保証人に迷惑をかけることになってしまいます。滞納の場合、1度や2度で保証人に請求がいくことはありませんが、再三の警告にもかかわらず返済しない場合、連帯保証人や保証人に請求がなされることがあります。また、自己破産をすると、保証人や連帯保証人に請求がいきます。自己破産で免除されるのは、債務者本人だけであり、保証人や連帯保証人の債務は別個であると考えるためです。ですので、滞納や自己破産をすると、連帯保証人や保証人に迷惑をかけることになってしまいます。また、連帯保証人は原則父母のため、親に知られずに破産することはできません。数ヶ月の滞納や自己破産があると、保証人である父母に請求がいくためです。どうしても、知られたくない場合には、自己破産ではなく、任意整理をするパターンもあります。任意整理では、自分で整理する債務を選べるためです。このように、滞納や自己破産をすると、連帯保証人である親族や保証人に迷惑をかけてしまうことになります。これを理解した上で、自己破産の選択を検討するようにしましょう。

 

 

親が債務整理。奨学金の審査は大丈夫?

では、親が債務整理をしている場合、子どもにも影響があるのでしょうか。具体的にいうと、奨学金を組めなくなってしまうのでしょうか。まず、債務整理の影響ですが、これについては、原則として任意整理や自己破産などの申請を行った本人のみが直接影響を受けます。ですので、子どもや家族には直接的な影響はありません。例えば、親が債務整理をしていたとしても、子どもは関係なくクレジットカードやローンを組むことができます。これは奨学金でも同じです。ブラックリストに載るのも、債務整理の申請者本人のみです。もっとも、派生的な影響は少なからずあるでしょう。例えば、債務整理をしている親が連帯保証人になると奨学金の審査に通らない場合があります。これは、債務生整理をしていると、ブラックリストにのっているため、連帯保証人として不適格という判断されてしまうためです。ですので、奨学金の連帯保証人は債務整理をしていない方を選ぶようにしましょう。父親が債務整理をしている場合は、母親を選ぶ。あるいは、祖父母や親戚に連帯保証人になってもらうことをお願いしましょう。家族に頼めないという方は、機関保証でクリアできるはずです。このように、親が債務整理をしている場合でも子どもに直接的影響はありません。連帯保証人について問題があるかもしれませんが、債務整理をしている親以外を選べば何の問題もありませんので安心して下さい。

 

奨学金の連帯保証人。債務整理している人は絶対になれない?

では、債務整理をしていると連帯保証人には絶対なれないのでしょうか。結論からいいますと、絶対ではありませんが債務整理経験者は連帯保証人になれないことがあります。これは奨学金における連帯保証人の役割と関係してきます。連帯保証人は、奨学金をもらっている本人と連帯して債務を履行することになります。つまり、あなたが奨学金を返済できない場合は、債権者から連帯保証人に請求がいくことになるということです。この連帯保証人が債務整理をしている人物である場合、債務を返済してくれる可能性が客観的にみて低くなってしまうため、審査で拒否されてしまうことが多いんです。また、連帯保証人は保証人と違って責任が重いということも背景にあります。というのも、連帯保証人は、「先に主債務者本人に請求しろ」といえる催告の抗弁や、「主債務者に資産があるから主債務者に強制執行しろ」といえる検索の抗弁を有していません。そのため、法的には主債務者と連帯保証人は同一レベルで責任を負うことになります。このような理由から、債務整理をしている方は、連帯保証人としては不適格と判断されてしまうのです。もっとも、保証人であれば、話は別です。保証人は、上記の抗弁を有しているため、連帯保証人よりも責任の度合いが低いといえます。そのため、奨学金については、債務整理者でも保証人になれるようです。以上から、債務整理をしている方が連帯保証人になるのは厳しいといえるでしょう。もっとも奨学金に関して言えば、保証人になることは可能なのでお願いしてみても良いかもしれません。

 

 

奨学金の債務整理。自分ですべき?弁護士に相談すべき?

では、奨学金の債務整理は弁護士にお願いした方が良いのでしょうか。まず、債務整理を検討する場合自分で調べて自分で直接申請手続きをすることも可能です。インターネットなどで様々な情報を検索できるので、「自分でなんとかなりそう」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、先にご説明した通り債務整理には種類があり、どれが自分に合ったものであるかを素人が判断するのは困難です。そのため、一度専門家である弁護士に相談することをおすすめします。債務整理は、弁護士に相談することも可能です。弁護士にお願いすると、任意整理、自己破産、個人再生など、自分に合った最適な債務整理の方法を提案してくれます。特に、奨学金だけでなく他に消費者金融から借り入れ、借金問題に苦慮している場合は、全て一括で解決している弁護士にお願いする方が良いでしょう。最近では、相談無料の弁護士事務所もあるので、無料相談を行った後に、弁護士に依頼するかどうかを決めるのも賢い判断だと思います。このように、奨学金の債務整理であっても、弁護士にお願いすることをおすすめします。今後の人生にも影響してくる重要な問題ですので、専門家を交えて適切な判断を下すことをおすすめします。

 

債務整理の基本を知ろう!「任意整理」と「個人再生」って?

では、任意整理とは一体どんな債務整理なのでしょうか。まず、任意整理とは、当事者の合意により借金減額を図る債務整理の方法の1つであり、裁判所が介入しないのが特徴です。業者と話し合い、借金の利息を法定利率に引き直すことで全体の借金の額を下げることができます。もっとも、債務が免除されるわけでもなく、元本も減額はできません。そのため、大きな借金を抱えている場合はあまり向いていません。数十万?100万円程度、あるいは債権者が少ない場合などに利用すべき債務整理の方法です。減額幅を大幅に増やしたい方には、個人再生が向いています。個人再生とは、再生計画を裁判所に提出し、それが認可された場合に借金減額を図る債務整理の方法です。総借金額が5000万円以下までの場合なら、可能です。任意整理と違う点は、裁判所の認可が必要であること、そして元本も減額できることです。最大で1/5まで減額することができるので、借金額が多い場合は、こちらの方が向いています。もっとも、どちらも債務整理であることにはかわりなく、信用情報機関のブラックリストに載ってしまいます。リスクもあるので、しっかりと検討しましょう。このように、債務整理の方法は個人の借金額やライフスタイルによってどれが最適なのかが変わります。どの方法を選ぶかだけでも、法律事務所で聞いてみたほうが良いでしょう。

 

 

奨学金を返済しない場合のリスクまとめ

最後に、奨学金を毎月返済できない場合に発生するリスクについてまとめておきます。まず、奨学金の返済が遅れると、延滞金がつくことになります。つまり、支払いがさらに長引き、全体の返済額も上がってしまいます。また、何度も返済を怠っている場合は、期限の利益を失い、一括で支払うことを請求されてしまいます。支払いができない場合は、銀行口座や資産などの差押えが始まります。この段階では、自分では身動きが取れない状態に追い込まれます。さらに、連帯保証人へも請求がいくため、連帯保証人になってくれたご両親などにも迷惑をかけることになります。連帯保証人に対しても基本的には一括請求となるので、多額な借金を支払わなければいけません。これが支払えない場合、連帯保証人も債務整理を検討することになってしまいます。これ以外にも、債務整理をしなくても返済を無視しているとブラックリストにいつのまにか載ってしまいます。大学を卒業して就職しても自分でカードを作ったり、ローンを組んだりは難しくなってしまうでしょう。このように、奨学金は「借金」であり、返済しないとさまざまなリスクを背負うことになります。自分で何もせず、事が進行する前に、なんらかの対策をとるようにしましょう。

 

 

奨学金の返済。できない場合は、債務整理の検討を

奨学金は「借金」であるということは、しっかりと理解できたでしょうか?奨学金を返済できない場合、放置していると大変なことになります。差押えが始まり、連帯保証人にも迷惑をかけることになります。免除や減額をするためには、法的な手続きが必要です。任意整理や個人再生、自己破産の検討が必要になるかもしれません。差押えなどの強制手段が取られる前に、弁護士などの専門家に相談し、どうしたらいいのかを早めに決断することが重要です。