債務名義とは?債務名義の持つ意味や効果を分かりやすく解説!

債務名義とは?債務名義の持つ意味や効果を分かりやすく解説!

まずはここから!債務名義とは?

裁判所のHPでは、債務名義(さいむめいぎ)について以下のように説明しています。

強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者を表示した公の文書のこと。

引用:債務名義とは何ですか。


要するに、債務者の金銭および不動産などの資産を差押さえるために必要なものです。
債権者が保有する債権であっても、基本的には強制的に回収する権限はありません。

 

抵当権がある場合などは多少異なる部分もありますが、法的な手続きに基づいて正規に債務者の財産を強制的に回収する場合は必要不可欠なものだと覚えておきましょう。
それでは、この債務名義に関してさらに理解を深めるべく解説を行っていきます。

 

 

債務名義の種類は多い!正しく理解して適切な判断が必要

一口に債務名義といっても、その実態は多くの種類からなっています。
・確定判決
・裁判所の和解調書
・調停調書
・認諾調書
・公正証書(執行証書)
・訴え提起前の和解
・仮執行宣言付支払督促
・刑事和解
一般的に「債務名義をとる」というと確定判決を指す場合が多いですが、裁判を行うかどうかなど条件を加味した判断が必要です。それでは、代表的な4つの選択肢について解説していきます。

 

確定した判決だから「確定判決」

裁判所で訴訟を行う場合、不服または異議申立てによって争点が生まれ争うわけですが、そういった申立てまたは上訴ができなくなった状態を確定判決といいます。要は、それ以上結果が変わり様がない状態になったもので、文字通り結果が確定した状態で、具体的には「100万円の支払いを命じる」「建物の明け渡しを命じる」といった裁判所からの命令です。これを取得するためには訴訟が必要です。

 

話し合いで解決できた場合は「和解調書」

和解調書とは、文字通り和解によって問題が解決したことを証明する方法です。裁判上の和解には2種類、起訴前の和解と起訴上の和解があり、前者は特にあらかじめ相手方と合意がとれていて簡易裁判所における手続きが即決で終了することから「即決和解」とも呼びます。即決和解の場合は実質的に訴訟が必要ありませんが、それ以外の状況では通常の訴訟を経て和解となります。よって、取得するためには訴訟、または申立てが必要です。いずれの和解調書も効力は確定判決と同等であり、民事上の和解よりもはるかに強力なものです。

 

手続き簡単で強制力も!「仮執行宣言付支払督促」

未回収債権を回収するために裁判所へ申立てることによって、債権者に変わって裁判所が債務者へ支払督促を行う方法です。支払督促自体は文字通り「借金を支払ってください」というものですが、ポイントは仮執行宣言付支払督促を取得できるという点です。この督促には執行文の付与が不要で、発行時点ですでに強力な強制力を持っています。これを取得するためには裁判所への申し立てが必要ですが、証拠が不要で一方的な言い分でのみ手続きが完了するなど簡潔さが特徴です。

 

金銭請求のみ可能な公正証書の1つ「執行証書」

公証人が公証人法およびその他の法令に基づいて作成した公正証書のうち、特に「金銭の一定額の支払い、または代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付目的とする請求」であるものが執行証書で、正確には執行認諾付公正証書といいます。また、債務者は直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されていますが、強制執行の対象となるものは金銭および有価証券に限られます。取得には公証人役場などを利用し、証書の中に「債務の履行を怠った場合は直ちに強制執行に服する」などの文言を加えるだけと非常に簡単です。

 

 

債務名義を取られると行われる可能性がある「差し押さえ」とは?

差し押さえ(差押)とは、返済が滞っている債務者が保有している資産および財産を強制的に回収する方法です。債権者は回収した金銭または動産などを使って債務を相殺します。差し押さえを行う実行するためには債務名義が必要で、具体的には確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、執行承諾文言公正証書や和解に変わる決定などの強制執行が可能な状況で必要です。対象となるものは主に給料、預貯金、動産や不動産などですが、差し押さえが可能な状況だからといってすべての財産が差し押さえられてしまうわけではありません。では、対象となるものとならないものについて詳しく見ていきましょう。

 

差し押さえの対象となるものは?

差し押さえの対象となるものは、すでに触れた通り以下のものです。
・給料、預貯金
個人の場合は給料および預貯金が対象となるのが一般的ですが、事業主や企業相手の場合は売掛金や貸与金債権が対象となるのが一般的です。
・動産
骨董品、貴金属、66万円までの現金、小切手や株券など換金価値があるものが対象です。
・不動産
基本的には自宅または自社ビルなどの土地家屋が対象となりますが、登記されている地上権を対象とすることも可能です。

 

差し押さえの対象にならないものは?

差し押さえ対象者が基本的な生活を送るうえで必要不可欠な衣類、家具などは基本的に差し押さえることができません。また、給料は差し押さえの対象ですが1/4まで、養育費回収など一部は1/2までという上限が設定されているほか、公的年金も差し押さえの対象外です。

 

 

債務名義取得は費用だけでなく時間や手間もかかる

債務名義を取得する手段としては、次のようなものがあります。
・通常訴訟
・少額訴訟
・支払督促
・和解
・民事調停
・即決和解
・公正証書の作成
たとえば、ここまでで「手続きが簡単だ」として触れた支払督促の場合、全体の流れは次のような形です。
①相手(債務者)の住所を管轄する簡易裁判所へ申立て
②支払督促の発布の通知が送達
③②から2週間以内に債務者から異議申し立てがない場合、仮執行宣言の申し立て
④仮執行宣言付支払督促の送達
⑤④から2週間以内に債務者から異議申し立てがない場合、仮執行宣言付支払督促の確定
期間としては約4週間で完了しますが、途中で異議申し立てがあった場合は通常訴訟へと移行し、それに応じた手続きが必要になります。掛かる費用に関してですが、以下の通りです。
・手数料
請求額に応じて算出、通常訴訟で必要になる費用の半額
・郵券切手代
債務者数×1,082円
・資格証明書
450円
・登記簿謄本
600円
・異議申し立てが行われた場合の費用
訴訟取下げ費用:郵券切手(裁判所による)
訴訟移行費用:郵券切手代6,000円、督促申立て時と同額の手数料
この他、状況に応じて必要な費用や手続きが異なりますが、お金も時間も手間もかかることをよく覚えておきましょう。

 

 

債務回収は債務名義を起点に考える

債務名義をとることによって、強制力のある債権回収が可能になります。資産があるにもかかわらず返済を怠っている債務者に対して、法的根拠のある差し押さえなどを行えるようになるので債権回収の可能性が格段に高くなります。ただし、差し押さえが可能になったからといって相手の財産を根こそぎ回収することはできません。何が回収対象で、何が対象外になるのか、具体的にどのくらい回収できそうなのかといったことを弁護士などの専門家とよく相談し、明確なベネフィットを確認してから実行しましょう。