個人再生の別除権協定とは?例外的に資産が残るって本当!?

個人再生の別除権協定とは?例外的に資産が残るって本当!?

個人再生+別除権協定=ローン中でも車を残せるかも!

個人再生は住宅ローン以外の債務を減額できる手続きですが、実はそれ以外にも車などの資産を手元に残せる可能性もあります。

 

「別除権協定」を債権者との間で結ぶことによって実現する可能性があるのですが、この別除権協定というものをちゃんと理解できているでしょうか?

 

ここでは別除権および別除権協定について詳しく解説し、より賢く個人再生を行う方法を伝授していきます。
それでは早速、別除権とはどのようなものかから見ていきましょう。

 

 

すべてのポイントとなる別除権とはどんな権利?

これから別除権協定について解説していく前に、まずは別除権について解説しておきます。別除権とは、民事再生または個人再生を開始した時点で債権者が保有している担保権に関しては、再生手続きに関係なく行使することができる(民事再生法53条)とする権利です。どういうことかというと、本来であれば再生手続きが開始した時点で住宅ローンを除くすべての債務を平等に清算することになり、手続き完了まで債権の回収ができなくなってしまいます。しかし、別除権を行使することによって手続き中であっても即座に担保を回収することができます。これにより、特別に早く、なおかつ他の債権者よりも多く債権を回収することができます。たとえば自動車をローンで購入し、返済中に個人再生を申立てた場合、申し立てを行った時点で債権者のローン会社が車を引き上げて返済に充当してしまいます。当然手元には車が残らないわけですが、このように再生手続きの進行やほかの債権者との平等を考慮する必要なく債権の一部を相殺することができ、この権利が別除権です。具体的には質権、抵当権、所有権留保、譲渡担保権、特別の先取特権があります。事業を継続するために必要だと認められさえすれば、車だけでなく店舗などの不動産も対象になります。

 

 

基本的にローン支払い中の車は回収されてしまう

すでに簡単に触れましたが、ローン返済中の車は最低手続き開始とともに回収されてしまうのが普通です。回収された車をどのように鑑定するのかは別として、残っているローンを相殺するために用いられます。これによって担保権を設定している借金の債権者はリスクを軽減しているわけであり、有無を言わさず回収、売却となってしまうわけです。個人再生で継続が認められている債務は、住宅ローン特則による住宅ローンだけで、それ以外の債務は一律に再生対象となってしまいます。

 

別除権を行使しない! 別除権協定で車を残せるかも!

ローンで車を購入する際は100%担保権が設定されるとは言い切れないでしょうが、ほぼそれに近い確率で担保権が設定されることになるでしょう。債務者はあくまでも使用者に過ぎず所有者はローン会社となるのが普通なので、当然のように車は回収されてしまうわけですが、この別除権協定が認められばそのまま車を手元に残してローンの返済を継続できる可能性があります。この場合であれば、ローン会社に対して「担保権を行使しないで欲しい」という申し入れを行い、同意を得た上でさらに裁判所に共益債権として認めてもらうことが必要です。また、少額個人再生の場合は他の債権者の同意を得る必要もあります。これら必要な条件をすべてクリアすることができて初めて別除権協定が認められるため、仮に債権者との間で合意が得られても裁判所またはほかの債権者に否決されてしまう可能性もあります。

 

客観的な必須性があれば別除権協定が認められる可能性がある

たとえば、タクシー業を行う上で必要になるクルマや運送業を行う上で必要なトラックなど、再生後の返済を行う上で必要な継続収入を得る手段である場合は認められる可能性が高いといえるでしょう。しかし、「自転車や公共機関でも通えるが面倒くさい」といった状況が明らかな状況では別除権協定が認められない可能性が高く、通勤用の車が必要不可欠だと認められる状況でなければ困難です。具体的には、電車が走っていない、電車またはバスの始発より早く始業するまたは終電よりも遅く終業するといった状況であれば、通勤に車が必要であると認められる可能性はあるでしょう。ただ、これは弁護士や司法書士といった専門家であっても判断が分かれるところであり、どうなるのかは状況次第でまったく変わってしまう可能性があります。

 

 

メリットが期待できる別除権協定もハードルが高い

別除権協定を結ぶことができれば、車だけでなく他の資産も手元に残せる可能性があります。これにより、本来ならば債務整理をして生活再建を目指した方が有効だが手放したくない財産があるからできないという状況を打開できる可能性があるわけですが、いかんせんそのハードルは高めです。
・債権者に担保権を行使しないよう合意を得る
・裁判所に共益債権として認めてもらう
・他の債権者に認めてもらう
この3つが別除協定を結ぶうえで必要な項目ですが、1つではなく3つすべてをクリアしなければいけないところが肝になっています。それまでの返済実績が良くない場合、いくら「残りのローンはしっかり払う」と伝えても納得してもらえない可能性が高いですし、仮にそこで同意が得られたとしても裁判所に必要不可欠であると認められるためには条件があります。「日常生活や業務上必須である」と認められる事由があって初めて可能性がありますが、これも簡単ではありません。さらに他の債権者からしてみれば「なぜそこにだけ?」となってしまうのは当然で、反対される可能性は非常に高いです。これを交渉によって同意に持っていく必要があるわけですが、拒否されないよう上手な根回しも求められます。

 

 

別除権協定を結ぶために押さえておきたいポイント

債権者の同意を得るための材料を準備

別除権協定を結ぶためには、当該債権者のみならず他のすべての債権者からも同意を得る必要があります。当該債権者だけであれば、残債務をしっかりと返済していけば認めてもらえる可能性は十分に考えられます。しかし、他の債権者はそうはいきません。当該債権者に関しては、車の評価額分は完済される予定で、さらに圧縮されるとはいえ別途債務者から返済を受けられます。たとえば200万円の返済が残っている状態で保有している車の評価額が150万円あったとすると、この150万円に関しては満額回収することができ、さらに差額の50万円も少なくはなるものの回収することができます。しかし、他の債権者は200万円の債務がすべて圧縮されてしまうため回収額が一気に減少してしまうため、同意を得ることが難しいわけです。

 

裁判所に必要性を認めてもらうことが必要

通常、個人再生および別除権協定を検討する場合は弁護士や司法書士など法律の専門家に相談し、アドバイスを得ながら手続きの進行を依頼することになります。あらかじめ裁判所が共益債権として認めるかどうかは弁護士回答から判断できる部分もあるでしょうが、いくら本人が必要だと感じていても原則として客観的な必要性が認められない限り裁判所はこれを認めません。また、車の必要性は認められたとしても金額が高額であれば不要と判断される可能性もあるため、しっかりと法律事務所の判断を仰いで解決を目指しましょう。

 

必ずすべての債権者を考慮する

担保権を持っている債権者に対してさまざまな優遇を検討することは仕方がないとして、他の債権者に対してもしっかりと対応していくことが大切です。小規模個人再生の場合、当該債権者と裁判所以外にその他の債権者から否決されないことも条件として入ってくるため、しっかりとした根回しが必要です。議決権を持つ債権者の過半数以上、または債権総額の1/2以上の債権者から反対されてしまった場合、個人再生自体が否決されてしまいます。

 

 

債権者を平等に考えつつ理解を得る手段を考える

個人再生手続きにおいて、別除権協定を結ぶことで車などの資産を手元に残しつつ債務を圧縮することができます。これによりとっかかりが良くなり借金に悩む時間を短くできる可能性がありますが、そのためには担保権の債権者、裁判所、その他の債権者という3社から承認される必要があるので中々簡単ではありません。ポイントは別除権協定を結ぶ必須性と上手な交渉となるため、弁護士などの専門家としっかりと協力しながら取り組みましょう。特にその他の債権者に対する配慮をしっかりと考えないと、個人再生自体が成立しなくなってしまう可能性もあるので注意が必要です。