任意整理と個人再生の違いは?それぞれ特徴まとめ!

任意整理と個人再生の違いは?それぞれ特徴まとめ!

このページでは、借金問題解決の特効薬となり得る債務整理、その中でも任意整理と個人再生(民事再生)の違いについて取り上げていきます。

 

 

任意整理と個人再生ではどんな違いがある?

どうやっても完済の見込みがないとなれば自己破産しか選択肢はありませんが、完済の見込みがある場合は任意整理もしくは個人再生で対応することになります。自己破産と比べて制約も少なく、一部の資産を残せるなどのメリットがあるのですが、任意整理と個人再生をどのように使い分けるのかを正しく理解する必要があります。それぞれの違いを理解すれば正しく使い分けられる可能性が高まるため、順に対象となる債務の違い、裁判所を通すかどうか、借金の減額率のそれぞれにどんな違いがあるのかを解説していきます。

 

抱えている債務のすべてを対象とするか一部のみ対象とするかが違う

任意整理の対象とする債務は、債務者が自分で選択することができます。もちろん適用できるかどうかはいくつか条件があるほか債権者の同意が必要ですが、たとえば次のような利用が可能です。
・全部で10件ある債務のうち、住宅ローンや(連帯)保証人付きのものを除いた5件のみを対象として借金の減額等を依頼する
一方、個人再生の場合は一部の債務のみ選択することができず、抱えているすべての債務が対象になります。というのも、「債権者平等の原則」というものがあり、本来は特定の債権者だけが優先的に弁済を受けるなどの違いは認められません。なぜ任意整理は一部のみ選択することができるのかというと、次項で紹介する点が関係しているのですが、「住宅ローン特則」によって不動産は対象外にできる可能性があります。また、個人再生の例としては次のような形です。
・全部で10件の債務がある場合は、1件の住宅ローンを除いて残りの9件は保証人の有無などに関係なくすべてが対象となる

 

手続き上、裁判所が介入するかどうかが違う

先に「債務者平等の原則」について触れましたが、これは文字通り債権者を区別するべきではないという考え方で、弁済における重要なポイントです。任意整理の場合も厳密にはこの原則を踏まえた上で進めることにはなりますが、実際に一部の債務のみを対象にすることができます。なぜなら、任意整理は債権者と債務者が直接交渉する方法だからです。個人再生の場合は裁判所を通して債権者とやり取りをすることになるため債権者平等の原則が徹底されてますが、任意整理の場合はその辺が違います。

 

借金を減額する仕組みが違う

任意整理の場合、減額される借金は利息制限法を超えた分を再計算し、以降の利息をカットすることで債務が減額します。利息制限法における金利上限は、金額によっても違いますが最大で20%です。ところが、出資法における最大金利は29.2%まで認められていて、これを超えない限りは利息制限法の上限金利を超えた金利設定であっても違法ではありませんでした。いわゆる「グレーゾーン金利」というのがこれで、その差分を債務へ充当することで全体を圧縮します。グレーゾーン金利で利用している期間が長ければ長いほど債務を圧縮できる可能性が高く、場合によっては完済+過払い金の返還請求で数百万円も戻ってくる可能性もありますが、利息制限法の範囲内で利用していた場合はほとんど借金が減額されません。将来利息だけでもカットできれば返済が楽にはなりますが、目に見えて状況を改善できない可能性があります。一方、個人再生の場合は以下に示す割合(最低弁済額)まで借金が減額が見込めます。

 

小規模個人再生

①法律で定められた最低弁済額
②保有している財産の合計金額(清算価値)
のいずれか多い方を最低限返済します。

 

最低弁済額とは、以下の通りです。

  • 100万円未満/借金総額
  • 100万円以上500万円以下/100万円
  • 500万円超1,500万円以下/借金総額の1/5
  • 1,500万円超3,000万円以下/300万円
  • 3,000万円超5,000万円未満/借金総額の1/10

 

給与所得者等再生

①最低弁済額
②清算価値
③可処分所得(給与などの収入から税金や規定の生活費額を差し引いたもの)
の2年分から最も多い金額が最低額となります。

 

 

結局どっち? 任意整理と個人再生を選ぶポイント

いずれも原則3年、最長5年の範囲で完済を目指すことになる点は同じです。住宅を残したままにしたい場合もどちらも対応可能ですし、自己破産のように特定の職業に就けなくなるといった制約もありません。ベースとなる考え方としては、返済能力に応じた判断することになります。すでに減額に関する違いは紹介していますが、相対的に任意整理の方が負担が大きく残る可能性があります。ということは債権者にとってもメリットと認識できる部分が多く交渉が成立しやすいため、返済能力があると判断される場合はこちらを優先することが多いです。一方、債務を個別に対応したいからと思って債務整理を希望したとしても、収入や生活再建へ向けた状況などを加味すると個人再生になってしまう可能性もあります。あくまでどちらも選択できる状況においての話ではありますが、目的別のおすすめは以下の通りです。
・家族に内緒にしたい/任意整理
・何るべく簡単な手続きで済ませたい/任意整理
・整理したくない債務がある/任意整理
・債務の総額が大きい/個人再生
・すでに差し押さえが発生している/個人再生
ただ、最終的には弁護士や司法書士などのプロに相談をしたうえで判断した方が賢明です。素人目には最適だと判断できる状況だとしても法律の専門家から見ればそうではない可能性もあります。

 

 

任意整理中に個人再生へ変更することは可能?

初めは任意整理での返済を行っていたものの、そのうち生活が厳しくなってしまったなどの理由から個人再生への変更を考える状況というのは往々にしてあります。このような場合は変更が可能ですが、その判断が適切なのかどうかを正しく判断しなければいけません。具体的な状況としては、次のようなものが考えられます。
・債務者は任意整理を希望しているが債権者との和解が成立しなかった
任意整理では整理の対象とする債権者と話し合いによる和解が求められますが、一部の債権者が和解に応じず訴訟となってしまえば強制執行(差し押さえ)の可能性があります。こうなると和解に応じてくれた債権者への返済も難しくなるため、明確に法的強制力がある個人再生への移行が検討されます。
・返済が難しい、難しそうな状況になってしまった
あらかじめ任意整理でどの程度債務が圧縮できるのかを試算していたとしても、実際には思ったほど減少しなかったということも考えられます。そのような場合、任意整理のつもりで始めた和解交渉から個人再生へと変更することがあります。また、すでに任意整理での返済が始まっている状況であっても、失業や転職などで返済の継続が困難になった場合も同様に変更となる可能性があります。
どちらの場合も返済を前提として考えているため、ポイントは当然「一定期間内で完済が見込めるかどうか」です。本人としては任意整理では返済が難しいと考えていたとしても、個人再生は裁判所の認可が必要なので認められるかどうかカギを握ります。

 

任意整理から個人再生へ変更した場合のメリット、デメリット

返済面ではメリットが大きい個人再生への切り替えも、一切デメリットがないわけではありません。たとえば、いわゆるブラックリストに載ってしまうことなどがありますが、しっかりと覚えておきましょう。

 

メリット

・債務が大幅に減額される
・債権者が反対していても整理できる(ただし、小規模個人再生の場合は債権者数もしくは債務総額の1/2以上の同意が必要)

 

デメリット

・保証人がいる債務も対象になってしまう
・官報に掲載される
・裁判所や弁護士費用が任意整理費用に上乗せされる

 

 

債務整理で財産はすべてなくなる?

分かりやすいところでいえば自己破産、これに伴い家や車を競売に掛けられてしまうという認識があるかと思いますが、債務整理を行うと必ず財産を処分しなければいけないわけではありません。むしろ、自己破産以外は残せる財産も多いです。
【任意整理】
・債務を個別に選択できるので必要なものは残せる(ただし、債務も変化なし)
【個人再生】
・住宅ローン特則によって住宅を残せる
・別除権協定を結ぶことができれば車も残せる可能性がある(この場合は車の評価額は債務としてそのまま残る)
【自己破産】
・不動産、20万円を超える動産、貴金属や預貯金、99万円を超える現金などの高額な財産は売却しなければならない
・自由財産は手元に残せる

 

 

適切な判断は専門家の意見を参考にしよう

一口に債務整理といってもさまざまな違い、メリットやデメリットがあることが分かったのではないでしょうか。どの方法が最も効果的なのかを正しく判断するためには専門家を頼った方が賢明ですし、何よりも個人で債務整理を行う場合は失敗のリスクが小さくありません。個人で行えば弁護士費用などをカットできるので負担は小さく済みますが、その結果、債務整理に失敗してしまったのでは本末転倒です。最適な債務整理の選択肢が分かり、最小限度の時間と労力でほぼ確実に問題を解決できるわけですから非常におすすめです。

 

 

必ずプロに相談を! 正しい判断で債務整理を成功させる

以上、債務整理と個人再生の違いについて解説してきました。特に似ているこの2つですが、細かい部分はさまざまな違いがあることが分かったのではないでしょうか。債務整理の目的は単に債務を圧縮することだけでなく、その後の生活を再建する土台を作ることもあります。正しい選択が問題を解決に導き、正しい判断がスピーディに生活を再建するきっかけになります。素人判断で安易に考えてしまうことなく、弁護士などの専門家に相談をしたうえで確かな選択をしましょう。