債務名義にも時効があるの?起算日や時効年数を徹底解説

債務名義にも時効があるの?起算日や時効年数を徹底解説

債務名義とは?時効の年数や時効が伸びる可能性について解説

債務者に強制執行を行うための準備段階として必要となる、裁判所などの公的機関によって作成される文書として「債務名義」と呼ばれるモノがあります。
今回このページでは「債務名義」に重点を当てて詳しく解説していきます。

 

そもそも債務名義とはどのようなモノなのか?
債務名義にも時効があるのか?あるとしたら何年なのか?

 

といったことをはじめ、実際に強制執行が行われるまでの流れや借金を返済する為の有効な手段の説明までそれぞれ詳しく紹介していきます。

 

債務名義について詳しく知りたい人はもちろん、現在借金でお悩みの人にとっては有益な情報を紹介していきますので是非とも参考にしてください。
これを読めば債務名義に関する疑問を解決することができますよ。

 

 

まずは債務名義とはどのようなモノなのか理解しよう

債務名義の時効などについて説明する前に、そもそも債務名義とはどういったモノなのかについてしっかりと理解しておく必要があります。ここではそもそも債務名義とは何か?どのような文書が債務名義となりえるのかについて、詳しく解説していきます。債務名義というのは強制執行を行う前提として必要になってくる公的な文書です。内容的には、公的に差し押さえしたい(強制執行)相手に対する自分の債権の存在や範囲を証明した書類になります。強制執行というのは、債務者の財産を差し押さえる行為ですが、これを執行して貰うためには債権者は債務名義が必要となるのです。賃金業者などの債権者(お金を貸している側)が債務者(お金を借りている側)から借金を回収する手段として強制執行を行って貰うためには、まず債務名義を取得した後にその文書を裁判所へと提出するという手順を踏んでいるのです。債務名義となりえるのは以下のようなモノがあります。

 

債務名義となるもの

・確定判決(民事執行法22条1号)
債務名義を得る為のもっとも一般的な方法は、裁判所に支払いの請求訴訟を起こすことです。その判決がそのまま債務名義となります。
・仮執行宣言までされた判決(民事執行法22条2号)
裁判の確定まで待っていたのでは、債務者に財産を隠されてしまうといったケースも想定されます。その為、債権者の権利を救済するという観点からも、仮執行宣言まで付された判決は債務名義として認められています。
・確定判決と同等の効力を有するもの民事執行法22条7号)
これに該当するのは、裁判上で和解が成立したという内容が記載された「和解調書」や民事調停が成立したとう内容が記載された「調停調書」などがあります。
・執行証書(民事執行法22条5号)
執行証書というのは、公証人が作成した公正証書のことです。金銭の支払いなどを目的とする請求に於いて、債務者がすぐにでも強制執行に服する旨の内容(執行受諾文言)が記載されています。この執行証書も債務名義となります。

 

 

債務名義に時効はあるの?あるとしたら何年?

賃金業者や消費者金融からの借金の時効は5年間です。この間に1度も返済ををせずに、尚且つ借金の存在を認めなければ時効期間が経過した後に時効の援用(主張)を行うことによって借金を返済する義務を免れます。それでは債務名義にも時効が存在するのでしょうか。次からはそのことについて説明していきます。

 

債務名義の時効は何年なのか?

前述した通り債務名義には、確定判決や和解調書、執行証書などいくつか種類があります。債権者が取得したこれらの債務名義の時効は10年間です。つまり消費者金融などの借金の時効が成立する5年が経過する直前に、債権者が債務名義を取得することによって、実質的には消費者金融などからの借金の時効は15年まで延びてしまうということになります。

 

 

債務名義によって借金の時効が延ばされてしまうとどうなる?

債権者に債務名義を取得されて、実質的に借金の時効が延ばされてしまうとどうなってしまうのでしょうか。ここでは具体例を上げて説明していきます。まず消費者金融会社などからの借入金の時効は5年間です。この5年のあいだに一切返済をしていない。借金の存在を認めない。という2つの条件を満たすことで借金を返済する義務が免れます。ただし、ただ5年間が経過すれば自動的に借金が無くなるわけではありません。時効を成立させる為には、債権者に内容証明を送るなどして「時効の援用(主張)」をする必要があるのです。たいていの場合には、弁護士や司法書士などの法律の専門家に依頼してこの時効の援用を行うことになるのかと思います。依頼を受けた弁護士はや司法書士は、債権者に対して消滅時効の援用の内容証明郵便を送付します。内容証明を受け取った債権者が、その債務にたいして有効な債務名義を有してしない場合には時効が成立します。しかしまだ時効の経過していない確定判決、和解調書、執行証書などの債務名義を有する場合には借金の時効は成立しません。債務名義があるということは、債務者に支払いの義務があるということなので今後は借金返済に向けての話し合いを行っていく必要があります。時効の援用をした本人(借金をしている人)は、裁判などを起こされた覚えなどないという場合でも実際には裁判所から送られてきた書類を見逃していただけといったケースも珍しくありません。実際に借金の時効の援用を行う場合には、このあたりもしっかりと確認してから弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。

 

債務名義の時効の起算日はいつか?

債務名義の時効の起算日は、債務名義が取得された日の翌日から10年になります。ただし借金の時効の起算日にたいする見解にはいくつかあるります。おおよそ以下に考えていれば間違いはありません。
▲借金の時効期日の起算日に関する見解
・返済期日を定めていない契約で一度も返済しなかった場合の起算日
時効の起算日は契約日の翌日。時効はその日から数えて5年
・返済期日を定めない契約で一回以上返済した場合の起算日
時効の起算日は最後に借金を返済した翌日。時効はその日から数えて5年
・返済期日を定めた契約で一度も返済しなかった場合の起算日
時効の起算日は最初の返済予定日の翌日。時効はその日から数えて5年
・返済期日を定めた契約で一回以上返済した場合の起算日
起算日は最後に借金を返済した次の返済予定日の翌日。時効はその日から数えて5年
借金の時効の起算日は以上のようになります。上記の期間内に借金の返済を一切行っていない。借金の返済の意思表示をしない。という2つの条件を満たせば、時効の援用により借金の時効が成立すると考えられています。

 

 

債務名義(強制執行)で差し押さえられる可能性のあるモノはなに?

ここでは債務名義(強制執行)によって差し押さえられてしまう可能性のあるモノについて紹介します。
▲債務名義によって差し押さえの対象となるモノ
・給料(手取りの1/4まで)
・預金口座
・換金価値のある家財道具・貴金属・有価証券など(ただし、テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの必需品は差し押さえ対象外。複数所持を除く)
・自動車(ただし、債務者の生活に支障をきたす場合は差し押さえ不可)
以上のようなモノは債務名義(強制執行)によって差し押さえられてしまう可能性があります。反対に債務名義によって差し押さえできないものには、実印、1ヶ月分の食糧・料理用具、生活に必要な家電(洗濯機など)、仏壇や位牌、国民年金や厚生年金などの給付金請求権があります。

 

 

債権者によって債務名義(強制執行)が行われる流れを解説

債権者によって債務名義(強制執行)が行われる時の流れについて詳しくみていきましょう。強制執行(差し押さえ)の手順や流れは以下のようになります。
▲強制執行の流れ
1、債権者が裁判所の手続きによって債務名義を取得する。
2、債権者が裁判所に債務名義を提出して「執行文付与の申立」を行う。
3、債務者に送達証明書が送付される。(債務者に、どのような内容・理由によって強制執行が行われるのかを知らせるのが目的)
4、債務名義を送達しても債務者が返済に応じない場合、もしくは何の返答もない場合にはこの段階ではじめて債務名義による執行力が付与される。債務者はいつ強制執行されてもおかしくない状況となります。

 

 

債務名義の時効を延長するにはどうすればよいのか

債権者が債務名義を取得した場合の時効は取得翌日から起算して10年間になります。仮にこの10年の間に債務者が借金を一切返済しない、借金の存在を認めないといった場合には債権者の立場としてはどのように債務名義の時効を延長すればよいのでしょうか。このような場合には、改めて裁判を起こして債務名義を取得しなおすことでその取得日の翌日から10年間債務名義の時効が延長されることになります。実際にはこれほど長期に渡って返済を見逃すということはあまりありませんが、債務名義(強制執行)を実行しないのであればその効力は10年で失われてしまいます。

 

 

借金の返済が困難な場合には早めに専門家に相談するのがおすすめ

病気や失業などの何らかの理由によって借金を返済していくことが難しくなってしまった時には、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。専門家に債務整理を依頼することで借金の額を大幅に減らすことや、月々の返済額を減らしたり金利を引き下げて貰ったりすることができます。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産といった方法があるので、個人の状況に合わせて適した方法を専門家と相談の上に行うようにしましょう。ただし債務整理によって借金の負担が減るという大きなメリットがありますが、信用情報機関に金融事故情報が掲載されてしまう。官報に名前や住所が掲載されてしまう。所有する財産を手放さなければならない(自己破産の場合)といったデメリットがあることも知っておいてください。しかし上記のようなデメリットや弁護士費用が必要になるといった部分を考慮したとしても、債務整理を専門家に依頼することには大きなメリットがあります。まず個人で行うよりも大幅に債務額を軽減できる可能性が高い。すぐに借金の督促や催促の連絡が止む。といった借金でお悩みの人にとってはとても大きなメリットがあります。ですから今現在借金でお悩みだという人は、なるべく早く法律の専門家に相談するのがおすすめです。誰にも相談せずに1人で悩んでいても何も解決はしませんよ。とくに最近は債務整理を専門としている弁護士や司法書士もたくさんいるので、以前よりも気軽に相談に乗って貰うことも可能になっています。ぜひ1度専門家に相談してみましょう。

 

 

債務名義の時効は10年間

今回の記事のポイントをまとめると以下のようになります。
・債務名義の時効は取得日の翌日から10年間。
・債務名義は強制執行を行うために必要な文書。
・債務名義(強制執行)を行うことで、債務者は財産を差し押さえられてしまうことがある。
・借金の返済が困難な場合は、早めに法律の専門家に相談するのがおすすめ。
以上がこの記事の重要なポイントになります。いずれにしても債権者に債務名義を取得されてしまうということは、債務者にとっては経済的に大変苦しい状況であるともいえます。借金返済の解決の糸口を見つけるという意味でも、なるべく早期に法律の専門家に相談するのがおすすめですよ。