任意整理は和解交渉次第!借金を減額するには?
任意整理の和解交渉の内容を具体的に解説
債務整理のひとつである任意整理には
①利息が免除される
②債務総額が少なくなる
③債務整理する債権者を選べる
というメリットがあります。
このページでは任意整理へのさまざまな疑問にお答えしながら、和解交渉について詳しく説明してゆきたいと思います。
任意整理だと借金はどのように解決できるの?
任意整理とは自己破産や個人再生などのような他の債務整理との違いは、裁判所を通さずに債務整理を行うという点にあります。債権者と債務者が交渉しながら返済計画案を作成し、その案に当事者が合意して借金返済を目指すものなのです。任意整理では、自己破産のように借金が全額免除になるようなことはありません。しかし借金を利息制限法にしたがって引き直し計算するため、過払い利息を元本から差し引くことや利息のカットによって借金を減額でき返済の負担が軽くなるのです。任意整理は当事者同士の話し合いで借金問題の解決を目指すもので、他の債務整理のように裁判所が介入しないため強制力はありません。したがって任意整理で最も重要な点は、いかにして債権者との合意にまで漕ぎ着けるかなのです。
任意整理で借金減額の手続きはこんな流れ
任意整理の手続きでは、まず借金したときにまでさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)で利息を計算し直します。これが引き直し計算というもので、これにより借金を減額することができるのです。さらに元本のみを3年程度の期間で分割して返済するという内容で貸金業者と和解交渉を行い、この和解書の内容どおりに返済を続けてゆき借金を完済します。これら一連の手続きのことを任意整理といい、裁判所などを介入させず話し合いで借金問題を解決するものなのです。任意整理の最大のポイントである和解交渉については、以下で詳しく解説します。
和解交渉の具体的な内容は主に2つ
任意整理の和解交渉では、借金の減額や返済方法などについて債務者が債権者と話し合います。和解交渉を成功させるポイントは、債務を減らしながらも債権者が妥協できるような内容を提示することです。具体的な論点は「借金をいくら減額できるのか」「借金をどのように返済するのか」です。債権者が合意できる内容であっても債務者にとって厳しい条件で合意してしまえば、その後の返済を計画通りに履行できず債務整理は失敗に終わります。まず第1のポイントである「借金をいくら減額できるのか」については、債務者側としては少しでも安くできることが望ましいものです。一般に過払い金を元本から差し引いたり利息や遅延損害金をカットしたりすることで借金を減額することができるのですが、交渉次第ではそこからさらに減額できることもあります。債権者の合意を引き出せる範囲で、可能な限り借金額を圧縮したいものです。第2のポイントは「借金をどのように返済するのか」です。任意整理における借金の返済方法としては一括返済と分割返済の二通りがありますが、多くの債務者は原則3年間、特別な事情があれば5年間で分割返済しています。もし債務者が身内などからの資金援助を得られるのであれば、一括返済を選ぶことで借金をさらに1?3割程度減額してもらえる可能性もあるので一度検討されてみることをおすすめします。
和解交渉は債務整理のプロである弁護士の腕次第
任意整理の最大のポイントである和解交渉ですが、一般的に債務者より債権者のほうが借金関係の知識に明るいものです。また債権者が海千山千の貸金業者である場合なら、債務者に有利な条件で和解交渉を進めることは大変難しいものとなります。債務者に不利な内容で和解してしまっては、任意整理を行った意味がなくなるだけでなく返済自体が頓挫してしまうことにもなりかねません。和解交渉では借金関係の知識だけでなく交渉テクニックも必要となり、法律の専門家である弁護士であっても債務整理に詳しくなければ有利な和解交渉は望めないのほどのものなのです。任意整理を行う時には、債務整理の経験が豊富な弁護士を選んで依頼することをおすすめします。
和解成立までに必要な期間は3ヶ月が目安
任意整理を弁護士に依頼した場合、和解成立までに3ヶ月程度の期間が必要です。弁護士に任意整理を依頼するとまず弁護士から債権者に対して受任通知が発送され、同時に債務者の取引履歴の開示要求を行います。続いて取引履歴をもとに利息制限法にしたがって金利の再計算を行い、新たな債務額を確定するのです。その後、債務者ごとに返済計画を作成し返済条件などを交渉しながら和解契約の合意を目指します。ここまでの手続きがスムーズに進めば2ヶ月程度、交渉が長引けば半年程度掛かることもあります。
和解を進めるときに注意したいポイント
任意整理では、債権者から和解の合意を得ることが最大のポイントです。つまり、いかにして債権者の合意を得るかを考えなければならないのです。債権者が金融機関の場合には、3年程度で完済できる返済計画であればほぼ合意を得られます。しかし債権者が知人や事業の取引相手などのような金融機関以外である場合には、借金の減額に応じてもらえないことがよくあるのです。このようなケースでは個人で和解を取り付けることは大変難しく、任意整理を得意とする弁護士などに依頼するのが無難です。なお司法書士は140万円を超える債務整理を取り扱うことができません。借金が高額な債務整理は弁護士に依頼しましょう。また行政書士は債務整理を行うことができませんのでご注意ください。
和解交渉がうまくいかない債権者へはこう対処しよう
債権者が任意整理に応じてくれず和解交渉がうまくいかないこともあります。任意整理は債務者・債権者双方の任意で行うものなので、債権者が債務者の求めに応じる義務はないからです。和解交渉が決裂すれば任意整理を行うことはできません。現在の状況のままで返済できないなら、個人再生や自己破産など他の債務整理を検討しましょう。これらの債務整理は任意整理とは違って法律で定められた制度なので、債権者側が拒絶することはできません。債務整理に詳しい専門家に相談してできるだけ早期に借金問題を解決したいものです。
和解交渉が成立後は和解契約書の作成を必ず!
和解交渉が成立すれば和解契約書を作成します。和解契約書には債務者と債権者が合意した内容を記載しますが、合意内容を詳細に記載しておくことが何よりも大切です。任意整理では裁判所を介さず当事者どうしの話し合いによって借金問題を解決するため、法の強制力が働きません。そのため、和解した内容を明文化しておかなければ合意した通りに履行されないおそれがあり、万一裁判沙汰になったときに和解契約書がないと責任の追求が難しくなります。あとで誤解や問題が生じないよう、合意した内容を双方に確認しながら和解契約書を作成してください。
和解契約書に記載すべき事項とは?
任意整理で和解契約書に記載すべき内容をご紹介しましょう。
・債務総額の確認条項
引き直し計算の後、過払い金などを差し引き最終的に決定した負債総額を記載します。和解契約書では、負債額を「和解金」とすることが推奨されています。「借入金」と記載してしまうと利息や損害遅延金の扱いについて問題が生じる恐れがあるからです。
・支払い方法の和解条項
和解交渉で合意した返済方法(一括返済または分割返済)の具体的な内容を記載します。返済開始日や毎月の返済日のほか、支払い回数や支払い金額を明文化しておくのです。なお端数処理の方法も明確に記載しておくと安心です。
・期限の利益喪失に関する和解条項
期限の利益とは、決められた返済期日が来るまでは返済しなくてもいいという権利のことです。この権利が喪失した場合には、残りの借金の一括返済を求められることになります。任意整理での和解契約では2回以上の延滞や遅延があれば期限の利益が喪失し、債務者が残金を一括請求できる権利が発生するという内容になっているが多いようです。しかし実際には債権者が請求しなければ債務者は期限の利益を失うことにはなりません。
・遅延損害金に関する和解条項
実際に期限の利益を喪失した場合、一括で返済できなければ損害遅延金が発生することになります。そのときの遅延損害金は年利10%とされることが多いようです。
・債権債務の清算条項
清算条項とは債権総額の確認条項で記載されている金額が、債務の全てであるということを示すものです。これにより債務者が債権者に対して、別の借金や損害賠償が残っているというような主張をすることを回避することができます。
・その他の和解条項
任意整理での和解契約書に記載すべき事項は法律で規定されたものではないため、上記以外の条項を記載することができます。よくみられるものは放棄条項で、債務者に複数の請求権がある場合にそのうちの1つが和解成立となれば、その他の請求権は放棄するというものです。また和解までに発生した遅延延滞金や担保などを外してもらう場合に、遅延損害金請求権や抵当権などの担保権を放棄する旨を放棄条項として記載することもあります。
和解後の返済開始時期との今後の流れ
債権者が合意してくれることが前提ですが、任意整理では返済開始時期も任意に決めることができます。時効が迫っているというような事情がない限り、一般的には取引履歴の開示から1年以内に返済スタートになることが多いです。ところで弁護士に任意整理を依頼した場合には、和解契約が成立すれば弁護士との契約も終了します。この後、和解契約書の内容にしたがって返済してゆくのですが、複数の債権者に返済するケースではうっかり返済が遅れてしまうこともありえます。この場合、債権者との交渉は自分で行うことになりますが、万一返済が滞ってしまうようなケースなら早めに任意整理の再和解をすることをおすすめします。再和解せずに放置すれば期限の利益喪失となり、残金の一括返済を要求されることになるのです。任意整理の再和解が叶わなければ、個人再生や自己破産など他の債務整理を考えなければなりません。なお和解が成立するまでの期間は返済がストップするので、この間に弁護士費用や返済資金をプールしておきましょう。
任意整理後の返済期間は概ね3年程度
任意整理後の返済期間は多くの場合3年で、36回の分割払いとなっています。もし3年で返済するのが難しい場合には、あくまで交渉次第ですが最長で5年間にすることも可能です。和解後に延滞や遅延が生じないよう返済期間は自身の収入を鑑みながら堅実なプランを選択しましょう。
任意整理の和解交渉【体験談】からわかることは?
実際に任意整理をした方(30歳代・男性)の体験談から、どんな状況でどのような交渉を行い結果的にどうなったのかをみてみましょう。収入が少なかった20代の頃に銀行系のカードローンで3万円の借入を行った後、15年以上借入と返済を繰り返し344万円にまで借金が膨らんでしまいました。リーマンショックのあおりで収入が激減し、毎月8万円を超える返済が難しくなったため弁護士に相談することにしたのです。最初に相談した弁護士事務所では自己破産ばかりをすすめられましたが、2ヶ所目の弁護士事務所では任意整理を引き受けてもらえ、5年間で月々6万円ずつ返済していくことで和解することができました。任意整理の和解交渉については、どのように話をすすめればよいのかわからないためプロの任せるのが一番でした。返済が遅れそうなときには自分で金融業者に連絡して待ってもらいながら返済を続け、借金は確実に減っているそうです。今となってはもっと早く専門家に相談すればよかったと思っていると語っておられます。また弁護士事務所によっては、任意整理を引き受けたがらないところがあったり相性の良し悪しもあったりするので、複数の事務所に相談してみることを強くすすめておられました。
任意整理の和解交渉はプロに任せたい
債務整理のなかでは比較的手続きが簡単な任意整理ですが、任意であるがゆえ和解交渉が合意に至らないこともあります。合意できるかどうかは交渉の腕次第なので、任意整理を得意とする弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。借金問題は時間との勝負です。利息が膨らみどうにもならなくなってしまうと任意整理で解決することが難しくなります。借金の返済が苦しいと感じられたら、お早めに専門家に相談してください。