任意整理の事務所選び|減額報酬と固定報酬どっちがいい?

任意整理の事務所選び|減額報酬と固定報酬どっちがいい?

減額報酬がある事務所は選ばない方がいい?

任意整理は借金の返済が家計のやりくりだけではどうしようもなくなった時に、お金を借りている相手と契約内容を見直して返済を続けられるようにする救済措置の一種です。より早く、またより有利な解決をするために、専門家の力を借りようという結論に至った方もいらっしゃるでしょう。専門家に依頼するとなると報酬を支払わなければなりませんから、法律事務所の料金形態は最も気になる項目だと思います。各法律事務所の料金表示をみて「減額報酬」という聞き慣れない項目に気付き、その意味を調べるためこのページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。そこでこの記事では減額報酬とは一体なんなのか、減額報酬がある事務所とない事務所ではどう違うのか、といったことについて少し詳しく解説していきます。

 

 

減額報酬は成功報酬に分類される

減額報酬とは債権者との交渉で減らすことができた金額に応じて計算される、いわゆる成功報酬の一つです。任意整理をする時は債権者と手続を依頼した司法書士や弁護士が交渉して、金利や返済額などの契約の見直しをしてもらうのですが、その際過払い金が発生していれば、借金残高そのものが減額になる場合があります。例えば100万円の借金について任意整理の手続きの中で、過払い金が60万円発生していたことが判明した場合、依頼した専門家はまず借金残高を40万円にしてもらう交渉をします。交渉に成功すれば100万円だった借金が40万円に減るので、減額報酬を取り入れている事務所であれば、減額に成功した60万円に対して決められた割合で報酬が請求されます。元金カットになる要件は、過払金の発生だけではなく弁護士や司法書士の交渉力によって成功する場合もあります。その場合も元金がカットされた金額に対して、減額報酬が請求されます。

 

 

法律事務所によって異なる報酬体系をしっかりチェックしよう

いくつかの法律事務所の料金体系を調べた方であればすでにお気付きだと思いますが、減額報酬はすべての法律事務所に設定されているわけではありません。法律事務所によっては報酬を固定報酬制にしているところもあります。また必ずしも「減額報酬」という言葉が使われているとは限らず、例えば「経済的利益に対して〇〇%」や「取り戻した金額の〇〇%」といった表記がされていることもあります。成功報酬という意味では同じなのですが、引き直し計算によって残高がゼロになり、いくらかお金が戻ってきた時には過払金報酬という扱いになります。減額報酬と過払金報酬は別物で、あとの章で解説する報酬の計算方法や、報酬上限額のルールも違ってくるので注意してください。任意整理が無事和解して、いざ弁護士に報酬を支払う時になって「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、手続きを依頼する法律事務所を選ぶ時には、成功報酬の欄をしっかりチェックしておきましょう。

 

減額報酬なしの事務所に依頼した方がお得?

それなら減額報酬の制度を取り入れていない事務所を選ぶ方がお得なのでは?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし一概に減額報酬がない法律事務所に依頼する方が得とは言いきれません。実際に減額報酬10%の法律事務所と、1社あたり2万円(減額報酬なし)の設定をしている法律事務所、それぞれで任意整理の依頼をした場合を想定して計算してみましょう。100万円債務額があり任意整理をするため利息制限法に基づいて計算し直してみた結果、60万円の過払い金が出ており交渉が成功して借金残高が40万円まで減りました。この時減額報酬が10%の法律事務所に依頼していたとしたら、減額報酬は60万円の10%である6万円請求されることになります。一方減額報酬なしの法律事務所に依頼していた場合は、債権者の件数によって金額が違ってきます。債権者が1~2社なら費用は安くすみますが、債権者の件数が多ければ減額報酬制の法律事務所より高くなってしまう結果になります。もちろん実際の法律事務所では減額報酬を取り入れているところでも、1社あたりの報酬も設定されていることがありますのであくまでも一例として考えてくださいね。この例から分かるように借入件数、借入残高、過払金の有無などケースによって得になるか損になるかが変わってくるというわけです。

 

 

弁護士報酬にはルールがある!依頼前に報酬規制をチェック!

基本的に弁護士費用は各事務所または弁護士が自由に決めることができるのですが、債務整理事件や過払い金請求事件については日本弁護士連合会により「債務整理事件処理の規律を定める規定」というルールが定められています。この規定には弁護士の報酬に関しての上限金額がルールとして定められていて、2011年4月以降の債務整理事件ではこのルールに従わなくてはなりません。ルールで定められている各項目の上限金額は以下の通りになっています。
・着手金…上限規制なし
・解決報酬金…1件当たり2万円以下、商工ローンの場合は5万円以下
・減額報酬金…減額分の10%以下
・過払金報酬金…訴訟にならず回収できた場合は回収額の20%以下。訴訟になった場合は回収額の25%以下。
また上記以外の報酬や手数料として「引き直し計算の手数料」などの名目で請求することは禁止されています。法律を仕事にしている弁護士がルールを守らずに報酬を得るとは考えにくいのですが、絶対にないとは言い切れませんので弁護士費用は事前のカウンセリングで報酬の名目と金額を確認して、ルールの範囲内で請求されているのかをチェックしておきましょう。

 

特に過払い金がある場合は減額報酬の計算に注意!

過払い金がある場合の減額報酬については特に注意が必要です。例えば50万円の債務に対して引き直し計算を行った結果、すでに完済できていた状態で、さらに30万円の過払い金を訴訟無しで取り戻せた場合を考えてみましょう。この時減額報酬は減額できた50万円に対して発生するので、報酬上限の10%である5万円以下になるはずです。そして回収した過払い金は30万円なので、過払金報酬金の上限20%で計算すると6万円以下になります。間違えないよう気を付けなくてはいけないのは、過払金報酬は総額の80万円に発生するのではなく、回収した金額にのみ適用されるという点です。この事例で別パターンとして債務がゼロになっただけで、30万円の過払い金を回収していないケースならば、過払金報酬は請求されません。少し分かりにくいですがこれを間違えてしまうと、不要な報酬を支払うことになってしまうので充分に注意してください。

 

 

減額報酬ナシの事務所に依頼するメリットは?

減額報酬の設定がない事務所は1社あたりの報酬がいくらという形になっているので、事前に報酬の支払いがどのくらいになるのかを自分でも調べやすいというメリットがあります。報酬が債権者の数によって決まるので、債権者の数が少ない、または1件1件の借金残高が多い場合は、減額報酬なしの事務所に依頼する方が最終的な報酬は安くすむ可能性が高いです。ただ減額報酬の設定がない場合でも、多く払い過ぎた分を取り戻すとなると、戻ってきた金額に対しての報酬は請求されることがあります。減額報酬なしの法律事務所をいくつか調べてみましたが、やはり減額報酬は0でも過払金に関する報酬は設定されているところがほとんどでした。減額報酬と過払金報酬は間違いやすいですが別物なので、初回の契約日が古い債権者や十数年に渡って取引をしてきた債権者が任意整理の対象となっている場合には、報酬についてしっかり確認しておきましょう。

 

 

減額報酬制の事務所に依頼するメリットは?

減額報酬制の法律事務所は借金額が減った金額に対して報酬が計算されるので、減額できない、もしくは減額できても少額の場合は結果的に報酬が少なくてすみます。基本的に任意整理の交渉は、和解後の利息カットがメインの争点となることが多く元金そのものを減らせるのは利息制限法に基づいた引き直し計算によるものです。交渉力のある弁護士や司法書士の場合、グレーゾーン金利の取引がなくても元金をカットできることもあるようですが、貸金業者も簡単にカットしてくるわけではないので大幅な金額を減額できるのは非常に稀なケースになります。グレーゾーン金利の原因となった旧出資法の上限金利も現在は見直されているため、法改正後に初めて借入をした契約では過払金が発生している可能性はほとんどありません。そうなると元金カットの交渉は難易度が高くなります。交渉に成功したとしても大幅な金額は難しいでしょう。ですから初めての借入が出資法が撤廃された平成22年(2010年)6月18日以降の契約に関しては、減額報酬制の事務所に依頼する方が安く抑えられる可能性が高いです。ただし減額報酬制を取り入れている事務所でも1社あたりの報酬が設定されていることもあるので、料金形態を比較する際にはすべての項目を計算に入れて検討しましょう。

 

 

任意整理を依頼する事務所選び|減額報酬ありorなしはどちらが得?

任意整理の手続きを依頼する事務所を選ぶ際には、弁護士費用をしっかりチェックしてどのような名目でどのくらいの割合の報酬が請求されるのかを調べておきましょう。減額報酬を取り入れていない事務所の方が安くなるとは限りません。どちらが安くなるのかはケースバイケースなので、まずは現在の借金の状態を把握することから始めましょう。経験豊富な弁護士であれば任意整理でどのくらい減額ができるか、大まかな予測を立てられる場合もありますので無料相談でじっくり相談してから依頼するかどうかを検討しましょう。