個人再生をするためには条件がある?メリットやデメリットは?
条件はあるが難しくはない!個人再生を正しく理解しよう
任意整理、自己破産、過払い金返還請求とともに債務整理の一つである個人再生。「債務が一気に少なくなる」という程度の印象は持っているという人もいるでしょうが、まったく理解していないという人も少なくないようです。これから借金問題を解決しようとしている人であれば、そもそも債務整理は種類によってどういう違いがあるのかを知ることは絶対に必要で、それを知ることによって正しい判断に近づいていきます。ここで紹介するのは個人再生に関してですが、「どんな人が個人再生を選択できるのか」「どんなメリット、デメリットがあるのか」といった基本部分を中心に解説していきます。正しく理解して、できるだけスムーズに借金問題を解決しましょう。
個人再生を行うための条件は大きく4つ
さて、まずは個人再生を選択できる人の条件について解説していきます。「借金問題解決の手段なのだから、誰でも選べるんじゃ…?」と思っている人もいるでしょうが、実はある程度明確な基準が存在しているのでよく覚えておきましょう。先に触れておきますが、個人再生を行うための条件は以下の4つがあります。
1.将来的に継続または反復した収入があり、返済計画に則った弁済ができること
2.債務総額5,000万円以下であること
3.(小規模個人再生手続きのみ)債権者の1/2以上の反対がないこと
4.(給与所得者再生手続きのみ)過去7年以内に個人再生手続きのハードシップ免責許可決定、給与所得者再生の再生計画認可決定、破産手続き免責決定を受けていないこと
それでは、個別にポイントを見ていきましょう。
完済が見込めるのか?「安定した収入」
個人再生による債務整理を行う上でまず必要なことは、“期限内に完済が見込めること”です。個人再生で指定される返済期間は原則3年、最長弁済期間5年と決まっています。個人再生が認められると債務が圧縮されますが、残った債務を3~5年の期間で完済できるだけの継続収入が確保できることが必要です。少々難しい言い方をすると「継続的に又は反復した収入がある」という風になるのですが、この表現が重要なポイントです。個人再生を申し立てるにあたって返済計画を作成しますが、これに則った弁済(返済)ができるかどうかをこの表現に沿って判断されます。具体的な基準というのは状況によって変わる可能性がありますが、以下に一例を示しておきます。
【個人事業主の場合】
3か月に1回程度の割合で再生計画に則った弁済ができる程度の収入があれば、継続的に又は反復した収入としてみなされる可能性があります。
【アルバイト、フリーターの場合】
特定の雇用主による相当な期間の雇用実績がある場合は、将来的な継続的に又は反復した収入として認められる可能性がありますが、雇用期間が短かったり短期雇用アルバイトを渡り歩いているような状況では認められない可能性がある。
【年金受給者の場合】
年金にはいくつか種類がありますが、老後年金の場合は将来的に継続的に又は反復した収入と認められる可能性が高いです。しかし、障害年金の場合は医療の進歩などによって将来的な状況が大きく変わる可能性があるため認められない可能性があり、障害の内容等によって個別に判断する必要があります。
上限設定あり!「借金総額5,000万円以下」
また、個人再生では収入の安定性に加えて、“利息制限法による引き直し後の債務総額が5,000万円以下”であることが必要です。個人再生が認められると最大で1/10まで債務を圧縮することができます。おおよそ個人が負うことになる債務から考えると1/5程度が一つの目安となるのですが、いずれにしても一気に債務をカットできることには違いありません。自己破産と比べるとメリットが大きい個人再生、積極的に選びたいと考える人は多いです。ただ金額的な上限が存在するという点を十分に考慮し、どの方法で債務整理を行うべきなのかを判断する必要があります。この5,000万円に含まれる債務に以下は含まれません。
・住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を適用する場合の債務
・抵当権(担保権)つきの債権で担保を回収した金額
しかし、住宅ローンを手放す場合は5,000万円に債務を含めて考えることになるため、総額が基準額を超える場合は個人再生を利用できなくなります。
確実返済必須!「返済が滞らない」
先に挙げた個人再生手続きの条件には含まれませんが、途中で返済が滞ってしまうようでは認められない可能性があります。そもそも再生計画を作成する段階で可能プランを設計するわけですが、返済中に状況が変化して返済できない状況に陥る可能性はゼロではありません。万が一にも返済が難しい状況になってしまった場合は、以下のような状況が起こる可能性があります。
・再生計画認可決定を取り消される
債務総額の1/10以上を占める債権者は、再生計画取り消しの申し立てを行うことが可能です。これが裁判所に認められ取り消しが行われると、借金の減額自体がなかったことになり債務が本来の額まで戻ってしまいます。
・訴訟、差し押さえが行われる
債務総額が1/10以下の債権者に関しては計画取り消しの申し立てを行うことができないため、個別に裁判を起こして債権回収を目指します。裁判で訴えが認められた場合は強制執行が可能となり、給与、預貯金、生命保険や不動産などの資産が差し押さえられ、最悪の場合は再生計画認可決定が取り消しとなってしまう可能性もあります。
もしも返済が滞りそうなってしまった場合は、裁判所に申し立てを行い、これが認められれば再生計画の見直しとして2年程度返済期間を延長することが可能です。条件はけっして甘いものではありませんが、期間を延長することで月々の返済額を減らすことができ、それによって改めて完済を目指すことができます。ただ、計画の見直しではどうにもならないと判断された場合には、ハードシップ免責という制度を活用して債務の全額免除が受けられる可能性があります。この制度を適用すると自己破産同様に債務が全額免除されますが、住宅ローン特則も例外ではありません。住宅ローンも対象となるため抵当権を行使されてしまい住宅を失うことになります。そして、再生計画の変更、ハードシップ免責のいずれの要件も満たすことができなかった場合には、自己破産を行って債務を免責することになってしまいます。最終的に免責を受けることができればひとまずは状況を改善できるかもしれませんが、自己破産に切り替える場合は申し立てにかかわる法定費用や弁護士および司法書士への着手金、成功報酬などの費用が発生するので、個人再生で発生した費用に上乗せして負担しなければいけません。
知ってた?実は2種類ある個人再生
個人再生を利用するための基準は以上ですが、実際に行う場合は2種類ある選択肢から合致するものが選択されます。基本的な条件に関しては同じですが、細かな部分で異なっている点もあるのでよく覚えておきましょう。区別する基準は収入の種類で、分かりやすくいうと「給料をもらっている人」「それ以外」に分けて考えます。
小規模個人再生
個人再生の種類のうちオーソドックスな方がこちらです。将来的に継続的、または反復して収入を得る見込みがあるなどの要件さえ満たすことができれば、アルバイトでも自営業でも利用することが可能です。以下、概要を紹介します。
・要件
継続的にまた反復して収入を得る見込みのある者
・計画弁済総額
最低弁済額と清算価値総額のうち大きい額
・債権者の同意
必要
・再申し立ての制限
制限なし
給与所得者再生
一方、こちらは一般的なサラリーマンのように安定した給与所得を得ている人向けの方法です。将来的に安定した収入がほぼ確実な状況から債権者の同意を省略できるといったメリットがあり、いわば小規模個人再生の特例的な位置づけにあります。
以下、概要を紹介します。
・要件
給与又はそれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、収入額の変動が少ないと見込まれること
・計画弁済総額
最低弁済額と清算価値総額に加え、可処分所得2年分のうち大きい額
・債権者の同意
不要
・再申し立ての制限
前回の手続きが給与所得者等、ハードシップ免責の場合は再生計画認可決定が確定した日から7年、自己破産の場合は免責許可決定の確定日から7年が経過していること
個人再生のメリットは大きく3つ
個人再生のメリットは、何も債務を大幅に減額できることだけではありません。司法書士や弁護士といった法律事務所へ解決を依頼し、手続き対応が始まった段階でカードローン業者、クレジットカード業者や銀行などの債権者からの督促がなくなります。督促によるストレスから一時的にでも解放されることができ、債権者と落ち着いて交渉をすすめて生活再建に向けたスタートを切れるといったメリットはよく知られたところでしょう。ただ、それ以外にも次のようなメリットがあります。
弁済額を大幅に減額できる
自己破産に関しては別として、任意整理の場合は債務自体を圧縮することはあまりできません。将来利息をカットできること、返済期間が長ければ一気に債務を相殺できる可能性があることといった効果がありますが、場合によってはほとんど債務が変化しない可能性も考えられます。その点、個人再生であれば過払い金の有無に関係なく債務を圧縮することが可能であるだけでなく、圧縮率も非常に大きいという特徴があります。
住宅や一部の資産を残せる可能性あり
任意整理の場合は対象の債務を自由に選べる反面、債務の圧縮率が高くありません。自己破産の場合は債務の圧縮率は高いものの、すべての債務が強制的に対象になってしまいます。いずれも一長一短あるわけですが、個人再生はそれぞれのメリットを良いとこ取りしたような存在です。すでに登場した言葉ですが、住宅ローン特例(住宅ローン特則、住宅資金特別条項)によって、住宅ローンだけを除外して債務を整理することができます。また、それだけでなく別除権協定によって債権者と和解が成立した資産に関しては対象外にすることも可能です。
職業による制限がない
自己破産の場合、免責許可が下りると一定期間は以下の職業に就くことが制限されてしまいます。
・宅地建物取引士
・不動産鑑定士
・弁護士
・行政書士
・司法書士
・税理士
・公認会計士
・旅行業務取扱管理者
・貸金業者登録者
・警備業者
・騎手
このほかにも多くの職業が制限されてしまいます。まったく関係がない人にとってはどうでも良いことかもしれませんが、制限される職業を生業としている人にとっては非常に大きな問題です。そのため、これを理由に自己破産に踏み切れない人も少なくないのですが、個人再生の場合はそういった制限は一切ありません。
個人再生のデメリットも大きく3つ
個人再生にはたくさんのメリットがあります。だからこそ利用する価値があるわけですが、当然ながらデメリットもあります。
官報に掲載される
まず1つ目のデメリットが、個人再生を行った事実が官報に掲載(公告という)されてしまうことです。一般的にこれを見ている人はあまりいないものの、もしも会社や関係する人間がチェックしていた場合は把握されてしまう可能性があります。「ブラックリストに載る」といわれることもありますが、実際にそういったリストがあって流通するわけではありません。ある意味では官報に掲載されることをそう表現することもありますし、直接関与した債権者が独自に要注意人物としてリストアップしたものをそう表現することもあります。また、このほかに個人信用情報機関に異動情報が記録されるデメリットもあります。異動情報とは、支払いの遅延や延滞(滞納)など不都合な事実が起こったときにその事実が記録されることで、いわゆる事故情報といわれているものです。官報の場合は5年、信用情報機関の異動情報は5~10年記録保管されるため、この間は新しいローン契約を結べなくなります。クレジットカードの取得、カードローンでの借入はもちろんのこと、場合によっては携帯電話の割賦契約も結べなくなる可能性があるので影響はけっして小さくありません。
手続き完了までに時間がかかる
基本的な手続きの流れは以下の通りです。
①申し立て
②個人再生委員と面接
③手続き開始決定
④債権額の調査、確定
⑤再生計画案の提出
⑥再生計画案に対する意見聴取、書面決議
⑦再生計画の認可、不認可決定および確定
⑧弁済決定
期間を左右する要因は、以下の2点が大きく関係します。
・個人再生委員の選任があるかどうか
・選任された場合、個人再生委員との面接があるかどうか
・積立トレーニング(履行テスト)があるかどうか
・テストが行われる場合の期間
東京地方裁判所の場合、申し立てから再生計画の認可または不認可が確定するまでに6~7か月ほどかかります。
専門家に解決を相談、依頼するための費用が必要
個人再生では非常に複雑な手続きが必要で、素人が自分の力だけで進めていくにはハードルが高いです。絶対にできないというわけではありませんが、債権者はみなプロが対応するので申し立てが失敗に終わってしまうリスクがあります。そのため弁護士や司法書士といったプロを立てて対等な状態を作った方が賢明です。しかし、専門かに依頼する場合は当然費用が発生するため、その負担が生じます。
無料相談を活用して悩みを解消することから始めよう
個人再生によって、必要な資産を残しながら金利カットの上で返済額を圧縮できるといったメリットがありますが、一方で異動情報が掲載されたり費用が掛かるなどのデメリットもあります。ただいち早く生活を再建するためには非常に有効な方法であることには違いありません。確実に状況を好転させるためには、専門化にしっかりとアドバイスをもらいながら的確に進めていくことが大切です。