個人再生と自己破産は何が違うの?どっちの方が良いの?
個人再生とその他の債務整理はどう違う?
債務整理の種類には、次の4つがあります。
- 任意整理
- 個人再生(民事再生)
- 自己破産
- 過払い金返還請求
それぞれに異なる特徴があるのですが、この中で債務の減少幅が安定して大きいものは個人再生、自己破産の2つです。
どれも選べる状態であれば問題にもならないことかもしれませんが、大きな借金に悩んでいる人にとっては非常に大きな問題につながりかねません。
ここでは任意整理、自己破産それぞれのメリット、デメリット、費用や手続きの流れなどの違いを詳しく紹介していきます。
自分に合った債務整理の方法で悩んでいるのであれば、ここでしっかりと学習しておきましょう。
個人再生と自己破産はどこが違うの?
2つの違いですが、大きなものは以下の3点です。
・債務を減額するか免除するか
・財産を処分する必要があるかどうか
・資格、職業の制限があるかどうか
細かい部分で見ればもっと多くの違いがありますが、ポイントとなるこれらの点について詳しく解説していきます。
特に大きな違いは借金が「軽くなる」「なくなる」
借金に悩む人にとっては特に気になる部分がここでしょう。直接的にストレスを大きく左右する要素だということももちろんですが、その後の生活を考えるうえでも非常に大きな影響があります。具体的には、次の通りです。
【個人再生の最低弁済額】
①債務に対する金額
・100万円未満:全額
・100万円以上500万円未満:100万円
・500万円以上1,500万円未満:1/5
・1,500万円以上3,000万円未満:300万円
・3,000万円以上5,000万円未満:1/10
②清算価値(財産)に対する金額
不動産、車や時計などの高額な動産などのうち裁判所が財産と認めるものの総額
③収入に対する金額
給与所得などの収入から住民税や所得税などの税金、保険料、最低限度の生活費などを差し引いた可処分所得2年分の金額
【自己破産】
①非免責債権
・税金や健康保険料など
・悪意、故意や過失に基づく損害賠償請求権
・夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権
・夫婦間の婚姻費用分担義務に基づく請求権
・子の監護義務に基づく請求権
・親族間の扶養義務に基づく請求権
・罰金など
②免責不許可事由
・競馬、競輪やボートレースなどの公営ギャンブル、およびパチンコなどのギャンブルで作った借金
・いわゆるクレジットカード現金化などの換金行為による債務
・名義貸しによって作った債務
・株や先物取引によって作った債務
個人再生の場合は上記の基準によって弁済額が決まります。最大で1/10まで債務を減額できますが、目安としては1/5程度までの債務圧縮が期待できるのですが、簡単に言い換えると「借金が少なくなる」のがこの方法です。これに対して自己破産の場合は、上記で記している非免責債権および免責不許可事由に該当しない債権はすべて免責対象になります。すべてではないものの、要は借金がチャラになるわけです。
家、車や貯金など残せる財産が違う
個人再生の場合、以下の特例に該当する財産については手元に残せる可能性があります。
・住宅ローン特例
いわゆる住宅ローン特則、住宅資金特別条項
・別除権協定
担保権のある債務に関して、債権者と和解が成立している
すべての債権者を平等に扱うという考え方である債権者平等の原則により、債権を区別することなく扱うことが基本原理です。ただ、自身が所有および居住している不動産に関しては特定として除外することができます。また、担保権を持つ債権者に対してこれを行使しないで欲しいという相談をし、和解が成立した場合はその資産を手元に残すことも可能です。一方、自己破産の場合は、以下の条件に該当する資産以外は基本的にすべて処分されてしまいます。
・新得財産
・差押禁止財産
・自由財産の拡張が行われた財産
・破産管財人によって破棄された財産
必要最低限度の生活費、少額の現金や資産、破産申し立て後に取得した給料などの資産は残ります。
資格や職業の制限があるかどうか
比較的よく知られている話でしょうが、自己破産を行うと一定期間は以下の職業などに就けなくなってしまいます。
・宅地建物取引士
・不動産鑑定士
・弁護士
・行政書士
・司法書士
・税理士
・公認会計士
・旅行業務取扱管理者
・貸金業者登録者
・警備業者
・騎手
まったく関係のない人にとっては何も影響はないかもしれませんが、すでに関係する職業に就いていた場合は死活問題になりかねません。制限されている期間は当然収入がなくなってしまう可能性が高く、この間の生活をどうするのかが大きな問題です。多くの場合、就業が制限される期間は半年以下ではあるものの、中には新しい仕事を探さなければいけなくなる可能性も十分に考えられます。再就職に向けた活動費などの負担も考慮する必要があります。その点、個人再生では職業が制限されないので負担は少なく済みます。
申し立てが認められない理由
すでに自己破産における免責不許可事由については紹介しましたが、個人再生でも次の条件に該当する場合などは不認可事由となり申し立てが認められない可能性があります。弁護士や司法書士などの専門家に相談したうえであればほぼ問題はないでしょうが、しっかりとチェックしておきましょう。
・将来的に継続して返済し続けられる収入がある
・債務総額5,000万円未満
・小規模個人再生の場合、債権者の1/2以上が同意している
・過去7年以内に給与所得者再生の再生計画認可決定、ハードシップ免責、自己破産手続きの免責決定を受けていない
たとえば自己破産では不許可事由となってしまった場合であっても、以上の要件を満たすことができれば個人再生が認められる可能性はあります。
手続きの流れや掛かる費用にも違いがある
個人再生と自己破産の違いは、それだけではありません。手続きの方法や掛かる費用にも大きな違いがあります。
個人再生と比べて自己破産の費用は高い!
個人再生の費用ですが、以下の点で違いがあります。
・住宅ローン特則があるかどうか
・再生委員が選任されるかどうか
債務者の意向、および裁判所による違いによって費用が変動する可能性があることをよく覚えておきましょう。あくまでも一例ですが、弁護士に解決を依頼した場合の具体的な費用を紹介します。
・着手金
住宅ローン特則あり:28万円
住宅ローン特則なし:38万円
・申し立て時費用+事務手数料
3万円
・再生委員の報酬
15~20万円
続いて自己破産の場合を紹介します。
・着手金
同時廃止:20万円
少額管財:28万円
自営および法人代表者:20~50万円
・申し立て時費用+事務手数料
25,000円
・管財費用(少額管財)
管財人費用:20万円※裁判所によって異なる
送金代行手数料:1,000円
いずれも必ず発生する費用はこのうち一部だけですが、個人再生、自己破産手続きともに素人では難しい内容が多く、少しでも解決の可能性を高めるためにも専門家に依頼した方が賢明です。一応、制度として素人でもできる仕組みはありますが、万が一にも失敗して状況を悪化させないことを第一に考えましょう。
個人再生はおおむね半年、自己破産はその半分で完了する
費用的には自己破産方が負担が大きかったですが、時間的には個人再生の方が負担が大きくなります。自己破産は裁判所に申し立てを行ってから3~4か月ほどで免責許可決定まで完了しますが、個人再生は6~7か月もの時間がかかることも珍しくありません。もっとも、申し立てに必要な書類を作成する期間などを加えるとそれほど大きな違いにはならない可能性も否定できませんが、個人再生の方が長い時間がかかってしまう理由は主に積立トレーニング(履行テスト)です。個人再生の場合、決定後は原則3年間で完済する必要があります。一応は延長もできますが、返済期間中は当人がそれぞれ管理することになるため、無理なく確実に返済していくことが可能かどうかをチェックするため、再生委員との間で半年間にわたって実際と同じように返済をし、滞ることがないかどうかを見られます。自己破産の場合こういったチェックは必要ないため、その分期間が短く済むというわけです。
個人再生、自己破産それぞれの共通するデメリットは?
2つの違いから、よりメリットが大きい方法を選択する必要性は十分に理解できたかと思いますが、いずれを選んだ場合でも共通して考えなければいけない注意点、デメリットやリスクもあります。メリットだけしか見ていないと思わぬ落とし穴に落ちる可能性があるので、十分に注意しましょう。
決定後、一定期間はローンが組めない
個人再生や自己破産を行うと、それからしばらくの間は新しいクレジットカード契約、カードローン業者からの借金などができなくなります。携帯電話を分割払いで契約するできなくなることも考えられ、非常に不便な生活になってしまう可能性が高いです。本来はそのまま生活の健全化を目指すべきですが、何かのきっかけで「どこか契約できるところはないか?」と考えるようになると非常に危険です。いかなる手段においても100%制限されてしまうというわけではないものの、信用能力が著しく低下している状況で契約可能な業者の中には、いわゆる闇金などの違法業者が少なからず紛れ込んでいる危険性があります。十分に注意しましょう。
官報や個人信用情報機関にネガティブな情報が登録される
なぜローンが組めなくなってしまうのかというと、その理由は官報および個人信用情報機関に事実が記録されるからです。個人再生にしろ自己破産にしろ、債務整理をした事実は氏名などの個人情報とともに官報に掲載されてしまうだけでなく、個人信用機関にも異動情報として登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載った」状態です。実際に物理的なリストが存在しているわけではありませんが、官報掲載および異動情報が登録されると前述の通り新しい契約を結べる可能性が著しく低下するため、実質的に契約ができない状態=ブラックリストといわれています。この状態は5~10年継続します。
どちらを選ぶかは状況によって判断する
では次に、個人再生と自己破産のどちらが適しているのかを判断する例を紹介していきます。ただ、最終的な判断は必ず専門家に相談したうえで決めることが大切です。
返済能力が一定以上あるならば個人再生
単純に残される債務だけを見ると、そのほとんどが免責となる自己破産の方が良いように感じるかもしれませんが、その分多くの制約を受けることになります。特に住宅や車などの資産を差し押さえられてしまう可能性が高いことが重要なポイントになるのですが、個人再生ならばそれらを手元に残せる可能性があります。その代わり、大幅に減額されるとはいえ返済は継続する必要があるため、そもそも返済能力がなければ認められません。「個人再生でも何とか返済できそうだけど、もう払いたくないから自己破産にする」という安易な選択が許されるほど甘くはありませんが、仮にどちらも選択できる状況で残したい資産がある場合は個人再生を優先した方が賢明でしょう。
残したい資産がある場合は個人再生
前述の通りです。価値がないと判断されれば、自己破産でも住宅および車が手元に残る可能性はあります。ただ、車ならまだしも不動産はほぼ処分対象になってしまうため、この部分を基準に判断すると良いでしょう。何としても住宅を残したいと考えていて、債務の圧縮だけで完済が見込めるのであれば個人再生を選択すると良いかも知れません。
財産うんぬんよりも免責が重要なら自己破産
そもそも返済の見込みがない場合も含め、仮に財産を失ったとしてもいったん債務をリセットした方が生活を再建しやすいのであれば、自己破産がおすすめです。価値のある資産はほとんど失ってしまい引っ越しを余儀なくされるかもしれませんが、その代わりに税金など一部の債務を除いたすべてが免除されるため、一気に状況を変えることができます。
そもそも財産がなければ自己破産
前述していますが、返済能力がある状態で自己破産を行うことはできません。自己破産を検討する時点で家と車くらいしか資産が残っていないという状況が多いですが、場合によってはそういった資産すらも残っていない可能性もあります。もしそういう状況であれば、自己破産で債務をすっきりさせていち早く生活再建に向けて歩み始める方法がおすすめです。ただし、自己破産によって資格制限を受ける影響が大きい場合は、その間の生活をどうするのかよく考え、サポートを得てから判断した方が良いでしょう。
状況に応じて最適な選択が重要
個人再生と自己破産の大きな違いは、借金が残るかなくなるかです。また、それによってどの範囲まで資産を処分する必要があるのかという違いであり、状況に応じて最適な選択が求められます。この判断に関しては必ず専門家を通して行うことで失敗するリスクを大幅に軽減できるだけでなく、よりスピーディな解決にも期待できます。ただ、いずれの方法を選ぶ場合であっても、新しくクレジットカードが作れなくなるなどのデメリットがあったり、自己破産の場合は職業が制限されることなども十分に意識しましょう。