個人事業主が個人再生するための条件と注意点!事業継続はできる?

個人事業主が個人再生するための条件と注意点!事業継続はできる?

個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。

 

それぞれ特徴や条件がことなりますが、個人事業主の場合には小規模個人再生によって借金の減額を行うことになります。

 

個人再生とは、5000万円以下の借金の人が3年から5年で返済できる計画を立てたうえで借金減額を図る債務整理の手続きです。裁判所が介入する点や、元本も減額できる点で任意整理とは異なります。また、住宅を残せる可能性があるという点で、自己破産よりもデメリットが少ない債務整理の方法ともいえます。

 

 

個人事業主のための小規模個人再生の特徴

小規模個人再生は、個人再生の中でもメリットの大きい個人再生の手法なのです。手続きに関して言えば、通常の個人再生とほぼ変わりませんが、小規模個人再生が可能な方は、こちらの手続きを選ばれることをお勧めします。

 

というのも、小規模個人再生の最大のメリットは、ケースによっては10分の1まで借金を減額することができるからです。小規模個人再生では、通常の個人再生よりも大きく借金を減額し減らさなければならないと言う制約があります。

 

このため、通常の個人再生よりも大幅なカットが見込まれます。最も、減額の限界は100万円までです。

 

法人よりも、比較的借金額が少ない個人事業主を対象として2001年に創設された制度のため、この点は致し方ないでしょう。このように、個人事業主の場合は小規模個人再生ご利用しましょう。もちろん、借金が多額の方には向いていないかもしれませんが、自分に向いていると思った方は利用すべきといえるでしょう。

 

個人事業主が小規模個人再生にするための条件

では、どういう人が小規模個人再生を利用できるのでしょうか。小規模個人再生を利用するためには条件があります。

 

まず、通常の個人再生と同様の条件があります。少しご説明した通り、借金が5,000万以下であることです。

 

そして、適法に個人再生手続き開始原因があること、申し立てが適法であることも必要です。小規模個人再生の独自の要件としては、小規模個人再生を行うことを申請すること、債務者が個人であること、債務者が将来において継続的に収入を得る見込みがあること、が必要となります。

 

個人事業主にとってこの中で1番問題となる条件は、「継続収入」の条件です。サラリーマンのように安定した収入がある方は問題ありませんが、個人事業主の場合は、不安定な経済状況の場合が多いため、「継続収入の見込みがない」と判断される恐れがあります。

 

また、債権者からの消極的同意も、最終的な認可のためには必要になってきます。消極的同意とは、債権者から意義が出ないということです。最終的に再生計画案の決議の際に、半数以上の債権者から不同意が出てしまった場合は、認可がおりないということが考えられます。

 

したがって、この点については弁護士としっかりと協議しましょう。このように、小規模個人再生には条件があります。特に、個人事業主の場合は継続的に収入を得る見込みがあると裁判所に認めてもらうことが重要となります。このことを理解しておきましょう。

 

個人再生をしても事業の継続は可能?

個人再生の手続きそのもので、これまでの事業を継続できなくはなりません。
個人事業主の方で収入の多くを個人事業から得ていた場合には、継続しないことには手続き後の安定収入を確保するのは難しいでしょう。

 

ただ、再生手続を行うことによって仕事上の関係者からの信頼を失ってしまう危険性はあります。
とくに、支払いが滞っている関係先があるとなると、これまでどおりの取引ができないことも十分に考えられます。

 

つぎに、個人再生の条件となる「継続的な収入」について詳しく見ていきましょう。

 

 

継続的収入がないと個人再生は許可されない?

では、個人事業主は不定期収入で返済不能な月があっても個人再生はできるのでしょうか。先にご説明した通り、個人再生は一定額の借金返済が条件となっています。

 

個人の返済能力に応じた一定額の返済がしっかりできるということを裁判所に証明しなければいけません。そのため「給与」または、「定期的な収入を得る見込みのあるもの」に、個人再生が認められています。そして、この条件は個人再生手続き開始の段階で必要となります。

 

これがない場合には、手続きの開始も認めてもらえません。では、実際にどのくらいのペースで返済できると証明できれば個人再生開始してもらえるのでしょうか。

 

基本的に再生計画では、認可の確定日から3ヶ月にいちど以上のペースで返済していくことになります。個人事業主などの自営業者の場合、会社員とは異なり月によって収入にばらつきがあることがほとんどだと思います。このような場合、毎月ではなくとも、反復してお金が入ってくる見込みがあれば十分です。

 

具体的にいうと、3ヶ月に1回、反復継続して収入がある場合は「定期的な収入を得る見込みのあるもの」として認められます。半年に1度という場合は少し厳しいかもしれません。

 

このように、最低でも3ヶ月に1度毎回収入を得る見込みがある場合は大丈夫です。もっとも、これを下回る場合は、個人再生手続き開始が難しいといえるでしょう。

 

収入が少ない場合には返済期限の延長は認めてもらえる?

では、仮に定期収入がない場合・少ない場合は返済期間を延長してもらえる可能性はあるのでしょうか。

 

これについては、民事再生法234条において「やむをえない理由」があり「再生計画の継続が著しく困難になったとき」に限り、最大2年間延長を認めています。

 

具体的にいうと、予期しない事情があり債務者でコントロールできないことが起こる必要があります。例えば、自分や家族の病気や事故、リストラなどです。浪費が理由では認められません。また、住宅ローン特則を利用している場合、住宅ローンの返済延長認められませんので注意してください。

 

では、裁判所に延長を申請しその結果、延長不可となった場合どうなるのでしょうか。延長不可となった場合は、当初の計画どおり返済しなければいけません。

 

しかし、延長を申請するということは、債務者もかなり行き詰まった状況であることがほとんどです。そのため、裁判所に延長計画が認めてもらえなかった場合は、他の方法を検討する必要があります。例えば、債権者と個別に任意整理をする、自己破産に移行する、ハードシップ免責を利用する、などです。

 

ハードシップ免責は条件が厳しく実際に利用するのはかなりハードルが高いといえるでしょう。したがって、どうしても返済できない場合は、任意整理や自己破産などの債務整理の方法をとることが一般的です。このように、延長してもらうことは可能です。しかし、身勝手な理由で延長を認めてもらうことができません。延長不可となった場合は、自己破産の申立てなど他の債務整理の方法を検討しましょう。

 

個人再生によって減額される金額

ここで、小規模個人再生に定められている最低弁済額についてお話ししましょう。

 

まず、個人再生では、最低弁済額以上の計画弁済総額を返済しなければいけないというルールがあります。個人再生は、返済が前提として借金が減額されるからです。

 

また、個人再生の目的は債務者の経済的更生にあります。一定額以上の弁済をすることにより、債権者に納得してもらわなければいけないのです。最低弁済額の算定には基準があります。

 

最低弁済額は「債権者から異議の出なかった債権の総額と評価済み債権の総額」、そして「基準債権額の総額」から判断されます。

 

具体的には、以下が最低基準額となります。

・基準債権額が100万円未満場合、その基準額が最低基準額
・100以上500万円未満の場合、100万円
・500万円以上1500万円未満の場合、基準債権の5/1
・1500万円以上の場合、300万円
・3000万円以上5000万円以下の場合、「債権者から異議の出なかった債権の総額と評価済み債権の総額」の10/1

 

このように、小規模再生では返済しなければいけない基準が定められています。実際に自分の最低基準額がいくらになるかは個別事情にもよるため弁護士などの専門家に聞くことをお勧めします。

 

 

個人事業主が個人再生をするためのポイント

個人事業主の個人再生の場合、小規模個人再生が利用すると、大きな減額を見込むことができます。

 

また、3ヶ月に1度のペースで収入がある場合は個人再生は可能です。病気をした場合は、延長も認められます。手続きは自分でもできますが、個人事業主の個人再生は経験豊富な弁護士に依頼するほうがメリットは多いでしょう。

 

費用は、40万から60万ほどかかりますが、すべてを代理してくれるので便利です。

 

個人事業主が個人再生を行う流れ

個人再生手続は、以下のような流れで進んでいきます。
それでも手続きは、3ヶ月からら6か月程度で終了するでしょう。

 

・弁護士に相談後、委任契約締結
・受任通知の送付、取引履歴の開示請求
・各種調査と申立書準備後に裁判所に申し立て、
・個人再生委員の選任・打ち合わせ、手続開始決定、
・債権届出や債権調査、報告書の提出、異議申立て
・再生計画案の作成、提出、決議
・裁判所の認可決定後、弁済の開始

 

個人事業主の個人再生で必要になる書類

では、個人事業主自身が自分で必要書類を入手することはできるのでしょうか。

 

個人再生の裁判所の申し立てには、数多くの必要書類を入手し記入・提出する必要があります。主に必要な書類は以下の通りです。

 

・申立書
・陳述書
・債権者一覧表
・家計表
・財産目録

これらは、裁判所から取り寄せることができます。

 

 

またこれ以外にも、個人で用意する必要な添付書類があります。
具体的には、申立人を特定する書類、財産関係を示すための書類、債務に関する書類、住宅ローン特則利用者に関する書類です。具体的には、以下のような添付書類が必要となります。

 

・申立人を特定する書類-戸籍謄本、住民票など
・財産関係を示すための書類-給与明細書、通帳のコピー、車検証のコピー、保険証、固定資産評価書、賃貸借契約書など
・債務に関する書類-借用書、返済予定一覧表など
・住宅ローン特則利用者に関する書類-ローンの契約書、連鎖予定一覧表、間取り図など

 

これらの入手先は、それぞれ異なります。住民票などは市役所で入手することができますが、その他の書類はご自身で管理保管されていることと思います。

 

このように、申立てに必要な書類は基本的には裁判所で入手することができます。もっとも、添付書類などは自分自身で収集しなければいけません。必要に応じて市役所などを利用しましょう。

 

個人事業主の個人再生は弁護士へ依頼する方が得?

個人事業主が、個人再生をする場合に弁護士へ依頼することのメリットは、何なのでしょうか。まず、個人再生は自分でもできます。しかし、法律の素人が自分で全ての法律の知識を把握した上で、裁判所に個人再生申立書を提出し、すべての債権者と交渉するのは大変なことです。

 

しかし、弁護士に依頼するとすべてをお任せすることができます。申立書の作成はもちろん、債権者などの利害関係人全ての交渉を誰代理してくれます。実際の手間が省けるのもちろんのこと、精神的にも不安な解消されることにより安定するでしょう。

 

また、弁護士が受任通知を債権者に送った時点で、すべての取り立てが停止します。これは、自分ではすることができないため、弁護士に依頼する大きなメリットの1つと言えるでしょう。弁護士以外にも、司法書士という選択肢もあります。

 

しかし、司法書士は書類作成を代行してくれるだけであり、債権者の交渉などは任せることができません。これは司法書士の業務ではないからです。費用面では、弁護士より司法書士のほうがコストがかかりませんが、全てを代理してもらえるという意味では、最終的には弁護士のほうがメリットが大きいと言えるでしょう。

 

また、仮に裁判になった場合、司法書士は裁判を受け持つことができる認定司法書士であったとしても140万円以上の案件は裁判をすることができません。

 

このように、弁護士と司法書士に依頼するのとでは大きな違いがあります。以上から、個人事業主が弁護士に依頼するメリットはたくさんあります。すべての代理をお願いしたい場合は、弁護士に依頼するほうがメリットが多いといえるでしょう。

 

個人再生の弁護士への依頼費用の相場

では、弁護士費用の合計の相場はどれくらいになるのでしょうか。これについては、おおよそ40万から60万くらいかかるでしょう。

 

個人再生の場合、弁護士が拘束される時間が長く、どうしても費用がかかってしまいます。住宅ローン特則をお願いすることで、5万円-10万円余分にかかってしまうこともあります。

 

また、「費用をいつ払うか」についてですが、後払いの事務所がほとんどです。では、弁護士事務所によって費用が大幅に変わることがあるのでしょうか。これについては、それほど大きな違いはないでしょう。

 

最も、個人再生を多く取り扱っている弁護士事務所を選ぶようにしましょう。個人再生に慣れている弁護士事務所とそうでない弁護士事務所とでは、個人再生の成立についてスムーズに進むかどうかに違いが出ます。というのも、弁護士事務所にはそれぞれ専門があるためです。債務整理を専門に扱っている弁護士事務所のほうがさまざまなケースをみているため、個別ケースにあった最適な解決策を導き出してくれるでしょう。

 

弁護士費用は、結構なお金がかかってしまいますので、どうせなら専門に扱っている弁護士事務所に依頼すべきです。このように、弁護士費用は高額です。もし、どうしても支払えない場合は、分割払いにできないか相談してみましょう。事務所によっては分割払いを認めてくれる弁護士事務所もあります。