個人再生のメリット・デメリット|任意整理・自己破産との比較表あり

個人再生のメリット・デメリット|任意整理・自己破産との比較表あり

最大で10分の1になるという借金の大幅な減額が可能なうえ、住宅を手放すことなく債務整理ができる個人再生。

 

しかし、利用までの道のりはそう簡単なものではありません。

 

この記事では、個人再生のデメリットについてのほか、官報に載ったらどうなるのかというような、さまざまな疑問に関することなどを、詳しく見ていきたいと思います。

 

 

個人再生のデメリットの3つのデメリット

①官報への記載|載るとどうなるの?

この記事をご覧の方で、官報を実際に見たという方はどのくらいおられるでしょうか。

 

そもそも官報ってなに?という方が大半だと思います。官報とは、国が発行する新聞のようなもので、行政機関の休日以外、毎日発行されているものです。何が掲載されているかというと、法律・政令・条約のほか、会社法の決定事項などについてです。

 

この掲載事項に、個人再生をはじめとする債務整理を行った人の情報も含まれているのです。個人再生のケースだと具体的には、手続きを行った裁判所・日時、債務者の氏名・住所です。

 

これらは「再生手続開始」「書面による決議に付する旨」「再生計画認可」の決定がなされた時の3度にわたって、それぞれ掲載されます。

 

官報に掲載されると会社や近所にバレる?

「官報に載る」ということは、債務整理のデメリットのひとつとしてよく聞かれるものです。

 

官報というなじみのない固そうな言葉に、よからぬ想像をかきたてられたりもします。これを見られたらもう人生おしまいかも…と深刻に受け止めてしまう方もおられるかもしれません。

 

けれども、官報を一般の方が見る機会は滅多にありません。官報を見る人はとても限られていて、ヤミ金業者のほか信用情報機関・役所の税担当者といった、プロの人たちくらいのものです。

 

最近はインターネットでも検索できるようになりましたが、膨大な情報の中からあなたの個人情報を発見するのは至難の技です。官報から周りの人にバレる心配はほぼありません。

 

ただ、ヤミ金業者には警戒が必要で、新たなカモを探すため鵜の目鷹の目で見ています。「債務整理中でも貸します」とか「官報の情報を消します」などといった内容のダイレクトメールなどが送られてきても、決して手を出さないようくれぐれもご注意願います。

 

②個人再生をするとブラックリストに載る

個人再生をはじめとする債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報として登録されます。ちまたでよく聞く「ブラックリストに載る」というものです。
あくまでもブラックリストというのは俗称ですが、ブラックリストに載ることで次のようなデメリットがあります。

 

ローン申込みやクレジットカードの新規発行ができなくなる

貸金業者は、信用情報機関の登録情報を確認して、事故情報の登録があるケースでは貸付を行いません。

 

また、現在利用中のクレジットカードも利用できなくなります。個人再生に関する情報は、株式会社日本信用情報機構(JICC)で5年間、全国銀行個人信用情報センター(KSC)で10年間掲載され続けるので、この期間中は、新規の借入ができなくなるのです。

 

ただし、この5年ないし10年というのは、個人再生の期間中に延滞や滞納がない場合に限ってのこととなります。個人再生は自己破産と違って、返済が完了するまでは債務が終了とならないためです。

 

途中で支払が停止すれば、掲載期間は延長されてしまうので、くれぐれも支払いがとどこおらないよう気をつける必要があります。

 

③個人再生の手続には時間がかかる

個人再生の手続きは大変複雑で、多くの時間と費用が必要となります。個人再生手続きは、平成13年4月1日に民事再生法を個人向けに簡略化したものとして施行されたものです。

 

裁判所に申立書類を提出して手続きを開始するのですが、厳格に定められた手続きに沿って、申立に必要な書類をもれなく用意するのは困難で、素人が個人で行えるようなものではありません。

 

また、必要な費用も高額となり、裁判所の経費のほか、弁護士費用として50万円以上を用意しなくてはなりません。

 

弁護士などの専門家に依頼しても手続きが終了するまで半年程度かかる、大変面倒なものなのです。この手続きの複雑さが、個人再生の最大のデメリットといえるのではないでしょうか。

 

 

 

個人再生をするための2つの条件

住宅ローン以外の借金総額は5000万円以下

個人再生は、一般の個人の利用を前提として民事再生を簡略化した制度で、民事再生法13章の規定に従って行われます。

 

この規定において、個人再生手続きの開始決定の要件として定められているのが、住宅ローンをのぞいた借金が5000万円以下であるということです。この条件を満たさなければ、個人再生は適用されないのです。

 

また、個人再生では、債務を原則3年間で分割返済しなければなりません。そして、返済は3ヶ月に一度まとめて行います。

 

たとえば、5000万円の借金なら500万円に減額されますが、これを3年で返済する場合、返済額は約42万円ずつの12回払いとなります。多くのケースではさらに住宅ローンの返済も追加されるため、現実問題としてこれ以上の金額の返済は、破綻しない再生計画として認められないでしょう。

 

安定した収入があること

個人再生を利用すると、手続き後の3年間(または5年間)にわたって、債権者への返済をとどこおりなく継続しなければなりません。

 

個人再生手続きにおいては、返済の支払いを継続できるかどうかが非常に重視され、この点についてはかなり厳しく審査されます。債権者への支払いが可能である十分な収入を、安定して得られ続けることが認められなければ、個人再生は利用できないのです。

 

また、この収入の名義人は、個人再生の申立本人であることが必要です。収入のない専業主婦の場合、たとえ夫に十分な収入があっても個人再生を利用することはできません。もちろん失業中の人や生活保護を受給中の人も利用できません。

 

 

個人再生に向いている人

住宅ローンの残っており自宅を手放したくない人

個人再生においては、「住宅資金特別条項」という制度があります。この制度は、住宅ローンの残っている自宅を処分することなく、その他の借金を整理することができるというものです。

 

債務整理のひとつである自己破産の場合では、破産者の財産は自宅を含めて換価処分され,債権者への返済にあてなければなりません。

 

また、他の債務整理の手段である任意整理の場合なら、借金の大幅な減額が望めないため、住宅ローンを含めた毎月の返済額は、支払いが不可能な額となってしまいます。

 

本来、債務整理は、債務者の経済的更生のために行われるものであることを鑑みて用意されたのが、この「住宅資金特別条項」です。個人再生によって、住宅ローン以外の借金については大幅に減額されるので、住宅ローンの返済を継続することができます。

 

従って、自宅を競売に掛けられることはなくなり、これまで通り住み続けることができるのです。注意したいのが、自宅の価値より住宅ローンの残額が多くないのであれば「住宅資金特別条項」のメリットが得られないことと、すでに住宅ローンを返済し終えた場合にはそもそも「住宅資金特別条項」を利用できないということです。

 

自宅の価値の方がローン残額より高い場合に、自宅を残して個人再生したいなら、清算価値保証という制度により自宅の価値以上の金額を返済しなければなりません(清算価値保証とは、債務者が現在保有している財産価値の総額分は、最低限債権者に支払わなければならないというものです)。

 

つまり、個人再生のメリットである借金の減額効果が小さくなってしまうのです。

 

安定した収入と返済能力がある人

個人再生の場合、原則として債務の減額は5分の1まで可能となります。借金の総額と、それぞれに対応する最低弁済額は以下のとおりです。

  • 100万円未満→借金全額
  • 100万円以上500万円未満→100万円
  • 500万円以上1500万円未満→借金額の5分の1
  • 1500万円以上3000万円未満→300万円
  • 3000万円以上5000万円以下→借金額の10分の1

 

このように、借金が多いほど減額が多くなります。個人再生は、多額の借金がある人ほどメリットが大きい制度といえるのです。

 

しかし、大幅な減額の見返りとして、個人再生は減額後の債務を原則3年(または5年)で返済しなければなりません。

 

個人再生が認可されるためには、裁判所においてこの点を厳しく審査され、安定した収入を得られる人でないと、個人再生を利用することができません。

 

以上のことから、個人再生は、多額の借金はあるけれど、収入が安定していて、支払い能力が高いという人に向いている制度なのです。

 

ギャンブルや浪費が原因の借金で自己破産できない人

個人再生では、借金の理由は問われません。

 

ギャンブルや浪費、株やFXなど投資の失敗といった自己責任による借金であっても大丈夫なのです。

 

この点において、借金の理由を厳しく問われる自己破産とは大きく異なります。借金がゼロになる自己破産の免責は受けられないかもしれないという人でも、個人再生で借金を減額できれば債務整理が可能となる場合があるので、あきらめてしまう前に検討する価値は十分にあります。

 

 

個人再生のデメリットのまとめ:複雑な手続きと厳しい利用条件に注意

債務整理のなかでも、手続きの複雑さと利用条件の厳しさが際立っている個人再生。

 

弁護士や裁判所など、これまで縁のなかったところとのやりとりは、思った以上に大変です。やっと個人再生が認められても、再生計画案どおりの返済ができなくなると個人再生手続は強制終了となります。

 

減額された債務は元の額に戻ってしまい、これまでの努力は水の泡です。個人再生の利用を考えるなら、なによりも返済を優先した堅実な生活を続ける決意と、安定した収入の維持が大切でしょう。