借金の時効援用にデメリットはない!?実は簡単な援用手続きと費用相場

借金の時効援用にデメリットはない!?実は簡単な援用手続きと費用相場

お金を返さなくてもいい?時効の援用にデメリットはある?

時効の援用は正式名称を消滅時効の援用といい、借りたお金を返さなくてもいいと認められるための手続きのことを指します。そんな手続きがあるなら誰も時効まで借金を返さないという事態が起こりそうですよね。しかし、時効の援用に至るまでの道のりは決して簡単ではありません。手続き自体は簡単ですが、注意点を守らなければ時効を成立させることすらできません。失敗せずに時効を成立させるために必要なことや、時効の援用によって生じるデメリットについて解説します。

 

 

借金の時効の援用で生じるデメリットとは

借金には時効がある

金融機関や貸金業者からお金を借りると返済期限までは業者から督促を受けることはありません。しかし、返済期日を過ぎると途端に返済を迫る督促状が届きます。債権者には債務を取り立てる権利がありますが、もし権利を行使しないまま長期間が過ぎるとどうなるのでしょうか。債権者は債務者から借金を取り立てる権利を放棄したとして、消滅時効が成立します。つまり、借金を返さなくてもよくなるわけです。時効の援用とは、消滅時効を援用する意志を債権者に対して内容証明郵便で通知する手続きのことです。借金を返さずに時間が経過するだけでは時効は成立せず、消滅時効の援用が認められた時点ではじめて返済義務がなくなります。

 

【時効の援用のデメリット1】簡単に引越しや夜逃げはできない

借金を滞納し始めると債権者から督促状が届きます。引っ越しや夜逃げで住所不定となり郵便物が届かない事態が長く続くと、債権者は裁判所に訴えて時効期間を延長させることができます。貸付業者は簡単に借金の取り立てをあきらめたりしません。引っ越しや夜逃げを行なって取り立てから逃げたとしても、債権者が裁判所に訴えた事実があれば時効期間が延長されて時効の成立は難しくなります。現実的には取り立てから逃れるために債権者から知られていないどこかに潜伏しなければならない期間が必要になり、自宅にいることは難しくなります。場合によっては実家、親戚、友人宅などを転々と隠れて過ごすことになるでしょう。借金から逃げていることを周囲に知られたくない場合は野宿などでやり過ごさねばならないこともあるかもしれません。

 

【時効の援用のデメリット2】遅延損害金の発生で借金額が増加

返済期日を過ぎても借金を滞納し続けると、滞納した日数に応じて遅延損害金が発生します。つまり、逃げている間中、借金の総額がふくらんでいくことになります。時効の成立が失敗すればふくらんだ借金を返済していかなければならなくなり、返済の負担は大きくなります。借金の取り立てから逃れる生活は過酷です。自宅に借金の取り立てが来るようになれば家族にも迷惑がかかり、家族と離れて暮らさざるを得ない状態になるでしょう。債権者に会社が知られている場合は給料を差し押さえられる可能性もゼロではありません。雲隠れしている期間中も債務者本人や家族の人生は続いていきます。金銭的な余裕がまったくない状態で周囲からの信頼もなくし、孤独な日々を耐えなければなりません。そんな精神的に追い詰められた状況を長く続けていける自信があるなら、借金返済の可能性に目を向けた方が建設的だといえます。

 

【時効の援用のデメリット3】時効成立後は簡単にローンを組めなくなる

時効の援用が認められれば借金の返済義務は消滅します。しかし、借金を踏み倒したという事実は事故情報として信用機関に登録されます。時効の援用が適用されると、自己破産をしたときのように官報に氏名が記載されたり自己破産が承認されるまでの間一定の職業に就けないなどのデメリットはありませんが、少なくとも5年間は事故情報が記載されます。5年を経過した後も借金を踏み倒した金融機関やカード会社で再びローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることは難しいと考えていいでしょう。信用機関からの情報が消えても、金融機関や貸付業者の社内のデータベースに情報が残っていないという保証はないからです。

 

 

時効の援用の大きなデメリットは成功しにくい点?

時効援用を認めてもらうには時効を確実に成立させることが必要

時効によって借金をなくすことは簡単ではありません。時効を成立させるための大きなポイントが時効が成立するまでの期間です。時効の期間はどこからお金を借りたかによって異なります。たとえば、消費者金融や銀行からお金を借りた場合の時効は5年、貸金で生計を立てていない個人的な友人や親戚などから借金をした場合は10年間が時効です。この期間の違いは債権者が商人であるか否かによって決定されます。時効は債権者に返済を開始した日からカウントします。たとえ少額であっても1度でも返済をしていれば、その返済を行なった日から数えて5~10年間の月日が時効を成立させるために必要です。最後の返済日を覚えていないという場合、業者に連絡をとって情報開示しようと考えるかもしれませんが、債権者に一度でも連絡をとってしまうと借金返済の意志があるとみなされ、時効が中断されます。そのため、時効が成立しているかどうかを安全に確認するには専門家の助けが必要です。

 

時効の援用が適用されなかった場合は

たとえば、時効が過ぎていると思って手続きしようとしたら時効の期間が延長されていたという場合は当然ながら時効の援用が適用されません。すると、滞納していた分の遅延損害金や利子を含めて借金の返済を行なうことになります。そのときになって「逃げずにコツコツと返済していればよかった」と考えても後の祭りです。

 

誤って時効援用をしてしまったときに生じる問題について

時効の援用は債権者宛に消滅時効を援用する意志があることを内容証明郵便で通知するだけです。そのため個人でも簡単に行なうことができそうですが、債権者が時効の完成を阻止するために裁判を起こしていた場合は時効期間が延長されます。借金の額が多ければ多いほど貸金業者がただ黙って時効が成立するまで待つことはありません。そんなことを許していては貸金業が成立しなくなります。専門家に時効援用の手続きを依頼すると、債権調査が行なわれ債務の詳しい内容が明らかになります。どの貸金業者から、いつ、いくら借入たのかわからなくなってしまったという場合でも安心です。調査の結果、時効が成立しているものがあれば時効援用の手続きに入ります。

 

時効の中断事由があれば時効の援用は失敗する

債務者の行動によっては時効が中断することがあります。どんなことが時効の中断事由にあてはまるのでしょうか。
・債権者が内容証明郵便で請求書を送っている。
・債権者が裁判所に訴えて時効の延長手続きを行なっている。
・債権者による差し押さえが行なわれている。
などが時効の中断事由にあてはまります。裁判に債務者が参加していなかった場合でも、欠席裁判として債権者側の言い分が認められます。取り立てから転々と逃げ回っている間に裁判が行なわれていたというケースもあり得ます。

 

一度でも返済すれば債務の承認で時効は中断する

電話や書面などではやく返済を行なうように迫られることがあります。そんなとき、借金を返す意志があることを伝えたり、支払いを少し待って欲しい旨を訴えると支払うべき借金の存在を承認したとみなされ、時効が中断します。また、取り立てがやって来たときに1円でも渡してしまうと返済したことになり、その日から時効は振り出しに戻るという点がポイントです。

 

 

時効の援用にはメリットがあるのか

借金が消滅することはメリットです。しかし、債権者が裁判所に訴えれば時効は延長され、振出しに戻ります。5~10年なら逃げきれると安易に考えてしまいがちですが、場合によっては何十年も世間から隠れて生きていかねばならない事態に陥ります。逃げ続けるよりも無理のない範囲で返済を行なっていった方がまともな生活を送ることが出来るのではないでしょうか。

 

支払いに困ったら債務整理を視野に入れよう

借金の返済が困難な状況になっていると後ろ向きな考えが頭に浮かんでしまいがちです。債務整理を行なうと今後の人生が不利になったり家族が不利益を被ると考えている人も多いかもしれませんね。しかし、債務整理を行なえば返済計画を立て直して新しい人生のスタートを切ることができます。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などがあり、借金の返済状況や借入額などによって方法が変わります。たとえば、任意整理は裁判所を通さずに債権者と債務者の間で行なわれ、借入が長期に及んでいる場合には利息上限法に基づいた利息の引き直し計算などを行ない、正しい総額を導き出して支払いに無理のない範囲で返済していく方法です。それぞれにデメリットはあるものの、借金を延滞し始めてしまった時点で信用情報は傷つきます。返済を行なわなければ事故情報が記載されたままです。支払いの計画が破たんした時点で収入を増やせる見込みがないなら、早い段階で債務整理を考えた方が結果的にメリットは大きいといえます。

 

借金から逃げるよりも専門家に相談した方がメリットがある

弁護士や司法書士に手続きを依頼すれば、将来利息分がカットされたり自分で交渉しなくて済むなどのメリットがあります。信用機関に5~10年間は事故情報が記載されるというデメリットはありますが、専門家に手続きを依頼した時点で借金の取り立てがなくなることは大きなメリットです。返済を行なうため仕事に集中することが出来ます。

 

 

時効の援用の手続きを成功させるポイント

時効援用手続きは内容証明郵便で送る

借金の時効が確実に成立していることがわかっているなら債権者に内容証明郵便で時効援用の意志があることを伝えましょう。具体的には下記の項目を満たした内容を記して送付します。
・借入した日
・借入した総額
・債務者の住所氏名と生年月日
・時効の期間(5年あるいは10年)
・時効が完成していることと、消滅時効の援用を行なう旨を明確に記載する
内容証明郵便は、横書きの場合1行につき20字、1枚26行までというように書式が決まっています。パソコンで書類を作成する他、市販されている内容証明用の原稿用紙に手書きする方法があります。内容証明郵便を送るには同じ内容のものを3部用意することが必要です。3部とも同じ差出人と住所を記載しましょう。

 

時効の援用を専門家に依頼する

個人では時効の延長が行なわれているか、あるいはいつからいつまでが時効の期間か判断することが難しいため、時効の援用に詳しい弁護士や司法書士に依頼することがおすすめです。多くの法律事務所で無料相談の場を設けています。まずは無料相談を利用して専門家に相談しましょう。相談の際は借入日、借入額、借入れた貸金業者への返済状況などを伝える必要があります。支払い明細などがあれば持参するといいでしょう。

 

専門家に依頼した際の時効援用の手続きの流れ

専門家に時効援用の手続きを依頼すると、時効が完成しているかどうかの調査が始まります。最後に取引をした日から十分な時間が経過しているかどうかを調査し、時効中断事由がなかったかどうか徹底的に調べ上げます。債務者本人が債権者に連絡すると時効が中断してしまうため、弁護士や司法書士が変わって調査を行なうことになります。その後、時効が完成していることが明らかになれば時効援用通知書を作成して債権者に送付し、債権者に通知書が配達されれば時効の援用の完成です。もし、通知書を送付後に債権者から何らかの連絡がきた場合はすぐに専門家に連絡しましょう。

 

 

時効の援用のデメリットについてのまとめ

時効援用のデメリットは個人では時効が中断していないかどうか調査を行なうことが難しい点と、そもそも時効まで逃げ切る点が難しい点だといえます。途中で少額でも返済を行なったり、債権者が裁判所に訴えたりすれば時効が中断されたり延長したりします。時効が完成していることが明らかであれば内容証明郵便を利用して消滅時効を援用する旨を通知すれば時効は完成します。時効の期間を正確に把握することと、時効の中断事由に該当する行動を行なわないことがポイントです。

 

 

時効の援用は裁判所に訴えられた時点で難しくなる

債務者が借金を滞納するようになると貸金業者は少額ずつでも返済を行なうように求めてきますが、まったく支払う姿勢を見せない悪質な債務者については裁判所に訴えることもあります。債権者が借金の督促を行なっても債務者が返済を行なわないと、債権者は裁判所に訴えることができます。裁判所からの通知を無視し続けるあるいは裁判を行なって債権者の訴えが認められれば債権者は強制的に債務者の財産を差し押さえることが可能です。また、債権者は裁判所に訴えて時効を延長することもできます。つまり、時効が近くなったら延長を求めて新たに10年間時効を延長することができるというわけです。

 

債務整理のデメリットにはどんなものがある?

どうしても債務整理に踏み切れないという人向けに、債務整理のデメリットを簡単に解説します。債務整理を行なうと借金を減額あるいは免除できる代わりに信用情報機関に事故記録が記載されます。いわゆるブラックリストに載るという状態になります。債務整理の方法によって事故記録が記載される期間は5~10年と異なることが特徴です。期間が過ぎればローンを組んだりクレジットカードを作ったりしやすくなりますが、同じ金融機関やクレジットカード会社の利用が難しい場合もあるという点をしっかりおさえておきましょう。