自己破産を一部だけすることはできるのか?
債務の一部だけを自己破産することはできる?
ローンや借金の支払いがどうしてもできず、キャッシングを重ねるなどして多重債務に陥るとヤミ金にも手を染めてしまう可能性もあります。
そんなときに、法的手続きを踏んで自己破産を選択する手段を検討することもあるでしょう。
その際に自己破産のメリットやデメリット、その特徴を知っておくことが大切です。
ここでは自己破産手続きの債務対象と債権者平等の原則という2点に注目してご説明します。
まず自己破産をするということは、実際に自己破産を申請する方が抱えている負債すべてがその対象となります。
例えば銀行からの借入、マイホームのローン、携帯電話の本体代など借りている債務はすべて含まれます。
また個人的に仲良しの友人や親族、家族間からの貸付も原則的に該当することを知っておく必要があります。
これは2つ目の債権者平等の原則という考えが根本にある為です。
法律事務所の弁護士さんなどからの説明にもよくあることですが、同じ債務者がいくつかの会社や個人に対して債務をもっている場合、その債務者はすべての債務者に平等となる対応、返済をすべきであるということです。
もう少しかみ砕いて説明すると、住宅ローンを組んでいるB社には自宅が大事なので支払うが、クレジットカード会社A社の債務は免除してもらいたいということは不可能なのです。
金額の大きさや、借りた時期、個人的な感情などで不公平な対応をしてはいけないという決まりがあることを知っておきましょう。
まとめると、自己破産する場合は、すべての債権者に平等に接する必要があることから、全ての債務を免責してもらうのが基本です。
一部だけの債務整理をしたいなら任意整理?
前述でもご紹介したとおり、すべての債務を免責申請する自己破産ではなく、一部のみ債務整理をしたいという方が選択するべき「任意整理」についてご説明します。
任意整理というのは、債務関係にある相手との交渉により借金を減額することをいいます。
この方法は、裁判所などの場において行う手続きではありません。ただし、トラブルを避けるためにも当事者同士で話し合いをもつというケースは非常に珍しいものです。
そこで、両者の間に弁護士事務所や司法書士事務所などが介入します。
つまり交渉を行うのは弁護士もしくは司法書士となります。
これは出資法と利息制限法という2つの法律に基づいて借金返済できる現実的な選択だとも言えます。
ほとんどの金融業者がこの2つの法律に基づいて利息を決めていますが、消費者金融の中には法外の利息を請求していることも少なくありません。
実際にどちらの法律でも利息の上限が定められています。
例えば、利息制限法だと10万円未満の借入に対しては20%、100万円未満は18%、100万円を超えると15%と定めています。
出資法では29.2%が上限利息率です。
これを超えている場合は、その利息に関しては支払い義務がない為、利息減額により支払い可能な額に調整できます。
また任意整理を行うことで、支払い計画を立て月々の返済額などの話し合いがなされた後は以後の利息が請求されない方法も選択可能です。
債権者平等の原則があるのに、何故一部の債権者との任意整理が可能なのかと疑問に思う方も多いでしょう。
しかし、任意整理においても債権者平等の原則はもちろん適用されます。
しかし、双方が個別に対応することから債権回収が出来ることを選ぶのか、前者の平等を選ぶのかの判断は債権者に委ねられます。
そこで、債権者が専門家を入れて債権回収を望むこともその権利として有効なのです。
専門家に任意整理の依頼をする際の注意点
ではいよいよ任意整理を依頼しようとする際に必読の注意点をご紹介します。
まず相談先ですがあなたが借り入れている1社あたりの額により異なります。その分かれ目が1社あたり140万円です。
ただ以前はこの140万円と言う額に対する解釈が日本司法書士会連合会と日本弁護士連合会によって相違していましたが、現在は1つの会社からの借入額が140万円を超える場合は弁護士に、それ以下の場合は司法書士へとはっきりしています。
つまり複数の会社からの借入があり、その総額が140万円を超えている場合は司法書士で問題ありません。
その為、ご自身の債務状態を借入会社ごとに明確に計算する必要があります。
ちなみに依頼に要する費用は司法書士の方が安価なのが現実ですが、借金問題をこじらせない為にも正しい選択を行いましょう。
また任意整理の場合は一部のみの債務整理を行うことがほとんどですが、弁護士や司法書士への債務状態の報告はすべて行ってください。
つまり、どの会社からいくら借り入れがあると、すべてを内緒にすることなく伝えることです。
保証人が親族の場合、迷惑をかけたくないという人間の心理や家を手放したくないという気持ちがあるのは誰しも同じでしょう。
ただし自分の利益や関係性だけを優先させた任意整理は失敗に終わることもあります。
そこで、まずは専門家にすべてをオープンにすることからはじめるのがポイントです。
借金の一部だけを対象にすることのメリット
自己破産という選択ではなく、借金の一部だけを対象にして任意整理を行うことの3つのメリットに着目して解説していきます。
まず1つ目は住宅ローンや自動車ローンを対象から外すことが出来るという点です。
自己破産後の体験談などを見ると、全ての債務を帳消しにしてもらうメリットがある反面、次のような後悔を口にしてる方が多いのです。
「大切なマイホームを手放さないと行けなくなった、仕事に欠かせない自動車を手放さざるを得なかった」これは、住宅に対しては抵当権、自動車には所有権留保が付与されていることが原因です。
その為、返済が出来ないとなった際に、それらを失うのは当然なのです。
しかし任意整理では、どのローンを対象にするかを選べるため、そのリスクを回避できます。
2つ目は連帯保証人などへの影響を最小限にできる点です。好意で保証人になってくれている方に迷惑がかかるのはどうしても避けたいと願うものですね。
実際に支払いが出来ないとなると保証人に返済依頼がいくのはもちろんのこと、保証人自体の信用状態も悪化させかねません。
その為、保証人を立てているローンを対象から外せば、その心配がなくなります。
3つ目は、任意整理から利用したいクレジットカードを外すことで、しばらくは使用することが可能であることです。
自己破産にしてもクレジットカードがその後、使用できない、新たに作れないというデメリットがあるのは周知の事実でしょう。
しかし、任意整理において対象外とすることで次のカードの更新時期までといった一定の期間は使用することが可能です。
ただし、これはあなたの与信情報が更新されていないから事実上可能なだけであって、弁護士などからは勧められる方法ではありません。
ある意味、違法な逃げ道を作ることで借金癖がつき、闇金などに手を出す危険性をはらんでいる為です。
ちなみに過払い請求の場合は信用情報が登録されることがないため、クレジットカードが使えるというケースがあることも書き添えておきます。
これは借入件数や借入額に応じて過払いになっていないのかどうかをシミュレーションすることで簡単に確かめられます。
このようなノウハウを知った上で、弁護士などに相談することは、はじめての任意整理の秘訣だと言えるでしょう。
借金の一部だけを対象にすることのデメリット
任意整理を選択すると自己破産のように官報に掲載されることはありませんが、ブラックリスト入りというデメリットもあります。
また借金の一部だけを整理することには他にもデメリットがあるのでご紹介しておきます。
1つ目は、任意整理して支払い計画も立てたにも関わらず、結局支払いが行えず、遅延してしまうことです。
基本的に2回程度の遅延であれば、待ってくれることが多いのですが、それを超えると残りの債務の一括返済を請求されることになります。
これは任意整理を交渉する際に、債権者との話し合いの中で決められます。
相手も譲歩する代わりに、必ず支払ってもらうという保証が必要である為、期限の利益喪失を定めています。
それが破られた場合、再度の任意整理に応じるのは債権者としてもほぼありえません。結果、自己破産せざるを得ないという結末になりがちです。
もう1つ知っておいていただきたいのが、任意整理でも支払いが出来ず自己破産に追い込まれた際に、自己破産申請に影響があるのかという点です。
1つネックとなるのが過払い金として返還されたお金です。これは資産であると見なされ、自己破産申請が受けられない事由となりがちです。
ただし、この返済額もすでに使用してしまい、手元にないとなれば返済に充てられないことから、免責不許可事由とされ、免責されます。
自己破産したけど借金を一部返済したい
借金の一部返済は免責不許可事由になる
自己破産の条件として、債権者平等の原則がある為、偏波弁財は原則的に認められていません。
偏波弁財というのは、特定の債権者に対してその債務を債権者の利益の為、また別の債権者が損失を与える目的で、返済を優先的に行うことを指します。
任意整理においては、双方が交渉して行う示談事である為、問題になりませんが、自己破産手続きにおいては大きな影響を与えてしまいます。
不誠実な対応をしているという捉え方をされる為、破産免責不許可事由として破産法にも定義づけられています。
つまり、自己破産手続きを行っているにもかかわらず、その免責がされる前に、懇意にしている方には返済をするというような不平等なことをすると、自己破産自体が免責されない、つまり認められない事態となるのです。
自己破産後の家族や友人への返済は?
自己破産後も親しい友人や家族といった間柄の方には、少しでも返済を行いたいと思ってしまうものです。
あの人は自己破産したから、支払ってこないというのは分かっていても人間の心理として信頼関係に深く傷をつけたままというのは逃れたいものです。
そこで知っておきたいのが、自己破産の申請を行い免責が確定した後の自主返済の法的位置づけですね。結論から言うと、自己返済は問題ありません。
それは自己破産というのが、支払うべき責任が消滅したにすぎず、その後支払いを自主的に行うことに関しては影響しない為です。
また自然債務という形となり責任はありませんが、債務は残っている為、支払うことはおかしなことではありません。
ただし1つ注意点は、自己破産免責確定後であっても、契約書などで支払いの約束をすることは法的に問題が生じます。
誠意と言う意味でそれを出したいという気持ちと、相手からも求められることもあるかもしれません。
しかし、これを行うと免責不許可事由に接触してしまう事から、免責が取り消されるケースもありますので注意してください。