夫婦のどちらかが自己破産!もう片方にも影響はある?
自己破産を検討している中には、配偶者や子がいて「家族に迷惑が掛かるかもしれない…」と二の足を踏んでいる人が少なからずいます。
自分一人なら悩む必要はなくとも家族のことを考えると、どうしても思いきれないという状況を打開するために必要なことは、自己破産について正しい知識を身に付けることです。
ここでは、配偶者がある場合に自己破産をした時の影響について説明するとともに、具体的にどうすれば良いのかを説明していきます。
借金問題解決に有効な自己破産や債務整理、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのかを知れば最適な選択肢も見つかるでしょう。
自己破産をすると夫や妻にどんな影響がある?
以降、それぞれの状況に対する回答を記していくことになりますが、まずは最初に決定的なことを示しておきましょう。「自己破産は個人の債務のみが対象であり、当然その影響も個人限定のものであるため配偶者や子には基本的に影響は出ない」となり、基本的には直接的な影響はありません。これを踏まえた上で具体的な状況ごとにみていきましょう。
分かりやすく大きな問題がクレジットカードのこと
人によっては現金主義でローンを利用したくないという人もいますが、大半の人は日常生活の中で少なからずローンを利用しています。特に気軽に使えるローンであるクレジットカードは使用頻度が多く、使えなくなってしまうとすると強い不便さを感じるでしょう。クレジットカードは契約者本人とクレジットカード会社との契約なので、仮に夫が自己破産をしたとしても妻が自身の名義でカードを取得している場合はそのまま使い続けることができます。ただし、夫名義の家族カードを妻が使っていた場合は使用停止となります。これに伴い新しく妻がクレジットカードを取得しようとすることもあるでしょうが、その場合は特に同居(同一家計)かどうかが重要なポイントです。仮に夫が自己破産をしたとして、同居している妻は自身に何の問題がなくともクレジットカードの新規作成ができなくなる可能性があります。最終的な判断はクレジットカード会社により、作成できるところもあればできないところもありますが、できない可能性が高いと考えておいた方が良いでしょう。補足情報として、別居している息子がクレジットカード取得する場合を紹介しておきますが、この場合は何の問題もありません。別居している状況であれば別家計であることが明らかなので、息子自身の信用や返済能力などによって結果が決まります。
共有財産の扱いはどうなる?
結婚すると財産の扱いは特融財産と共有財産に分けることができますが、このうち自己破産で処分対象となる可能性があるのは共有財産のみです。仮に夫が自己破産をするとして妻の財産がどのように扱われるのかは次の通りです。
・妻が結婚前から所有していた不動産や高額な動産/処分対象外
・妻が結婚前から所有していた土地に夫が家を建てた/建物のみ処分の対象
・妻が結婚後に働いて得た所得/処分対象外
・自身と夫の収入から妻がコツコツと貯めてた貯金/処分対象となる可能性あり
・夫と妻が共に支払っているローンのある不動産/処分対象となる可能性あり
妻が妻の権限において占有できる財産とみなされるものに関しては、夫が自己破産をしたとして何の影響もありません。ただ、夫婦共有財産としてみなされる場合は処分の対象となる可能性があり、自己破産決定に伴い売却されてしまう可能性があります。共有財産の場合、仮に不動産の所有権を夫と妻がそれぞれ50%ずつ持っているとすると、処分対象となるのは夫が所有している50%だけです。しかし、現実的に不動産の半分だけを処分するということは非常に難しいため、実質的には不動産自体を処分するしかなくなります。
破産者名義の財産は処分対象になる
自己破産時に処分の対象となる財産は、破産者本人名義のものと共有財産の一部に限られます。そのため、夫婦共働きの状況で取得し支払いを共有している不動産は処分の対象として該当する可能性が高いですが、妻が独自に取得した不動産に関しては処分の対象外となるわけです。所有者(債務者)と使用者が異なる状況として多い自動車でいうと、夫がローンを組んで妻や子供が使用している状況であれば処分の対象となりますが、妻や子供が独自に購入したものであれば処分の対象にはなりません。ただし、妻や子供が連帯保証人となっている場合はそれぞれが所有している資産で相殺する義務が生まれるますが、破産者名義の車でも初年度登録から7年が経過しているものに関しては対象外となります。要は資産として価値があるかどうかがポイントであり、処分したとしても借金返済の足しにならないような財産については処分されずに済みます。
自己破産前に名義を変えて免れることは可能?
破産者名義の資産は処分されるが他人名義のものならば処分されないとなると、「自己破産の申し立てをする前に譲渡してしまえば良いのでは?」という考えが浮かんでも不思議ではありません。しかし、これを行うと財産隠しと捉えられてしまう可能性があり認められないどころか、免責不許可事由(自己破産を認めない理由)に該当して自己破産申立て自体がご破算になってしまうこともあります。自己破産を行うに当たって裁判所に提出する資産目録を基に管財人が処分するかどうかを決定するわけですが、仮にバレずに免責が決定したとしても追跡調査などでその事実が後から発覚した場合は詐欺罪に問われてしまいます。財産分与などを目的としてあらかじめ計画的に財産を譲渡しているような状況であれば、突発的な理由による破産申し立てがあったとしても資産隠しとは認められないケースも考えられますが、ポイントはその行為が故意かどうかです。
親の自己破産は子供にどんな影響を与える?
両親のいずれかもしくは両方が自己破産を経験していたとして、それが何らかの形で子供にも影響を及ぼすのかどうかは親として無視できないポイントでしょう。中にはこのことが理由で自己破産せずに踏みとどまっているような状況も多くありますが、具体的にどういった影響があるのかを正しく理解しておくことは大切です。これまでに「自己破産の影響は基本的に債務者本人のみ」だと説明してきましたが、当然子供への影響も直接的なものは一切ないといって良いでしょう。たとえば親が自己破産をしたから子供が学校からこの事実を指摘されたり、周囲に知られてイジメを受けることなどはまずありません。ただし、次のような影響の可能性はあります。
・自己所有の住宅を処分するに当たって引っ越しの必要性が出る
・車を処分するので送迎ができなくなる
・子供のために組んでいる学資保険が解約される
・奨学金が借りられなくなる
配偶者の保証人になっている場合は?
「旦那が家を車を購入する際に保証人になって欲しいと頼まれた」「うちの主人が事業を始めるに当たって銀行の保証人なった」という状況は珍しくありませんが、このような状況では夫(配偶者)の返済義務が妻にも適用される可能性があります。ポイントは保証人になっているという点ですが、特に「連帯」かどうかが重要です。単なる保証人(単純保証人)の場合や、債務に対する保証人が複数いたり連帯保証人がいる場合、妻は「まずは連帯保証人に請求してください」「他の保証人と分割して払う」といった主張が認められています。ところが連帯保証人だった場合はそういった権利を持っていないため、夫の債務をそのまま妻が負う形になります。このような状況では妻も返済ができない状況である可能性が高く、結局は夫婦それぞれが自己破産を行うような結果になることが多いです。
配偶者が自己破産をするなら離婚した方が良い?
自己破産を検討している人の多くが考えることが、「離婚をした方が良いのではないか?」ということです。妻や子供に迷惑を掛けたくないという思いからこのような考えに及ぶわけですが、この選択で得られるメリットは何もありません。確かに共有財産や間接的な影響で家族に迷惑を掛ける可能性はありますが、離婚をしたからといって明らかにそういうリスクがなくなるのかというとそうではありません。仮に妻や子供が保証人になっている場合は保証義務は継続して残りますし、財産についても名義が破産者本人ならば妻や子供が使用していても差し押さえの対象になってしまいます。正しい手続きの下で財産分与を行ったとしても財産隠しと捉えられてしまう可能性が高い以上、自己破産を理由に離婚をする選択にはメリットがないといえるわけです。もしもそういった状況を隠して離婚をするにしても、妻の生活費、慰謝料や養育費などを支払うことになる状況を考えるとメリットといえるメリットが見当たりません。
夫婦ならば一緒に自己破産した方が良い?
自己破産をする上で離婚が良い選択肢といえないのであれば、夫婦ともども自己破産や債務整理をした方が良いのかという話になります。たとえば夫に1,000万円の借金がある専業主婦であれば、夫が自己破産をして済むだけの話ならば何の問題もありません。一時的に夫の社会的信用は失われてしまうかもしれませんが、その影響を如実に感じる瞬間はクレジットカードが使えなかったりローンが組めなかったりするときくらいのものです。その他の現金一括でできる買い物で不便さを感じることはありませんし、自動車も現金一括で購入できれば問題ありません。しかし妻が(連帯)保証人になっているなどで夫婦間で借金がゼロにならない場合、残される債務いかんによって妻も自己破産をした方が良い状況もあれば、任意整理や個人再生が良い状況もあります。夫が返済不能に陥っている以上は妻も返済できない状況に陥っているはずなので、夫の自己破産によって債務が妻に移行してしまうのであれば自己破産または債務整理を検討した方が良いでしょう。
夫婦で自己破産をするならいくらかかる?
自己破産で必要な費用ですが、個人で行う場合で30~70万円かかります。これは、管財事件となるか同時廃止となるのかで必要なお金は大きく変わりますが、あくまでも一つの自己破産手続きを完結するために必要な費用であって、夫婦がそれぞれ自己破産を申し立てる場合は別途必要になる費用があります。たとえば夫婦ともに同時廃止で済む場合ならば総額60万円ほどですが、一方が少額管財となれば80万円ほど、双方が少額管財ならば100万円ほどという具合で金額は変わるので状況に応じた判断が必要です。また、この内訳として法定費用とは別に弁護士や司法書士といった専門家に依頼するための費用がありますが、実際にこれがいくらかかるのかは相談する弁護士または法律事務所によって異なります。弁護士に依頼する方法よりも司法書士に依頼する方法の方が費用的には安くあがる可能性が高いものの、手続き自体を自分で行わなければならないなどのデメリットもあるため、一概にどちらの方が良いとは判断できません。これを判断するためには候補をすべて把握し、直接相談をするなどして優先順位を判断する必要があります。幸いにも無料で相談に応じているところがあるので、まずは一度相談してみると良いでしょう。
一方に収入があるともう一方は自己破産できない?
度々触れてきたことではありますが、自己破産はあくまでも個人単位で完結する制度です。保証人など第三者に関係する状況もありますが、それは副次的な影響であって主要なものではありません。よって、配偶者に収入があったとしても当人に返済能力がないと判断されるのであれば、自己破産は問題なく認められます。
自己破産は自己完結!基本的に周囲に影響は及ばない
配偶者が自己破産をするような状況になっても、基本的には当人だけで完結します。一応、家、車、銀行口座や学資保険などで家族に影響が及ぶ部分もありますが、(連帯)保証人になっていない限りは個人で完結させられる制度です。もし、(連帯)保証人になっているなど個人で問題が完結しない場合は、同時にもう一方が債務整理や自己破産を行って生活再建を目指すと良いでしょう。