借入歴が長い人は要チェック!グレーゾーン金利の判別方法と過払い金の計算方法
過払い金はどんな契約で発生する?グレーゾーン金利とは?
消費者金融や信販会社、銀行などの金融機関でお金を借りると当然のように利息が発生します。みなさんはなぜ利息が付くのか考えてみたことはありますか?貸金業者はお金を貸すことを業務として行っているので、お金を貸して利息を付けることで利益を出しているのでは?という答えを出す人もいるでしょう。もちろん利益として利息を付けている面もあるのですが、実は利息には分割払いの返済に伴うリスクを埋め合わせる意味合いも持っています。金銭の貸借契約では、借主(以下債務者といいます)は一括払いではなく定められている返済期間で、分割で支払っていくという猶予を与えられています。これを「期限の利益」と言います。この権利があるため、貸主(以下債権者といいます)は「都合が出来たから明日まとめて返してね」と一方的にいうことは認められていません。しかし返済期間が長くなればなるほど債権者側は、もしかしたら債務者が突然音信不通になって借金を回収できなくなるかもしれないというリスクを一方的に背負わなくてはなりません。そのため法律では契約者双方が平等であるように、債権者側のリスクに対しての補填として、貸したお金に対して利息を付けることを認めているのです。利息は債権者が契約の時に決めることができるのですが、大昔には金利についての制限やルールが決められていなかったため、とても高い金利を付ける業者がたくさんいて債務者を苦しめていました。国はお金の貸し借りについての問題や争いを解決するために、金銭の貸借に関する利息の上限を定めるようになりましたが、民法上の法律と刑法上の法律で大きな違いが生じていました。民法上の利息制限法では上限金利を超える利息は無効であったのに対し、出資法では上限金利を超える利息は刑事罰の対象となっていたため、貸金業者によっては出資法の上限金利で経営を行っているところも多くありました。出資法はサラ金と言われるようなもともと超高金利の業者を取り締まるため、時代の流れに伴って徐々に上限金利を引き下げてきたのですが、それでも利息制限法より上限金利が高い時代が長く続きました。こういった背景から利息を制限する法律の矛盾が生じてしまっていたのです。そして近年この矛盾から生まれた利息制限法を超える利息については、過払い金と呼ばれて過払い金請求をすることで債務者が返還請求を行えるようになりました。この記事では過払い金がどのような状況で発生するのか、発生している場合はどのように計算すれば過払い金の金額を調べることができるのかなどを詳しく解説しています。あなたの契約は大丈夫ですか?一度契約内容を見直すきっかけにしていただけたらと思います。
まずはグレーゾーン金利をしっかり理解しよう
なぜ利息制限法と出資法という2つの法律ができてしまったのかは、前述したような背景があるのですが、実際グレーゾーン金利と呼ばれている金利はどういったものを表しているのでしょうか。まずはそれぞれの法律の上限金利をみてみましょう。
・利息制限法の上限金利…貸付額10万円以下=20.0%、貸付額100万円以下=18.0%、貸付額100万円以上=15.0%
・出資法(2010年以前)の上限金利…貸付額に関わらず29.2%
このように出資法と利息制限法の上限金利には幅があり、利息制限法の上限金利以上、出資法の上限金利以下の金利はグレーゾーン金利と呼ばれています。グレーゾーン金利は刑罰の対象とはならないものの、契約上無効ではないかという債務者側の主張と、契約時に金利を承諾して任意に支払われた利息だから有効だとする債権者側の主張がぶつかり、その議論は最高裁で争われるまでに発展しました。利息制限法を超える金利については、債務者から任意で支払われたものだとする債権者側の主張は「みなし弁済」と言われています。議論が最高裁にまで持ち込まれたため、当時マスコミも取り上げて報道するなどして世間の注目を集めました。最高裁はみなし弁済が成立する要件を厳格に解釈すべきとの判断により、グレーゾーン金利は無効と判決を出したことでこの議論は幕を下ろしました。それを機にこれまで利息制限法以上で契約をしていた債務者による過払い金の返還を求める訴訟が相次ぎ、社会的に貸金業者が主張していた、いわゆるみなし弁済は認められなくなりました。実際にはこれまでの契約でもみなし弁済の要件を満たしていれば、みなし弁済が認められるケースもあるのですが、実際には要件をすべて満たしているケースは少なく、ほとんどのケースでは成立しなかったといった方が正確かもしれません。
グレーゾーン金利は現在撤廃されている
最高裁の判決以後の混乱の中で、矛盾していた法律は是正されて現在では出資法・貸金業法が改正されているため、グレーゾーン金利は撤廃となりました。出資法の上限金利は29.2%から20.0%に引き下げられ、上限金利を超えるものについては刑事罰の対象となっています。細かい事をいうと、出資法は今でも利息制限法のように貸付額に応じて上限金利が決められているわけではありませんので、10万円以上100万円未満では2%、100万円以上では5%の差が出てしまっています。ただしこの部分の金利に関しては、貸金業規制法で規制されることになり、その間の金利で貸付を行った業者は行政処分の対象となっています。そのため法改正が完全施行された2010年6月18日以降では、利息制限法を超える貸付は事実上できなくなりました。そして法施行以後の契約では、みなし弁済制度も完全に廃止され、利息制限法を超える貸付については違反とみなされるようになったのです。
過払い金請求訴訟が相次いで起こった理由
グレーゾーン金利が世間の明るみにさらされたことで、多くの債務者が過払い金返還請求を相次いで行い、流行ともいえるほどに過熱化しました。その結果消費者金融の最大手として名を馳せていた「武富士」は倒産に追い込まれ、同時期に顧客情報漏洩事件や取引履歴の改竄事件などの発覚で西日本では大手だった三洋信販は、業務停止命令を受けそのまま経営を立て直せずプロミスと合併するなど世間的にも大きな影響を及ぼすこととなりました。大手以外の三和ファイナンスやニッシン信販などの中小規模の消費者金融会社も次々と倒産し、現在残っているレイクやアコムなどは銀行と提携して生き残りを図り、倒産までには至らなかったものの経営難を強いられることになりました。ここまで激化した背景には、世間的に利息制限法の認知度が低かったことがあげられると思います。契約をした時に、利息制限法を超える契約が無効だと知らないまま出資法に基づいた契約を交わし、厳しい取立を受けて返済してきたことが、実はその金利は法的には無効ですと言われれば、だまされた!という気持ちが出てしまうのも仕方がないことのように思います。長年苦しんできた人たちにとっては、最初からそれが分かっていれば苦しまなくてよかったのですから。それに拍車をかけたのが、法律事務所や司法書士事務所のCMです。無関係だろうと思って何もしていなかった債務者たちも、もしかしたら自分も返してもらえるのでは?という思いから次々に法律事務所に相談に訪れるようになりました。そして実際多くの人が返還請求に成功して、これまで払いすぎていた利息を取り戻したのです。元々消費者金融はサラ金とも呼ばれた超高金利時代の悪いイメージを払拭できていませんでしたから、マスコミも大いに取り上げて世間的に叩かれやすい存在であったことも要因の一つとも言えるのではないでしょうか。
契約金利はグレーゾーン金利?過払い金が発生しない具体例
ここまでの流れで、法律が改正される前から借金をしていた人の中には、過払い金請求まだしていない!と焦ってしまった人もいるでしょう。しかし法律が改正される前に契約をしていたすべての人たちに過払い金が発生しているというわけでもありません。古くから借入を受けている人でもグレーゾーン金利で契約をしていなければ、過払い金は発生しません。契約当初の書類や当時の明細書などが残っていれば、そこに記載されている金利を一度確認してみてください。昔の明細書には金利が記載されていない可能性もありますので、そういった場合は直接貸金業者に問合せをするか、契約当初からの取引履歴を発行してもらうと良いでしょう。
貸金業者がグレーゾーン金利を採用していない場合
貸金業者の中でも、法改正以前から利息制限法に則って上限金利を定めていた業者があります。貸付を行っている業者と聞くと消費者金融がまず思い浮かぶと思いますが、実際には銀行や信販会社なども融資を行っています。銀行では目的ローンやカードローンがありますし、信販会社では割賦販売といういわゆるショッピングローンやクレジットカードに付随するキャッシング枠があります。こういったものも融資に当てはまるのですが、銀行は融資以外でも利益を上げることが可能な業種で、融資だけで利益を得ていた消費者金融とは異なり、契約金利も低いものが多く利息制限法に違反する金利を採用している銀行はあまりありませんでした。信販会社やクレジットカード会社でも、本業はクレジットローンがメインでキャッシングローンは付随して行っている事業だったため、比較的低金利で融資を行っていた業者が多く、過払い金が発生していないケースがあります。念を押して言うようですが、過払い金が発生しているのは、利息制限法を超えるグレーゾーン金利で契約していた場合に限られるということを念頭に置いておきましょう。
自動車ローンや住宅ローンで過払い金が発生しない理由
また金融商品によってもグレーゾーン金利が採用されていなかったものがあります。保証人を付けた契約や不動産などを担保に融資を行う金融商品は、低金利が売りですから契約金利が1桁台というのも珍しくありません。序盤で説明したように利息は分割払いに伴うリスクを補填する意味合いがありますが、それは無担保無保証の商品の場合で連帯保証人を付けている商品であれば、万が一契約者本人が音信不通になっても保証人から債権回収が見込めますし、担保があれば担保物件の売却などにより債権回収が可能です。そのため高い利息で保障をしなくても、他にリスクを回避する方法がある商品は低金利での貸付が可能でした。こういった理由から自動車ローンや住宅ローンなどの低金利商品は、グレーゾーン金利での契約ではないケースが多いので、過払い金が発生している可能性はほぼないと言えます。
初めてお金を借りた時期にもよる!
グレーゾーン金利が撤廃される法改正直前には、貸金業者も自発的に金利の見直しを行っていました。最高裁判決が出て以降、利息制限法を超える契約が今後無効になるという流れを見越して、早めに対策を行った業者もありました。そのためちょうどその時期から借入を始めた人は、すでに法改正後の適法金利で借入を受けている可能性があります。これに関しては各貸金業者が一斉に契約金利の見直しを行ったわけではないので、いつ以降とはっきり断言することはできませんが、法改正以降に契約をしたのであれば間違いなく過払い金は発生していないはずです。法改正間近で契約をしている場合は、過払い金が発生していたとしても少額で、専門家に依頼する報酬や手間を考えると過払い金請求をするメリットは少ないかもしれません。とはいっても法改正前に契約をしたのであれば、現在の契約金利がグレーゾーン金利ではないか再度確認をしておきましょう。適法金利でなければ行政処分の対象となるので、業者も法改正以降は利息制限法を超える金利になっていないか神経を尖らせてチェックしているはずですが、何らかの処理漏れで契約金利が適法金利になっていない可能性もないとは言えません。
過去にグレーゾーン金利の契約があるなら計算してみよう!
グレーゾーン金利で契約をしていた場合、大体いくらくらいの過払い金が発生しているのかは、自分である程度計算することができます。しかし過払い金を計算するためにはこれまでの取引履歴の詳細なデータが必要になります。契約当初からの明細書を全て保管しているのであれば、その内容を元に計算します。明細書を保管していなかった人は貸金業者に申し出て、取引履歴開示請求を行いましょう。業者によっては取引履歴の開示請求方法が、電話をするだけで発行してくれるところや取引履歴開示請求書の提出が必要なところがありますから、まずは電話で問い合わせをして開示請求手続きについての案内を受けましょう。手続きが完了すれば数週間で取引履歴が郵送されてくると思いますので、その内容を元に計算していきます。しかしデータが膨大であれば一つ一つ計算していくのは大変ですから、利息制限法に基づく法定金利計算ソフトや再計算ができるソフトをダウンロードした方がよいでしょう。ソフトでは借入日・取引日・借入金額・返済額・利率などを表にデータを全て入力していくだけで、最終的に過払い金がいくら発生しているのかを計算することができます。システムそのものは利息制限法を適用した場合の利息と、実際に支払った利息の差額を算出していくものなので、ソフトをダウンロードしなくても知識があればExcelなどを使って自分でシステムを作ることもできます。自分で計算するのが面倒くさい人や、計算後過払い請求を貸金業者に申し立てる予定がある人は、司法書士事務所や弁護士事務所に取引履歴を持っていけば正確に計算してもらうことも可能です。
過払い金の請求期限に要注意!時効が過ぎたらどうなるの?
過払い金の請求をする上で注意しなければならないのが、消滅時効です。過払い金の消滅時効は法律の規定で10年と定められていて、過払い金が発生していたとしても10年以上経過しているものについては、貸金業者に過払い金請求ができなくなってしまいます。この10年というのは、「最終取引日」から起算することになっていますので、取引履歴を確認して最終取引日が平成18年とか平成19年の人は注意してください。それ以前の人でもまた今度でいいやと置いておくといつのまにか時効が来ていて、返還請求が出来なくなってしまうので、過払い請求をしようと思っている人はなるべく早めに手続を開始しましょう。もし消滅時効の期限が間近に迫っている状態であれば、貸金業者宛に内容証明郵便で過払い金請求をするという意志表示をしておきましょう。これは消滅時効を6か月先延ばしにする方法で法的には「催告」と言います。催告をしてその間にすぐ手続きをすれば、間に合う可能性が高くなります。ただこの方法は一時的なその場しのぎにすぎませんから、先延ばしにした6か月以内に手続をしなければ、6か月が経過した時点で時効は成立してしまいますので、できるだけ早くに行動を開始した方が良いでしょう。
グレーゾーン金利の判別方法と過払い金の計算方法まとめ
ここまで解説をしてきましたがいかがでしたか?今一度グレーゾーンについてまとめておきましょう。まずグレーゾーン金利とは、利息制限法と出資法の上限金利の違いにより発生した金利で、利息制限法の上限金利を超える利息を過払い金と言います。過払い金は貸金業者に請求することで返還してもらうこともできますが、過払い金の返還請求には最終取引日から10年という時効があります。またグレーゾーン金利での契約でない場合は、過払い金が発生していないケースもあります。あなたの契約は大丈夫でしたか?ご自身で過払い金の発生や金額などが分からない、手続方法が分からないという場合は一度司法書士や弁護士に相談をすれば対応してもらうことができます。法律事務所によっては無料相談を受け付けているところもありますから、心配な方はそういったサービスを活用して気軽に相談してみてくださいね。