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任意売却と競売の特徴の違いを知って最適な手段を選ぼう!

住宅ローンがあっても任意売却はできるの?

住宅ローン返済中に何らかの事情により不動産を売却しなくてはいけなくなった場合、不動産を住宅ローンの残高よりも高い価格で売却できればとくに大きな問題はありません。
しかし、売却金額が住宅ローンの残高よりも下回ってしまう場合は、その差額について原則一括返済をしなければなりません。
このような状況になることをオーバーローンといいます。

 

住宅ローンの支払が困難になって不動産の売却を検討しているケースでは、差額を一括返済できるほどまとまった金額を用意するのは難しいでしょう。
しかしそのまま住宅ローンの返済ができない状態が続けば、借入先の金融機関は不動産を競売にかけて債権回収することになってしまいます。
そうならないために、専門家に手続を依頼してオーバーローン状態の不動産を売却する「任意売却」という方法をとることができます。

 

なぜ競売を阻止する必要があるのか、任意売却をすることでどのようなメリットがあるのか、この違いについて分かりやすく解説していきたいと思います。

 

任意売却と競売の大きな違いにはどんなものがある?

マイホームを手放さなくてはいけなくなった場合に、不動産を任意売却するのと競売になるのとでは大きな違いがあります。
任意売却は通常の不動産売買と同様に市場価格の相場に近い金額で売却できますが、競売の場合は市場価格の50~80%で落札され、とても安い金額で売却されてしまうことが多いのです。

 

住宅ローンの返済が厳しくてマイホームを手放すケースでは、売却価格は高いに越したことはありませんよね。
特にオーバーローンの状態では、安い価格で不動産が売却されてしまうと売却後の住宅ローンの残債も多く残ってしまうことになり、不動産を売却しても経済状況が改善しない可能性もあります。
任意売却と競売では、売却価格が最も大きな違いですが、それ以外にもいくつかの違いがあります。まずは次の章で任意売却と競売それぞれの特徴から確認していきましょう。

 

任意売却と競売の特徴を把握しよう

任意売却の特徴

オーバーローンの状態で不動産の売却をする場合、債権者と債務者の間で差額の返済について一括返済ではなく、分割で支払っていけるよう交渉するものが任意売却です。

 

任意売却に応じるかどうかは法的な規定はありませんから、債権者の裁量次第となります。そこで債務者は専門家に依頼して債権者との間に入ってもらい、任意売却に応じてもらうように交渉をします。
債権者の承諾を得ることができれば、任意売買といえども通常の不動産売却ができるため、前の章で挙げたように市場相場に近い価格で売却をすることができます。

 

債務者も普通の売主と変わらないため、買主と引越し時期などの調整も行うことができます。
引越しの準備ができてから明渡しをするので、マイホームを手放す辛さはあるものの通常の引越しと変わりません。
そのため近所の人にも経済状況が悪化したことはバレにくいです。子供がいて現在と同じ学区内に引っ越す場合でも、住み慣れた地域に住み続けることも十分可能です。

 

競売の特徴

債権者となる金融機関は、全額(完済までの利息も含める)の返済が見込めない場合、保証会社に代位弁済という形で債権を回収し、代位弁済を受けた保証会社は抵当権を行使して、不動産を競売にかけて処分する流れになります。

 

競売後に残る債務については連帯保証人に一括請求されるので、結果的に連帯保証人に多額の負債を押し付けてしまうことになります。

 

競売は強制的に債権回収をすることだけを目的に不動産を売却しますから、市場価格よりも安い売却価格になってしまいますし、債務者の都合はほぼ考慮されず、競売で落札者が決まればすぐに退去しなければなりません。住宅ローンの支払が出来なくなって競売にかけられている経済状況では、引越し先の契約も引越し費用を支払うのも難しいでしょう。しかしそんな都合は落札者には関係ありませんから、場合によっては無理やり追い出されたり、裁判所に不法占拠として「不動産引渡命令」を申立てられる可能性もあります。落札された不動産に居座ることは法的にも認められませんから、裁判所からの命令に従わなければ強制執行が行われます。最悪の場合警察まで立ち会うほどの大騒ぎになりますから、近所の人にも当然バレてしまいますし、無理やり着の身着のまま追い出されるのは、かなりの精神的ダメージとなるでしょう。追い出された後は住居がない状態ですから、その瞬間から「住所不定」の状態になってしまうのです。もちろんそこまで無理やり居座らなければ大事になることはないのですが、形はどうあれ頑張って手に入れたマイホームを追い立てられるように退去しなければならないことに変わりはありません。

 

任意売却と競売を比較して違いを知ろう

ここまでの特徴でも十分違いについてははっきりしているかと思いますが、任意売却と競売の違いはこれだけにとどまりません。任意売却の場合、競売よりも高めの売却価格が見込まれることから、債権者との交渉次第では不動産の仲介手数料や滞納している固定資産税、マンションの管理費・修繕積立費、さらには引越し費用まで工面できる可能性があります。この利点もかなり大きいのではないでしょうか。
不動産売却後の残債務についても競売であれば、一括請求されますし契約者本人が支払えない場合は連帯保証人が一括返済を迫られることになるのです。連帯保証人は契約者本人と同じ債務を負っていますから、請求を拒否する権利はありません。住宅ローンの差額は決して少ない金額ではありません。それがある日突然自分の借金となって降りかかってくるのです。連帯保証人として契約をした時点でそのリスクはご存知のはずですが、実際多額の借金を背負う負担は大変なものでしょう。連帯保証人になってくれる人は友人や親戚など親しい間柄なのでしょうから、できる限り迷惑はかけたくないと思っていらっしゃるのではないでしょうか?任意売却なら、売却後の残債についても契約者本人が支払っていくことになるので、連帯保証人にかかる迷惑も最小限に抑えることができます。
任意売却と競売の違いは、売却価格・引っ越し費用・債務者の立場・精神的ダメージ・引越し時期・連帯保証人への負担、このすべてにおいて任意売却の方が債務者にとって有利な条件で解決を図ることができるのです。

 

 

任意売却の流れを確認しておこう

任意売却の手続きがどのような流れで進むのか、順を追って確認していきましょう。

任意売却手続きを専門家に相談

債務者が任意売却の手続きを弁護士・司法書士・不動産業者・任意売却業者などに依頼します。状況の把握をするため、住宅ローンも含めたローン残高やマンションの管理費・修繕積立金・固定資産税の支払状況、家庭の収支状況など面談を重ねながら専門家に伝えます。より詳細に専門家に把握してもらう方が、手続きがスムーズに進行しますし手続き後のサポート面でも有利な状況に導いてもらうことができるため、プライベートな部分も含め洗いざらい話すことになります。話やすく信頼できる専門家を探すことが、任意売却を成功させる重要なポイントとなります。

 

専門家による状況の把握と不動産の価値を確認

債務者の認識と事実に相違がないか、現況を調査して確認が行われます。また不動産についても評価額の査定と、市場価格の相場の確認により不動産の売却価格が暫定的に決まり、それを元に債権者と交渉するための返済プランも含めて書類の作成が行われます。
・専門家と債権者の間で任意売却についての交渉
作成した返済プランの書類を元に住宅ローンの債権者と、任意売却に関する承諾を得るための交渉が開始されます。その際不動産の売却価格から任意売却にかかる諸経費、引越代を捻出できるか債務者にとってできる限り有利な条件で合意を得られるように、調整しながら交渉を重ねていきます。

 

不動産の販売活動

仲介業者により不動産会社のデータベースに物件情報が登録され、インターネットや新聞、不動産情報誌に売り情報を掲載して買主を募集します。購入を検討している人による物件の内覧などが行われ、購入希望者が見つかったら引越し時期などについて交渉し、同意が得られれば購入希望者が住宅ローンの融資を受けるため金融機関の審査を受けます。
・売買契約締結
無事に購入希望者が決まったら、債権者に最終的な同意を得て売買契約の締結が行われます。売却価格から引越し費用の捻出ができる場合には、手付金から引越し費用を受け取ることができます。

 

引っ越し準備

引越し先を探して引越し準備に入ります。専門家によっては依頼者の希望を元に、新居探しや賃貸借契約をサポートしてくれるところもあります。サポートを希望する場合は、初期の相談の時に確認しておきましょう。

 

任意売却に関する決済

売買契約締結から1ヶ月~1ヶ月半で売却費用が支払われ、住宅ローンの返済に充てる金額や任意売却に関係する諸経費の支払が行われます。債務者の引越しが完了したら物件を受け渡し、任意売却の手続きが全て完了します。

 

 

任意売却ができる不動産の条件はあるの?

任意売却は誰にでもどんな状態でもできるというものではありません。何らかの事情により、今後住宅ローンの返済が厳しくなりそうだなという状況であれば任意売却ではなく、まずは金融機関に相談して返済期間の延長をしてもらうことができないか交渉してみましょう。そこでリスケジュールに応じてもらえれば、一番ダメージが少なくて済みます。リスケジュールに応じてもらえない場合や、それだけでは解決に至らない場合には、任意売却を検討しなければなりません。
任意売却ができる条件の一つに、住宅ローンの支払が滞っていることが挙げられます。住宅ローンの返済日に入金がないと金融機関は督促状を発送します。最初のうちは「支払日に入金の確認ができませんでした。まだ入金されていない場合は入金をお願いします」というような割と穏やかな内容の請求ですが、そのまま延滞が続くと「期限の利益の喪失」というキーワードが入っている督促状が届きます。任意売却ができるのは、この督促状が届いていることが一つ目の条件です。

 

競売が開始されたらもう手遅れ?

実は任意売却ができる条件にはもう一つあります。それは競売の落札者が決まっていないことです。
前述した利益喪失の督促状が送られてからも支払がされないと、金融機関は「催告書」という種類の手紙を送ります。「これ以上支払しないなら、裁判所に申立てをして強制執行に入りますよ」という内容の手紙で、その後も支払がされないと、不動産が競売にかけられることになります。債権者が裁判所に申立てをすると、債務者に競売開始決定通知が届きます。そして執行官や評価人が家にやってきて、不動産の価値を調べ始めます。競売開始決定から2~4ヶ月すると、入札期間が始まり原則8日後に開札が行われ、落札者が決定します。この開札日の前日までが法律上、競売を取消しできる最後の期限となります。しかし実際には任意売却の手続きに準備期間と購入希望者を探す期間が必要ですし、入札が開始すると債権者も任意売却に対応してくれることはほとんどありませんので、競売を回避するのは難しいでしょう。ギリギリ間に合うであろうタイミングは、入札が開始される直前です。それでもかなり厳しい状況なので、債権者が債務者に有利な条件を飲んでくれる可能性は低くなってしまいます。
任意売却の手続きを始めるのは、「期限の利益の喪失」の手紙が届いてから、競売の入札が開始される直前までがタイムリミットと言えます。債権者に有利な条件で合意してもらうためには、期限の利益の喪失が届いたらすぐに専門家が債権者と交渉を始められるよう、早めから準備をしておくのがベストです。

 

固定資産税が滞納している場合任意売却に影響する?

固定資産税が滞納している場合でも、任意売却をすることは可能です。滞納している固定資産税の費用についても、売却金額から捻出することも難しくはないでしょう。しかし、滞納していることで発生している遅延損害金については、売却代金から捻出することを認めない債権者も多いので注意しましょう。
また固定資産税を滞納している場合、不動産に差押えの登記がされていることも少なくありません。差し押さえの登記がされていると、勝手に不動産を売却することができなくなりますから、登記を解除する手続きが必要になります。一般的に差押えの登記を解除するためには、解除費用を支払うことで可能になりますが、滞納している時に督促を無視して連絡もしなかったなど、債務者の態度次第では話し合いに応じてもらえない可能性もあります。状況が悪化してしまわないためにも、税金関係は滞納しないに越したことはありませんし、もし支払が難しい場合には誠意をもって話し合いをしておきましょう。

 

 

任意売却後に残債がある場合はどうなるの?

任意売却をして売却額を住宅ローンの返済に充てても、そもそも任意売却をするケースではオーバーローンの状態が多いので、住宅ローンの残高が残ります。この残った金額のことを残債といいます。おそらくは任意売却の手続きが完了している時点で、当初借入をした銀行や金融機関は保証会社に代位弁済をしてもらい、債権者が保証会社、または債権回収会社(サービサー)に変わっているはずです。ですから、残債については保証会社か債権回収会社に返済をしていくことになります。
残債額については債権者との交渉により、任意売却後の返済プランの元で返済をしていきます。任意売却前は住宅ローンを支払っている家が住居なので家賃の支払はありませんが、任意売却後は大体の場合賃貸の住居になりますから、家賃の支払いが発生します。それは債権者も重々承知しているので、任意売却前の返済額と同じ条件での返済ではなく、無理がない範囲の金額が返済額として設定されます。また必ずではありませんが、債権者によっては残債を少し減額してくれる場合もあります。これまでと違って残債には担保がありませんから、無理な金額を請求して全く債権が回収できないよりかは、確実に返済してもらう残高にしておいた方がリスクは少ないからです。家庭の収入と家賃の支払、生活費の支出などを鑑みて債務者それぞれの状況に応じた返済額が設定されますが、一般的な事例では1ヶ月の返済額が5,000円~3万円程度になることが多いです。

 

 

自己破産をしたいけど任意売却はどのタイミングでしたらいい?

住宅ローン以外のキャッシングやクレジットカードの返済が不能になっている時は、自己破産の検討をしているケースもあるでしょう。自己破産をすると資産価値がある財産はすべて処分され、債権者に平等に分配されます。もちろん住宅ローン付きの不動産であっても同様に、自己破産の申立をすると否応なしに競売にかけられ安い金額で売却されてしまいます。どちらにしても競売後の残債も自己破産でチャラになるなら任意売却をわざわざする必要がないと思われるかもしれませんが、前述したように貴方の債務がチャラになっても、連帯保証人が多額の借金を背負うことになりますし、競売になったときに受けるデメリットは価格以外にもたくさんあります。
さらに自己破産は財産がある場合とない場合とでは、裁判にかかる手続き費用が大きく異なります。財産がない場合は自己破産の扱いが「同時廃止」という形になり、裁判所に支払う費用も2~3万円程度ですみますが、財産がある場合には「管財事件」として扱われ、裁判所に支払う費用は最低でも20万円以上となるのです。管財事件扱いになると同時廃止より、免責決定がされるまでの期間も長くかかります。
こういった理由から自己破産を考えている場合は、自己破産の前に任意売却をしてまったく財産を持っていない状態で、自己破産の手続きを始める方が費用的にも期間的にも負担が少なくて済みます。

 

 

任意売却物件を購入するなら知っておくべきメリットとデメリット

この章では立場が一転して、任意売却をする人ではなく任意売却物件を購入したい人に、知っておいてほしい情報をまとめます。貴方が任意売却をする立場でも、任売物件の買主側との取引において折り合いをつける上で、知っておいて損はないのでぜひ参考にしてください。
任売物件は通常に売りに出されている不動産と違う点がいくつかあります。売主側には経済的な事情がありますから、通常の物件のように価格交渉は望めません。任意売却をされているということは、債権額を下回る金額でしか販売ができない不動産なので、それ以上の値引きを債権者が合意するのは基本的には難しいでしょう。
売主の方は資金的に厳しい状況にあるため、物件の明渡は現状のままであることが多く、瑕疵担保と言われる引き渡し後に見つかる不具合についての売主の責任も問うことができません。基本的には家具や家電など撤去した上での引渡しですが、債権者が撤去費用を認めない場合も多く、売主が所有権を放棄した物がそのまま室内にある状態で引き渡されることもあります。
買主は引き渡し後に室内環境を整える作業や費用が別途必要になるので、物件価格が市場価格よりも比較的低めの金額に設定されています。
引渡し後に、管理費や修繕積立費などの滞納を突然請求されるなどのトラブルに巻き込まれないためにも、事前に滞納分の清算が済んでいるか確認してから契約をしましょう。

 

 

任意売却と競売はどちらを選べばいいのか?

ここまで任意売却と競売の違いについて説明してきましたが、どちらを選ぶべきかは明白だと思います。競売に比べて任意売却は、経済状況が厳しい人にとって恩恵が多い手段なので、競売になってしまう前に手を打たなければなりません。任意売却の手続きは任意売却ができる条件をクリアした後は、迅速に手続きを進めなくてはなりませんし、できるだけ好条件で解決が図れるよう債権者・買主との交渉力に長けている専門家を選ぶ必要があります。督促が届いてから業者を探し始めるのでは、冷静な判断力のもと安心して任せられる業者を選ぶのは難しいでしょう。住宅ローンの返済が今後困難になるとわかった時点で、金融機関に相談をして早めに行動を開始することで状況の悪化を最小限に抑えることができるのです。